61話 六条の奴、調子コイてるなあ。オイ!
カガリの視点に戻っています。
六条がザコ魔族をぶった斬ってSSSの玉を奪って飲み込み、その六条をヒットハイドの舌が絡め取って引き摺り込み、それをアールが助け、瀕死の六条へ応急手当を施した後、ヒットハイドから玉を取り戻そうとして腕を切断され、アール本体が気を失い、アールの腕が何処かの城で何者かと戦っている間・・・・・
俺は、滝座瀬と三津島の2人の攻撃を躱しながら、その全てを把握していた。
六条の行動は横目で確認していたし、脳内会話でアールから常に情報を受け取っていたからだ。
・・・アール、そっちは大丈夫なのか?
≪何とかね。でも、このコンコルディアスって奴、今までの奴らとは比べ物にならない位、強いわね≫
・・・勝てるのか?
≪勝てない事は無いけど、もしコイツが魔王だったら、魔王討伐完了って事で六条以下、みんな契約が果たされてこの世界から消えちゃうんじゃないの?それじゃカガリが復讐出来なくなっちゃうからイヤよ!≫
・・・それって部外者が魔王討伐しても契約が果たされるって事か?
≪分からない。でも、分からない以上、その可能性だって捨てきれないわ≫
そういう事なら確かにリスクは犯したく無い。
けど、その事にとらわれてアールが力を出せずに殺られるのは、
・・・もっと嫌だ!
≪何言ってるのよ?私自身は地球にいるのよ?万が一負けたとしても、死ぬわけじゃ無いわ≫
・・・あ、そうだった。
≪そうよ。だから私の事は気にしないで良いからね。六条はちゃんと回復させておいたから、遠慮なくボッコボコにしちゃいなさい!≫
・・・分かったよ!
俺は、滝座瀬と三津島のウザい攻撃を躱しながら、
「ホリー、ミミ、この2人の相手を任せて良いか?」
「勿論です!カガリ殿!お任せ下さい!」
「ん・・・ビッチは滅ぼす」
「いやいや、滅ぼさなくて良いからな!取り敢えず軽くお仕置き位は許可するからさ」
「分かった・・・お仕置きして真人間に戻す」
それを聞いた滝座瀬がまたミミに絡む。
「さっきから聞いてればこのチビッ子ホント失礼ね!ビッチじゃないって言ってるでしょ?何よ?真人間に戻すって!私元々真人間なんだからね!」
「チビッ子じゃない・・・ミミ」
ミミが頬っぺたを膨らませた。
か、可愛い!
そして三津島がミミ達を宥めにかかる。
「えと・・・ミミちゃん?あと、ホリーさん、私達はあなた達と戦うつもりはありません!本当は海月君とも戦うつもりは無いんですけど、あの六条のクソ野郎のせいで無理矢理戦わされているんです!だから、助けて下さい!」
ホリーはそれを聞いて、同情するように大きく1つ頷いた。
「あなた方の気持ちは分かりました。では、これ以上苦しまないよう、ひと思いに一撃で首を落として差し上げましょう!」
「何でそうなるのよ?!」
三津島が声を荒げて突っ込んだ。
悪いな、三津島。
ホリーってば、一見、常識あるお姉さんぽいけどさ、只のバトルジャンキーなんだよ。
まあ、本当に首を刎ねられても寝覚めが悪いからな。
「おいホリー、殺すなって言ってるだろ?半殺しまでは許可するからさ!」
「「許可するんじゃなーい!!!」」
滝座瀬と三津島が同時に叫んだ。
「仕方ないな。少し痛い思いをする位にしてやれ」
て事でホリーとミミにその場を任せ、俺は遠くから六条が起きるのを待った。
アールの体は、ホリーとミミによって、既に馬車へ運ばれている。
御者のランサムが見守ってくれていた。
あ・・・コイツがいた事、すっかり忘れてたわ。
「はっ!」
六条は目覚めた。
周囲をキョロキョロ見回し、自分の胸の辺りを確かめている。
そして、
「くははははははは!やったぞ!遂にSSSの力を手に入れたぞ!!」
大いに喜んでいた。
・・・あれ?六条ってば、何か盛大に勘違いしてないか?
≪うーん、多分、一時的に力が上がっているからじゃない?≫
・・・それってどういう事だ?
≪六条の胸に風穴が開いていたから、六条自身の体組織が元に戻るまで、ヒットハイドの舌組織を応急的に体に組み込んでいるのよ。ヒットハイドは六条と比べて相当レベル高いだろうから、ヒットハイドの力の一部が六条のレベルを押し上げているんだと思う≫
・・・六条の野郎、それをSSSの力を手に入れたと勘違いしやがったのか?!
≪みたいね。傷が癒えれば、ヒットハイドの組織は剥がれ落ちるからその力だって無くなるんだけど・・・バッカじゃない?≫
・・・まあそう言ってやるな。今、奴は得意の絶頂なんだからさ、ププッ!
俺の予想通り、得意の絶頂にいる六条は、遠くにいる俺を発見した。
「おい、ウソ月野郎!貴様のSSS勇者の力はもう俺の物だ!どうだ?悔しいか?」
「全然」
「嘘を付くな!悔しいに決まってるだろうが!貴様が喉から手が出るほど取り戻したがっていたSSSの力だぞ?悔しくない筈がないだろう?けどな、もう手遅れだ。この力は俺だけの物になったんだよバーカ!」
「別に?まあ、俺にはバグの力だってあるし」
「この期に及んでまだ貴様はバグなんて物に頼ってんのか?俺は今、SSの力とSSSの力、この2つを所有しているんだ。どうだ?凄いだろ!バグの力なんて所詮バグでしか無い。正統派のチートに勝てる筈が無いんだよ!」
「そうか。よし、なら戦おうぜ!」
俺は、六条の方へ歩いて行った。
六条は後ずさり・・・・・しなかった。
全く強気を崩していない。
その自信はどうやら本物の様だった。
「俺の力はこれだけじゃ無いぞ?新たに得たスキル『勇者の雄叫び』を使うと、5分の間、レベルが1.5倍に跳ね上がるんだよ!どうだ?オーバースペック過ぎるだろう?だが貴様を挽肉にするにはこのくらいやり過ぎた方が良いだろう!」
「へえ、そんなスキルもあるんだ。やっぱ勇者の称号ってチートだよな・・・まあいいや。ならそれも使って全力で来いよ。5分間だったよな?その間、俺は攻撃しないでやるよ。あと、お前の攻撃も躱さずに受けてやる。思う存分ボコりに来いよ」
俺の挑発を聞いて六条の形相が鬼の様になった。
「貴様ぁ!舐めるのもいい加減にしろよ?絶対後悔させてやるからな。その後、命乞いさせてからじっくり殺してやる!」
六条は、踏ん張って顔を天に向けた。
そして、
「来おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉい!!!」
大音声でそう叫んだ。
≪スキルが発動したようね。確かに、魔力量が跳ね上がっているわね≫
ホリーとミミからも俺を気遣う声が上がった。
「カガリ殿、お気をつけを!六条の魔力が更に跳ね上がりました!」
「カガリ・・・そいつ、さっきまでレベル382だったのに・・・573になった・・・気をつけて!」
「ホリー、ミミ、大丈夫だよ!5分間、敢えてボコられるけど心配するなよ?」
「くははははははは!来たぞ来たぞ来たぞおおおぉぉ!!」
さらに六条は懐からいろんな色の薬の瓶を次々と取り出し、飲みあさり始めた。
「これはHP上昇の秘薬、これはMP上昇の秘薬、これは攻撃力上昇の秘薬、そしてこれは防御力上昇の秘薬、最後にこれは素早さ上昇の秘薬だ!5分の間、これで俺の力は更に上がった!今更逃げても無駄だぞ?貴様には約束通りノーガードで俺の攻撃を受けて貰う!」
「能書きはいいから早く来いよ。もう4分半だぞ?」
「貴様ああぁぁ!・・・輝き斬れ!光勇剣[豪]!」
六条が詠唱すると、右手に光の剣が現れた。
ドッタートを叩き斬ったヤツだ。
六条は剣を構え俺に走り寄ると、上段から思いっきり俺の左肩へ斬り下ろして来た。
・・・コイツ、俺の左腕を奪うつもりか?初手から殺しに来ないって事は、本気でじっくりいたぶるつもりだったんだな。
光勇剣が俺の左肩に触れた。
ガキイイイイイイイイィィィィーン!
光勇剣は俺の左肩に触れて・・・止まった。
厳密には、俺の体を膜のように覆っているバリアに止められたのだ。
したがって肩には触れていないのだが、見た目には肩に触れて止まっているようにしか見えない。
「ぐぬぬぬ・・・」
六条の凶悪なニヤケ面が固まった。
サックリと切断出来ると思っていたのだろう。
ニヤケ面が怒り顔に代わり、必死にぐりぐりと光勇剣を俺の肩に押し付けている。
それでも斬れないと分かると、剣を再び振り上げ、もう一度同じ箇所へ斬り下ろした。
当然、ビクともしない。
六条はバカの一つ覚えみたいに、何度も振り上げては同じ箇所を斬りつける。
これがアニメなら少しずつダメージが入っていずれバリアにヒビが入り、遂には肩を斬り落とすのに成功するって場面だが、そう上手くはいかない。
だってその程度のダメージなら、1億回斬りつけられたってビクともしないし。
「おらおらおらおらおらおらおらおらああああぁぁぁぁ!!」
そんな事も知らず怒涛の勢いで斬りつけて来る六条。
俺は何もせず、ただ平然と突っ立っていた。
衝撃を消す機能をONにしているので、体がブレたり、ふっ飛ばされる事も無い。
只々自然に、さも何事も起こっていないかのように突っ立っていた。
それが六条の怒りに更なる火を付けた。
「俺の攻撃を・・・・・無視するなあああああぁぁぁぁ!!」
今度はめったやたらに斬りつけて来たのだ。
頭、顔、首、右肩、左肩、右肩肘、左肘、右手首、左手首、胸、背中、腹、腰、臀部、股間、右太もも、左太もも、右膝、左膝、右足首、左足首、それはもうありとあらゆる場所を、滅多やたらに斬りつけている。
しかしそれも全く効かないと分かるや、飛び退いて一旦距離を取った。
「フウ、フウ、」
息を整える六条。
俺は涼しい顔で言った。
「は〜い、残り3分!」




