55話 <ドバシェックの陰謀3>
長くなったので分けました。
後程、残りも投稿します。
六条は滝座瀬と三津島へ言った。
「2人共、あの玉を奪うぞ!俺があの魔族の背後に回り込むからお前等は俺が合図したら奴へ攻撃魔法をぶつけろ!」
2人は慌てた。
「ちょっと!急にそんな事言われても」
「急に実戦とかありえないんだけど?」
「良いから言う通りにするんだ!」
「・・・わ、分かったわよ」
「・・・仕方ないか」
六条は魔族の背後に回り込んだ。
吐き出された玉はドラゴンから離れていき、光を失った。
再び狂ったように笑い出す魔族。
そして魔族は手のひらをかざして玉を引き寄せた。
玉はまるで磁石のように魔族の手に吸い寄せられていく。
そして玉を手にする間際の魔族が最も油断した瞬間、
六条の合図で滝座瀬と三津島が一斉に魔法を放った。
「吹き放て、斬旋風[強]!」
「凍て貫け、氷甲弾[強]!」
「何っ?!」
魔族は思わぬ不意打ちに身構えた。
しかし、2人はまだ基礎訓練中の身でレベルも低かった。
いくらS勇者だけの特権である[強]魔法を使っても、その威力には限界があった。
魔族はそれを瞬時に見極め、杖を振って簡易魔法を放ち相殺した。
しかし、そちらへ気を取られて玉への対処が一瞬疎かになった。
六条はその瞬間を狙っていた。
「輝き滅せ、殲滅光[豪]!」
背後から六条が光魔法を放ったのだ。
「おのれ、まだいたか!」
魔族は腕をクロスにして顔をガードした。
キュピーーン!
滝座瀬、三津島とは比べ物にならない威力の光が魔族を包んだ。
その隙に六条は足から光の帯を噴射させながら飛び上がり、フワフワ浮いている玉を奪い取るべく手を伸ばした。
しかし玉を掴み取る寸前、魔族の尻尾が六条の足に絡みつき、その手はギリギリ届かなかった。
六条の指の先が玉にほんの少し触れた。
その瞬間、
玉は浮力を無くして真っ逆様に落ちた。
「滝座瀬!三津島!絶対取れ!!」
六条が下にいる2人へ叫んだ。
「え?え?」
慌てる2人。
しかし、六条の命令は絶対だ。
2人は走り込んで、落ちてくる玉に手を伸ばした。
そして・・・
掴んだ!
2人の伸ばした手が同時に玉を掴んだ!
「「やった!」」
2人の手が決して離すまいと玉を握り込む。
手のひらに玉の温かい感触が伝わった。
次の瞬間、
玉の温かい感触は、火傷する程の凄まじい熱さへと変わった。
いや、それは熱さでは無かった。
2人が視線を掴んだ手へやると・・・
手が・・・・・無かった。
手首から吹き出す血飛沫、感じたのは熱さでは無く、痛さだったのだ。
「「ぎゃああああああああ!!!」」
そして目の前には、玉を掴んだままの2人の切断された手をぶら下げている別の魔族がいた。
その魔族は高々と2人の手首を掲げて勝ち誇った。
「ぎへへへへへ!玉とったどおおおおおおお!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!
三津島沙彩は我に返った。
今は・・・・・まだ手首は落ちていない。
ちょうど落ちてくる玉に手を伸ばし、今にも掴み取ろうとしている瞬間だったのだ。
つまり
・・・・・手はまだ無事だった。
「危ない!!」
三津島は、伸ばしていた手で、玉では無く、すぐ隣で同じく伸ばしていた滝座瀬の手を掴んだ。
そして彼女を庇うように押し倒した。
「きゃあ!」
次の瞬間、彼女達の頭上を鋭い刃が通り過ぎた。
三津島が見ると、それはさっきの幻に出てきた魔族だった。
口から刃状になった舌を伸ばして自分達へ切りかかって来ていたのだ。
一歩遅ければ、手が無かった・・・
三津島は戦慄した。
魔族の男は、三津島達が放棄した玉を高々と掲げて勝ち誇った。
「ぎへへへへへ!玉とったどおおおおおおお!」
その光景を見て滝座瀬も理解した。
なぜ三津島が玉を放棄して自分を押し倒したのか?
あのまま玉を掴んでいれば、恐らく2人共あの魔族に斬られていただろう。
「三津島さん、ありがとう!」
「私、見えたんだ。あのまま玉を掴んでいたら、私達、手首を切断されてたんだよ」
「それって・・・この前、教えてくれたスキルの?」
「うん。『大災視』ってやつ。未来の自分に起きる大きな災難を、白昼夢みたいに見せてくれるスキルなんだけど、初めて作動したから本当に手首を斬られたと思ってビビッたよ!」
2人は心から胸を撫で下ろした。
しかしそんな2人の想いなどどうでも良い男がいた。
「お前ら何してやがるんだあぁ!絶対取れって言っただろうが!直前で手を引っ込めやがって、この役立たずのクソビッチ共め!とっととそのキモい魔族野郎から死んでも玉を取り返して来い!」
六条の容赦ない罵声が飛んだ。
六条は玉を取り落とした後、足に絡まった尻尾を振り払いつつ、自身は飛んだまま玉の行方を見守っていたのだ。そして2人の失敗を目撃して激昂した。
この六条の罵声によって、
2人の心は・・・・・白けた。
「は?」
「何それ?最悪」
「最悪だろうがお前らの気持ちなんざどうでも良いんだよ!ビッチはただ黙って俺の命令に従え!」
「最悪過ぎ、マジお前が死ねよ!」
「こんな最低野郎だと思わなかったよ!あとビッチじゃないし!」
六条へ悪態をつく2人だったが、
「「でも」」
2人は玉を奪った魔族を睨んだ。
「「死んでも取り返さなきゃ!」」
2人同時に呟いた。




