63話 え?お前ら虫食ってんの?オイ!
顔面への一撃で大きくふっ飛んだ六条。
ヨロヨロと起き上がると再び魔法を詠唱した。
「輝き、滅せ・・・殲滅光、[豪]!」
六条の目の前に弱々しい光が浮かび上がって・・・消えた。
プスンッ
「・・・るな・・・ざけるな・・・ふざけるなああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
六条は天を仰いで叫んだ。
「俺はSS勇者だぞ?選ばれた勇者の中でも更に選ばれた存在なんだぞ?それが何でこんな理不尽な目に遭わないといけないんだ!・・・本来なら城で美味いもの食って滝座瀬と三津島とエロい事しまくって、レベルアップの秘薬で一気に最強レベルになって、他の勇者共を使って魔王軍と戦わせて、その間俺は城でゆっくりと下界を見下ろしつつ四大美人と三大アイドルと二大エロスと王女に囲まれハーレム生活を謳歌して、男の勇者共は容赦なく使い潰して魔王を散々弱らせてから俺がとどめを刺して、魔王討伐の英雄として歴史に名を刻んで、最強の従魔に乗って財宝や魔道具を山程持って地球へ凱旋して、地球ではその金と力で世界を裏から操る闇のキングになって、気に入らねえ男は全員ぶっ殺して気に入った女は全員手に入れて大ハーレム帝国を作り上げ、そこで面白おかしく暮らす予定だったんだ!・・・それを、滝座瀬と三津島はキス以上の事は渋ってくるわ、初瀬が口ごたえしたせいで龍王を探すハメになるわ、王女はレベル60ぽっちしか上がらないクソ秘薬しか渡さないわ、奪ったSSSの力はクソ弱いわ、こんなカス野郎に勝てないわ、何もかも台無しじゃないかばごほぐべはあああ!!!」
ドゴッ!
ああウザ、なんか無意識に殴ってたわ。
それにしても、
「・・・お前、本気か?」
俺は耳を疑った。
てか、呆れた。
こいつ・・・ただのバカじゃん!
ホリー、ミミ、滝座瀬、三津島も・・・呆れていた。
「この男・・・最低ですね」
「六条・・・キモい」
「そんな言葉じゃ足りないわよ!何でアンタなんかとエロい事しまくらなきゃならないのよ?!ホント最悪ね!海月、もっとやっちゃいなさい!」
「結局、コイツの言ってる事って、金・権力・女じゃん・・・どこかの政治家かっての!こんな奴に狙われてたなんて、あーもう!鳥肌立って来たよー!」
六条は鼻血を拭きつつキッと女子達を睨みつけると、
「お前ら、俺の女の癖してこの俺を見下してるんじゃねえぞ!滝座瀬!三津島!そんなとこでサボってんな!俺を助けに来い!命令だぞ?命をかけて俺を助けにこぐぼべばっ!」
俺は六条の顔を今度はぶっ飛ばすつもりで殴った。
「その汚い口を閉じろ!」
再びふっ飛んだ六条、
「し・・・舌噛んだ」
「おい、お前ら、大丈夫か?」
俺はホリーとミミへ声をかけた。
今ので滝座瀬と三津島への命令が書き換わったからまた2人が暴れるかもしれないと思って心配したのだ。
それを自分達へ声がけされたと勘違いした滝座瀬と三津島が返答して来た。
「大丈夫よ!命令が書き換わったみたいで今はそこのキモいバカを助けないといけない気持ちになっちゃってるけど・・・この2人に見張られてるから動けないし」
「海月君、気遣ってくれてありがとう!もうあなたへの殺意は無くなったから安心してね!」
「別にお前らに声かけたんじゃないけど?ホリーとミミを気遣ったんだよ」
「はあ?ちょっとアンタ、私達への扱い酷くない?」
「男なんてみんな同じだね!そんなに自分の女が大事なの?そこのデカ乳女なんてエロの塊じゃん?そっちのちっこいのなんてお子様だし。このドスケベのロリコン!」
「はあぁ?!そいつらとはそんな関係じゃねえよ!」
「デ、デカ乳女・・・エロの塊・・・」
ホリーは絶句し、
「ちっこくない・・・ドラゴンになれば大きい」
ミミは頰を膨らませていた。
一方の六条はというと、俺達が話している間にコソコソ逃げようとしていた。
・・・はぁ〜、今更何処へ逃げようというのかね。
俺は六条の元へ向かうと、胸ぐらを掴んで持ち上げた。
そして、
「今までの俺の苦しみの代価だ。覚悟しろよ!」
「ひっ!や、やめ」
ドゴッバキッドカッ!
「ぐげえ・・・」
俺は六条へその恨みを叩き返した。
ドゴッバキッドカッ!
「だ、だずけ・・・」
ドゴッバキッドカッ!
しばらくボコっていたが、
六条はとんでもなく・・・しぶとかった。
見た目こそボロボロになっているが、その体自体はピンピンしているのだ。
「や・・やべろ・・・」
やめるかよ、俺はお前を死ぬギリギリまでボコるって決めてるんだよ。
ドゴッバキッドカッ!
六条の顔も体が更にボロボロになる。
「じ・・・じぬ・・・もう・・・じぬよ」
「まだ死なねえよ。俺は鉱山で本当の意味で死ぬ直前だったんだぞ?だからお前にもそこまで行ってもらう!」
実は俺、着ているナノマシン服で六条をスキャンしてコイツが死なないようにダメージコントロールをしているのだ。
スキャン結果によると、見た目とは裏腹に、六条の体はまだまだピンピンしていて死ぬ気配は全く無かった。
さすがSS勇者、頑丈だな。
ドゴッバキッドカッ!
「や・・・やべで・・・もうゆるじで・・・うびづぎ・・・ざま」
「はあ?海月様だと?」
「ばい・・・うびづぎ・・・ざま」
「お前が俺を様付けで呼んだだと?」
「ばい・・・うびづぎ・・・ざま・・・ゆるじで・・・」
「でも本当は心にも無いんだろ?」
ドゴッバキッドカッ!
「がぼべびぢばぜぢど・・・」
「何言ってるか分からないんだけど?」
「ぶぞらびぞべぶどで・・・」
うーん、全く分からん。
ボコり過ぎて顔はもう完全に誰だか分からなくなっている。
口も歯もボロボロだし喋ってるつもりでも言葉にならないのだろう。
とはいえコイツの体はまだまだピンピンしてるんだけどな?
「ねえ、海月、いくらなんでもやり過ぎじゃない?そいつの事はクズだと思うけど・・・」
「うん、そいつだって反省してると思うし・・・たぶん」
滝座瀬と三津島が止めにかかって来た。
こりゃ失敗したな。
コイツらに見せるんじゃなかった。
確かに見た目だけなら死にそうだし、流石に止めるだろう。
今更『まだピンピンしてる』って言っても通じないだろうし。
ホリーとミミも心配げに声をかけて来た。
「カガリ殿、そろそろ楽にしてやってはどうでしょうか?カガリ殿がお嫌でしたら、代わりに私がそヤツの首を落としますので」
と、ホリーが物騒な事を言えば、
「トドメはカガリが刺した方がいい・・・SS勇者なら・・・いっぱいレベルアップできる」
ミミに至っては六条をもはや単なる経験値とみなしていた。
「2人共ちょっと待て!俺は別にコイツを殺すつもりはないぞ?」
「え?そうなのですか?!」
「カガリ・・・やさしい」
まあ、優しい訳じゃないけどな。
やっぱり俺は日本人だし、最後の一線は越えたくない。
しかもこんな奴を殺して罪の意識に苛まれるなんてゴメンだ。
それに、どうせ殺人の罪を背負うなら、ホリー、ミミ、それにアール、お前らを守る為に背負いたいんだよ。
つまり仲間の為に。
クラスメイト達の為になんてまっぴらだ。
そろそろ潮時か。
ま、コイツは別の意味でトドメを刺そうと思っているしな。
俺は六条をボコるのを止めた。
そして、コイツが喋れるように顔を回復させた。
みるみる傷が癒えて元のイケメンに戻る六条。
欠けた歯は戻らなかったが。
六条は怯えながら
「あ、ありがとうございます・・・海月・・・様」
「様は良いから。気持ち悪いし」
「・・・分かった、海月」
俺は六条に滝座瀬と三津島へ掛けた命令を解除させた。
2人は六条へ散々文句を言っていたが、六条は素知らぬ顔だ。
神経が図太いったら無いなコイツ。
俺はさっき六条が口走った中で、1つ気になった事を聞いた
「さっき初瀬・・・委員長が口ごたえしたせいで龍王を探すハメになったって言ってたよな?どういう事だ?」
六条は、俺には何も話したく無さそうだったが、睨むとビビって渋々説明した。
どうやら、魔獣肉というご馳走が無くなって、今はコイツらも虫を食べさせられているらしい。
そして『毒処理特効』という勇者専用スキルが唯一、魔獣肉の毒抜きに対応していて食用肉に変える事ができるのだが、それをクラスメイトは誰も持っておらず、さては俺が持っていたのかもしれないという事で、龍王へ確かめに来た。
という事らしい。
俺はそれを聞いて、心の底から・・・・・笑った。
そりゃもう大爆笑だ。
「あははははははは!何だそりゃ?お前らも虫食ってんの?わははははははは!そりゃ傑作だわ!ホリーがお前らはとんでもなく美味い魔獣肉を食ってるだろうって言うから、てっきり、食生活を満喫してると思ってたけどさ、いひひひひひひひひひひ!まさか虫食ってたなんてな!あはははははははははははは!腹痛てえ!」
何のことは無い、コイツらも虫を食っていたのだ!
俺は既に虫食は卒業して、超科学のお陰で地球の超豪華料理を毎日3食、最高級デザート付きで堪能してるっていうのにな。
ははは!ざまぁみろ!




