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64話 上げて落としてやるぞ、オイ!

俺の予想に反して、六条達クラスメイトは魔獣肉じゃなくて虫を食べていた。


コイツらに酷い目に遭わされて来た俺にとって、こんな痛快な事は無かった。


俺が大爆笑した事で六条が顔を苛立たしげに歪めた。


「な、何がおかしいんだ!」


滝座瀬と三津島も加わる。


「私達が虫を食べてるのがそんなに可笑しいの?!フザケるな!あんなもの食べさせられてどれだけ辛いと思ってるのよ!」


「海月君だって、虫しか食べて無い筈でしょ?私達の気持ちが分かる筈なのに、何でそんなに笑ってるのよ?」


俺は必死に笑いを堪えて答えた。


「あー悪い、そうだよな、虫を食うのは辛いよな。パン虫とか、ポテ虫とかさ、俺も散々食ったよ、あの超絶激マズなヤツ」


それを聞いて三津島が首を捻った。


「パン虫?ポテ虫?そんなのは食べた事無いかな?私達が食べてるのは、伊勢海老虫とか、ロブスター虫とか、タラバガニ虫とか、ズワイガニ虫とかキャビア虫とかフォアグラ虫とかトリュフ虫とか、松茸虫とか、イチゴ虫とか、スイカ虫とか、メロン虫とかだけど・・・?」


・・・え、まさかの高級食材虫だと?!


「へ、へえ・・・随分、高級食材っぽい名前じゃないか・・・まさかそれって・・・美味いのか?」


「確かに高級そうだよね、値段は知らないけど。でもこの世界で一番マシな味の虫なんだって・・・見た目超グロいし、味だってマシって言ってもマズ過ぎて食べられたものじゃないんだけどね」


マシな味だと?

フザけやがって!

俺なんてパン虫にポテ虫だぞ?

囚人とか奴隷が食ってたやつだぞ?

絶対この世界で一番しょぼいやつじゃん!

味だって激マズどころじゃないぞ?

超絶激マズだぞ!

良い虫食いやがってこの虫食セレブ共が!


俺はさっきの痛快な気持ちが少し萎えたのを感じた。


・・・まあどっちにしろ、大トロ虫とか国産ブランド牛虫を出されたって『虫』と付く限りは絶対食いたくないけどな。それでも、明らかにコイツらとの格差があるのにはムカついたぞ!


俺はそんな気持ちを抑えて冷静に答えた。

まだ復讐はこれからだしな。


「ほほう、虫にも色々あるんだな。まあお前らの目的は分かったよ。なら朗報だぞ、俺のSSS勇者のスキルに『毒処理特効』は・・・あったぞ」


3人の顔つきが変わった。


「海月、それは本当か?!」


「海月、本当なの?!」


「海月君、嘘は無しだよ?!」


「嘘なんかついても意味無いだろ?称号を奪われる前、ステータスをチェックしたとき、確かにそのスキルはあったよ」


俺が断言した瞬間、


「よっしゃああああああ!!」


「やったああああ!!」


「きゃあああ!これで虫を食べなくていい!!」


物凄いテンションで喜んでいた。


「ステータスオープン!」


SSSの力をゲットしたと思い込んでいる六条は、当然、『毒処理特効』もあるだろうと早速ステータスを開いて確認しているが・・・一気にテンションが下がっていた。


そりゃそうだ。SSSの力なんて手に入れて無いんだからな。


しかし六条がSSSの力をゲットしたと思い込んでいる滝座瀬と三津島も、期待を込めて六条を見た。


「ねえ、ゆう・・・六条、あったの?」


「あったんだよね?ゆう・・・六条君?」


「ん?・・・あ、ああ・・・あった」


六条の野郎、嘘つきやがった!


「「やったーーー!!」」


そうとは知らず抱き合って喜ぶ滝座瀬と三津島。


しかしそこにミミから冷静な突っ込みが入った。


「うそ・・・六条のステータスに・・・そんなスキルはない」


「クソチビイイイイィィィィ!!ぶっ殺すぞ!!!」


六条に物凄い顔で睨みつけられたミミがササッとホリーの後ろに隠れた。


「ミミを虐めるんじゃねえよ!」


「ミミになんて事を言うのですかあなたは!」


俺とホリーが声を上げ、同時に俺は六条を蹴り飛ばしていた。


「ぐぼうげえ!・・・ご、ごめんなさい・・・」


六条が蹴り飛ばされるのをスルーして滝座瀬と三津島が六条を問い詰めた。


「ちょっと、六条?スキルが無いってどういう事?」


「アンタ、ちゃんとSSSの力をゲットしたんだよね?」


「と、当然だ!俺は確かにあの玉を飲み込んだんだ。その後とんでもない力が宿った。今は海月との戦いで力を使い果たしたから消えちまってるが、力が戻ればまたスキルも現れる筈だ!」


「本当なの?」


「なんか怪しいんだけど?」


「ふん、どうせお前らには関係無いだろ?戻ってもこのスキルは俺だけの為に使うんだからな!」


「え?何それ信じられない?!」


「私達は協力したんだから別だよね?」


「バカか?お前らも含めて誰にも魔獣肉は食わせてやらんからな!俺だけが独占する!」


「はあ?何言ってんのこのバカは!海月、こいつボコって撤回させて!」


「海月君、思う存分やっちゃって良いからね!」


あらあら醜い言い争いだこと。

ホント見苦しい奴らだな。


「はあ〜、何でお前らの為に俺が動かなきゃならないんだよ?俺は自分の為に六条をボコった。そしてボコり終えた。やりたいなら勝手にやれよ」


滝座瀬は『分かって無いなコイツ』みたいな、『やれやれ』といった感じで俺に説明し始めた。


「はぁ〜、アンタ分かって無いわね。このままじゃ海月だって魔獣肉を食べさせて貰えないよ?本当にとんでもなく美味しいんだから!まあ食べた事無いんだろうけど?」


・・・そりゃまあ食べた事ありませんけど?なんでこんな上から目線なの?コイツは。


「麻耶、大丈夫だよ。これからは海月君がいるんだし、コイツだって逆らえないだろうから独占なんてできる訳ないよ!」


2人の会話を聞いて俺はふと疑問に思った。


「なあ、もしかして俺がこのままお前らと一緒にあの城へ帰ると思ってるのか?」


「え?帰らないの?」


「ウソ、帰るよね?」


「帰るわけないだろ?お前らに酷い目に遭わされた上、クソ王女から城を追放されたんだぞ俺は。今さら帰る訳無いじゃん」


「え?王女様は追い出したなんて一言も言ってなかったんだけど?」


「そんな!帰ろうよ海月君!みんな待ってるから!」


「待ってる訳ないだろ?てか俺はお前らに会いたく無いんだよ。今度俺があの城へ行く時は、復讐しに行く時だからな?」


そうだ、復讐だ。


俺はコイツらとこんなに喋るつもりなんて無かった。


六条だけじゃない。

滝座瀬だって、日本にいる時には俺の事を無視してたし、随分酷い事を言われたりもした。


コイツらと馴れ合うなんてまっぴらだ。


俺はコイツらとのくだらない話を切り上げ、復讐の続きを始めることにした。


「復讐って、私達が何したっていうのよ?!アンタ、自分の意思で出て行くって手紙に書いてたじゃない!」


「うん、私も見た。どういう事なの?」


「今さらそんな事どうでも良いだろ?どうせ何を言っても、あの時のお前らなら俺の主張なんて聞かなかっただろ?だから俺は今更お前らの誤解を解きたいなんて思ってないんだよ」


そう言うと、俺は次元収納から携帯食を入れた紙包みを取り出してホリーとミミに投げて渡した。


「ホリー、ミミ、小腹が空いただろ?食おうぜ!」


「おお!これはまさかアレですか?流石はカガリ殿、用意が良い!」


ミミは初めて見る紙包みを興味津々に見つめながら、


「これ・・・ウマウマなやつ?」


「はい、ミミ殿、ウマウマなやつですよ!」


「ウマウマ・・・好き」


そんな会話をしながら2人は目をキラキラさせた。


ミミには、ここに向かっている間、腹ごしらえで地球の料理を思う存分食べさせてあげていた。

だから既に地球食の虜になっていたのだ。


俺も自分の分を取り出し紙包みを開けると、中からは、フワフワで香ばしく焼けたバンズに挟まれた見るからにジューシーな肉厚のパテ、そして青々とした新鮮野菜、とろーりチーズにシャキシャキ感のあるピクルス。

それはもう見ただけで涎が無限湧きするような物体が現れた。


言わずもがな、ハンバーガーだ。


俺達は、それを思い切り頬張った。


ジュワッと肉汁が溢れて肉の旨味が口いっぱいに溢れ出し、それが濃厚なチーズとピクルスの酸味と混ざりあって・・・美味すぎる!


ホリーとミミも夢中で頬張っている。


「美味しい!この肉汁はもしや、神戸ビーフを使った一品では?」


「はむはむ・・・おいし・・・はむはむ」


そう、これは、神戸ビーフ他、超高級食材をふんだんに使った、最高級ハンバーガーなのだ!


いきなりの食事に呆気にとられている3人は、


「え?何でアンタが神戸牛なんてワード知ってるのよ?てか何それ?見た目ハンバーガーなんだけど?」


「虫だよね?それって、虫なんだよね?」


「ふん、いくら本物っぽく加工しても所詮、虫は虫だろ?グロさとマズさは変わらん!」


そういう六条達の元にもハンバーガーの旨そうな匂いが漂って行ったみたいだ。


本物の匂いを嗅いで六条達の顔色が変わった。


「この匂い・・・本物か?!おい海月!どういう事だ?!」


俺は美味そうに頬張りながら答えた。

本気で美味いから演技する必要は無い。

ただ見せつければ良いだけだ。


「もぐもぐ・・・本物だよ。本物の最高級ハンバーガーだ。バグの力で作ったんだよ。どうだ?羨ましいか?めちゃくちゃ美味いぞ?」


「なんだと?おい海月!俺にもよこせ!食べさせてくれ!!」


「え?やっぱり本物なの?!・・・どうりで良い匂いだと思ったわよ。まさかこんな所でハンバーガーが食べられるなんて、最高のサプライズだわ!早く私の分も出しなさいよ!」


「やった!本物なんだね!美味しそう!ああ、久しぶりにハンバーガーを食べられるなんて夢みたい!」


俺はひたすらハンバーガーに齧り付きもぐもぐと食べながら答えた。


「もぐもぐ・・・ん?お前らの分なんてある訳ないじゃん」


六条、滝座瀬、三津島の顔の期待に満ち満ちた顔が凍りついた。


「は?」


「嘘でしょ?」


「そんな!」


「てか、なんで普通に自分達も貰えると思ってんの?」


3人の凍りついた顔がみるみる絶望に覆われていく。

そして、目をギラギラさせながら必死の形相で訴えて来た。


「ふざけるな!ここでその仕打ちはいくらなんでも酷すぎるぞ?!鬼か?貴様は!」


「そうよ!酷過ぎ!最低よ!早くハンバーガーを寄越しなさいよ!今ならまだ許してあげるから!」


「海月君!心からお願い!食べさせて!この世界には食料が全然無くて、みんなホントに飢えてるの!海月君なら分かってくれるよね?」


「ん?俺が聞いた話だとこの世界は食料に溢れていて食って行くには全然困らない筈だぞ?良かったじゃん、飢える心配は無いってさ!・・・・・・・まあ全部虫だけどな」


3人は同時に叫んだ。



「「「良いワケあるか!」無いでしょ!」」

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