73話 ホントもう衝撃の連続だよ、オイ!
カガリの視点に戻ります。
スチルヘルミノvsゾンビ軍団の戦いは、ゾンビがあまりにも多い為、結局、俺たちも手伝う事になった。
これがハッキリ言ってトラウマものだった。
何せ、ゾンビとはいえ人間なのだ。
しかも、死後時間が経っていない様子で、体が腐っている訳でもホネホネな訳でも無かった。
つまりゾンビ感が無いのだ。
それこそ、ちょっと動きが怪しいだけの、ごく普通の人間と戦っているような感覚だった。
魔族には容赦なく殺すつもりで攻撃していた俺も、これはキツかった。
なので、ホリーとミミには馬車で待機してもらう事にした。
2人とも『自分も行く』と言って聞かなかったが、こればかりは絶対に譲らなかった。
そして俺とアールで対処したのだ。
・・・悪いな、アール。
≪余裕よ。こういう時はドンドン私を頼りなさい!カガリだって別に来る必要なかったのよ?≫
・・・そうはいかないさ。
けど、この惨状って、魔族とドラゴンがやらかした事だし、俺達が後始末する筋合いは全く無いんだよな。
しかし、当事者の魔族は俺達が殲滅したし、ドラゴンはみんな逃げた。
それに、そもそもコイツらが後始末するとは思えないし・・・
もしこのまま放置すれば、ゾンビは街を出て暴れ回り、更に犠牲者が増えるだろう。
・・・結局、俺達がやるしか無いんだよな。
スチルヘルミノは、人間もドラゴンも容赦なく叩き潰すという雑過ぎる戦い方をしていた。
なので、コイツらが戦った後には死屍累々、それはもう目も当てられない惨状だった。
・・・死んでからも更にこんな目に遭わされるなんて気の毒すぎる。
俺はそう思った。
日本では、人が亡くなると火葬する。
だから日本人の俺からすると綺麗に燃やしてあげるのが一番の供養なんだよな。
なので、『太陽葬』を使う事にした。
太陽でなら一瞬で焼けて消滅するだろう。
一見、乱暴なやり方に見えるが、俺達で燃やす場合、街への被害も考えるとそこまでの高火力は出せないのだ。
実際やってみたのだが、燃えながら襲ってくる人間達はトラウマものだった。
怖いだけは無くて、可哀想だし、何より悲しいのだ。
その姿を見て、一思いに楽にしてやりたいという気持ちが強くなった。
その点『太陽葬』なら一瞬だ。
敵に使えば『絶対的死』を与える理不尽極まりなくエグい技だけど、今回はなんとも優しい使い方だった。
・・・俺がもしゾンビになったら『太陽葬』で頼む。
≪バカな事言わないの!≫
アールに窘められた。
スチルヘルミノには、ゾンビを追い立てる役と、街の外から来る人間を追い払う役を頼んだ。
『黒光檻』が壊され、魔族も消えた今、異変を察知した外部の人間達が容易に街へ近づいて来れるのだ。
スチルヘルミノは、1体1体がSSSへ覚醒する前の魔将軍を苦も無く倒せる位の強さを持っていた。
そんな奴らが道を塞いでいるのだから、近付いた人間達は恐ろしくて街へ近づけないだろう。
俺とアールはひたすらゾンビ達を太陽へ送りつづけた。
結局、ゾンビを全員葬った頃にはすっかり夜になっていた。
・・・さて、戻るか。
≪そうね≫
集合させたスチルヘルミノを鉱山へ送り返し、2人して馬車へ戻った。
御者台で俺達を待っていたホリーとミミが駆け寄って来た。
「カガリ殿、アール様、お帰りなさい!」
「カガリとアール・・・おかえり」
「ただいま!」
・・・ん?
2人の様子がどうも変だ。
ホリーは困惑し、ミミはプンスカしていたのだ。
「どうした、2人共?」
「カガリ殿、それがですね・・・」
「なんじゃこりゃあああああああああ!!」
馬車の中には、滝座瀬と三津島がいたのだ。
しかも、めちゃくちゃ寛いでいた。
2人は俺を見ると、笑顔で手を振ってきた。
「あ、お帰りー!海月、どういう事なの?こんなハイテク馬車持ってるなんて!この超広い空間は何なのよ?あとこの超豪華な部屋は何?あの絵もあの壺も全部本物じゃない?スピーリヒルのお城でもここまで豪華じゃなかったわよ?」
滝座瀬がいきなり問い詰めて来たかと思えば、
「ここって凄いね!あのテーブルからはご飯もデザートも何でも出てくるし、しかもみーんな、めちゃくちゃ美味しいし!それに・・・虫じゃ無いんだよ!!・・・あとこのソファーもフカフカだし、テレビもあるしゲームだってあるし、お風呂は大浴場でしかも温泉だし、トイレは水洗でしかもウォシュレット付きだし、至れり尽くせりだよ!本当、最高だよ!これもバグってやつの力なの?」
三津島は褒めまくって来た。
「・・・何でこんな事に?」
俺はホリーを見た。
ホリーは申し訳無さそうな顔で答えた。
「実は、お二人が街へ行かれた後、この馬車をそこの2人が訪ねて来たのです。カガリ殿は留守だと告げると、『待つ』と言うので御者台で待たせていたのですが・・・暫くすると2人が急に泣き出したのです・・・理由を聞くと、いきなりこの世界へ飛ばされ、色々辛い目に遭い、挙句に六条にも手酷く裏切られて、これからどうすれば良いのか?という絶望の涙でした・・・それを聞いて憐れに思いまして・・・」
「私が・・・ケーキをあげたの」
ミミが言葉を継いだ。
「私も・・・仲間が死んで悲しかったとき・・・ケーキをもらって元気がでたから・・・勝手にごめんなさい」
しゅんとするミミの頭を俺は撫でてやった。
「ミミ、ありがとう。他人の痛みが分かるのは、ミミが良い子な証拠だ!」
「・・・ほんと?・・・怒ってない?」
「怒る訳ないだろ?俺はミミが良い子で嬉しいよ!」
「・・・んん」
ミミは嬉しそうだったが、すぐにまたプンスカ顔に戻ると、
「でも・・・あのビッチたちはだらしなさすぎ」
俺は改めて部屋を見た。
テーブルには食い散らかした飯の残骸、調度品は品定めでもしたかの様に乱雑に集められ、ソファー周辺にはお菓子の袋やケーキの食べかすなどが散乱し、ゴミ箱からは丸めたティッシュが溢れ出し、ゲーム機やソフトは出しっ放しでパッケージが散乱し、着ていた装備も脱ぎ散らかされていた。
そして滝座瀬と三津島はホリーの為に用意した部屋着を着てリラックス状態。
とにかく、散らかし放題だった。
・・・やんちゃ坊主かよ!
ホリーが申し訳なさそうに言った。
「2人はケーキを食べると『何で地球のデザートがあるのよ?』と言って強引に馬車の中へ上がり込み、色々弄くり始め・・・止めたのですが聞く耳を持たず、それはもうやりたい放題で・・・しかし、最初に情けをかけたのは我々ですので、今更、暴力に訴える訳にもいかず・・・とにかくカガリ殿がお帰りになるまでの辛抱と思い・・・」
「放置してたって事か?」
「・・・はい」
滝座瀬と三津島はもうすっかり寛いで、そして、はしゃぎまくっていた。
「あーもう、ミミちゃんってば、またビッチって言ってるしぃ〜!」
「まあ、多少の悪口は我慢してあげるわよ。あんた、海月のお気に入りっぽいしね」
こいつら、やりたい放題の言いたい放題かよ?
俺は2人に聞いた。
「おい、六条はどうした?」
「アイツなら逃げたわよ。あの黒い檻みたいのが無くなった時にね」
「何で一緒に逃げなかった?」
「あのクズ野郎に置いて行かれたんだよ。逃げるアイツに追い縋って『置いてかないで!』って頼んだのに、蹴り飛ばされたの・・・」
「そ、そりゃ災難だったな」
・・・女の子を見捨てて逃げるってマジかよ?しかも蹴り飛ばすとか・・・六条ってこの2人の事が好きなんじゃなかったのか?
≪あの時、カガリと3人のやり取りはコンコルディアスと戦う片手間に聞いてたんだけど、そりゃ酷いものだったわよ?六条がこの2人を好きだなんてとても思えないわね。単なるエロ目的でしょ?≫
・・・まあ、確かにな。
そう考えるとこの2人も憐れに見えてきたよ。
「それでもさ、何で2人だけでもこの街から逃げ出さなかったんだよ?」
「だって、そりゃ・・・ね?」
三津島がもじもじと滝座瀬を見た。
滝座瀬は『やれやれ』って感じて軽く溜息をつくと、俺の目を見据えて言った。
「そりゃ、アンタの女になったからに決まってるでしょ?」
「俺の・・・女って・・・はあああああああぁぁぁぁ???」
「何を驚いてるのよ?あの時、あのクソ六条が私達に命令してたでしょ?・・・まさかアンタ、忘れたんじゃないでしょうね?!」
俺は思い出してみた。
すると・・・
「あー、そう言えばそんな事言ってたな・・・すっかり忘れてたわ」
「海月ぃ!アンタねぇ!!」
「酷いよ海月君!あの時、六条に命令を撤回させなかったから、すっかりその気なんだって、覚悟してたのに!」
「いやいや、あの時は、パワーアップした魔族が現れてそれどころじゃ無くなっただけだ。お前らもあの状況見てただろ?」
「見てたけど・・・心の底では超喜んでるんだろうなって思ってたよ?」
「思ってないからっ!!」
≪なんだか急にハーレムルートに突入しちゃったわね!≫
・・・うるせー!何とかしてくれ!
俺は大きな溜息をついて、ミミにお願いした。
「ミミ、コイツらの状態を鑑定してくれないか?」
「ん・・・見えた・・・2人とも・・・六条のスキル『勇者の口づけ』の影響を受けてる・・・命令の内容は・・・『海月様の所有物になって、毎日思う存分エロい事をして差し上げる』・・・だって」
・・・うわぁ!とんでもない文章読ませてごめんよミミ!
滝座瀬が顔を真っ赤にしながらも、そのキリッとした目で俺を見据えて上から目線で言った。
「そういう事よ!これからは私達がアンタの女になって毎日思う存分、エロい事してあげるんだから感謝しなさいよね!」
そして三津島は、同じく顔を真っ赤にしながら、俯き加減からの上目遣いで言った。
「海月君、優しくしてね・・・お願い」
「ウソだろおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおお!!!」




