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51話 めちゃくちゃ良い子だな、オイ!

「まさか魔将軍を倒すとは!しかも見たところ圧勝・・・流石はカガリ殿です!」


目をキラキラさせて尊敬の眼差しを向けてくるホリー。


ごめん、期待を裏切って・・・


「いや、倒したのはアールなんだよ。俺は見てただけ」


「そうなのですか?流石は女神アール!しかし、そのアール様を使役しているカガリ殿はやはり凄いです!」


女神アールって・・・

そう言えばそういう設定だったか。


ホリーの目のキラキラは濁る事なく俺を見つめて来る。


・・・なんだかむず痒いな。


≪いい事じゃない。ドヤ顔で返してあげなさいよ≫


・・・まあ、確かに悪い気はしないよな。


俺はドヤ顔でホリーを見た。


「・・・・・カガリ殿?いきなり変な顔をして、お腹でも痛いのですか?」


≪ギャハハハハハ!≫


爆笑するアール。


・・・はいはいどうせ変な顔ですよ!だって仕方ないだろ?ドヤ顔なんて生まれてこの方する機会無かったんだから!てかアール笑い過ぎだぞ!


≪ご、ごめんなさい。でもカガリらしいわよ!ギャハハ!≫


・・・もういいから!早く尋問するぞ?


地面に横たわるガージャックを見る。元の面影は無い。

緑色の血に覆われ、肉もズタズタになったまさしく肉の塊だ。

肉の塊は、ピクピクと体を震わせている。


・・・瀕死じゃん。


「これってもう喋れないんじゃないか?」


「そうね。少し回復させるわ」


そう言うとアールは肉の塊に手をかざした。


キラキラした粉のようなものが肉の塊へ降りかかり、その肉体は急激に回復していった。


驚くホリー。


「こ、これは、回復魔法!しかし、ここまで回復力が高い魔法は・・・見た事がありません!」


「そうなの?回復魔法なんてありふれてそうだけど?」


「勿論、回復魔法使いが少ない訳ではありません。しかし、回復魔法はあくまで応急処置程度の効果しかないのです。それよりはむしろ、回復薬のほうが効果は高いです。それでもここまで凄い薬は存在しませんが」


どうやらこの世界の回復魔法は、ラノベみたいにどんな怪我でも治せるようなものではなさそうだ。


そう考えると、俺たちが施す超科学での治療は規格外って事になるな。


鉱山では千切れかけの足を引っ付けたりもしてたし。


あと、ぶっ壊れた精神も完治させてたし、死にかけてた俺の命を永らえさせた超覚醒だって、はっきり言って反則級だしな。


話をしている間にもみるみる回復していくガージャック。

見た目も肉の塊から、多少は見れた姿に戻っていた。


「わ、我輩は・・・生きて・・・おるのか?」


「ええ。話せる程度まで回復させてあげたのよ。色々と質問に答えて貰うわよ?」


「ふふ、こうも見事に傷を癒すとは・・・貴様には手も足も出なんだわ。完敗だ。わが使命はここで潰えたか・・・しかし、既に最低限の仕事は完了しているのだ・・・この上はもはや死、あるのみ」


そう言うと、ガージャックは不気味に笑った。


「我が三刃を捧ぐ、我が永遠を捧ぐ、我が命脈を解き、全てをもって弾け散るべし・・・命爆!」


そして、ガージャックは、弾け飛んだ。


「カガリ殿!危ない!」


ホリーが俺に飛びついて押し倒し、覆いかぶさってきた。


「うお!ホリー、何を!」


「今の詠唱はおそらく自爆魔法です。私は死んでもせめてカガリ殿だけは!守ります!」


「いや、爆発は封じ込めてるから問題無いんだけど・・・」


「へ?」


ポカーンと顔を上げるホリー。

爆発点を見た。


その爆発はまだ続いていた。


余程威力があったのだろう。

恐らく、ここら一帯が吹き飛んでいたのは確実だろう。


しかしその威力の全ては、ガージャックを覆う棺の形をしたバリアによって全て封殺されていた。


≪知っていたのね?≫


・・・まあな。だって詠唱が始まった時、アールってば全く慌てて無かったしさ。いくら俺でもなんとなく分かったよ。


≪普通は分かっていても慌てるものなんだけどね。流石カガリね≫


・・・そりゃ相棒だしさ、信頼してるからな。


≪ホリーも大したものね。あの瞬間、自分の命を投げ出してでもカガリの事を守るなんて≫


・・・ああ。ホリーは本当に良い子だよな。いや、良い子なんてもんじゃない。俺が出会った中で最高の女の子だよ!


≪・・・私は?≫


・・・アールは別枠だよ!俺の中でお前の存在はもう飛び抜け過ぎてて、比べるとかそういう存在じゃない!


≪ま、まあ、それなら納得してあげるわよ・・・もっと褒めても良いんだからね!≫


・・・いやいや、褒めるとかそんな次元じゃなくてだな…


<そこはちゃーんと褒めておきなさいよ!私は褒められて伸びるタイプなんだから!≫


・・・分かったよ。これからたっぷり伸ばしてやるさ。


・・・てかさ、


「ホリーさん?そろそろ離れて貰えると・・・」


ポカーンと爆発を見ていたホリーは、ハッと気がついた。

まだ俺に覆いかぶさっていたのだ。


「申し訳ありません!」


そう言うとパッと飛び退いた。


仰向けの俺にむんにゅりと当たっていたバインバインの感触が離れていった。


≪あー残念!≫


・・・な、名残惜しくなんてないんだからな!





「んー」


目を覚ました少女。

虚ろな目でゆっくりと身を起こした。


御者の手による治療で今は傷も回復していて、服も布ではなく可愛いワンピースを着せられている。


そのウェーブがかったエメラルドグリーンの髪は腰までかかり、緑色の大きな瞳は引き込まれそうな程の魅力を秘めていた。

見た目は俺より下、12、3歳くらいか。どこからどう見ても超絶美少女だ。


俺はこの龍人の少女へ声をかけた。


「大丈夫だよ。君の傷は治したから。それと、仲間の仇は討った。あの魔族は倒したから」


虚ろだった目に光が戻った。


「討った?あの魔族を・・・本当に?」


「ああ。残念ながら跡形もなく爆発しちゃったけどな。ガージャックっていうあの魔将軍は死んだよ」


「あなたは・・・?」


「俺はカガリ。ちょうどここを通りがかった時にこの事態に遭遇したんだよ。それで君を助けた」


「・・・他の・・・みんなは?」


「残念だけど、みんな亡くなってたよ。あいつに殺された」


「・・・そう」


少女の目からみるみる涙が溢れて来た。


俺はハンカチで少女の目をそっと拭ってあげた。


「・・・ありがと・・・ミミ・・・私の名前」


「ミミか。改めて、俺はカガリ。で、そこにいるのは」


「ホリーです!ミミ殿、何かあれば言って下さいね!」


「・・・ん」


ペコリと頭を下げるミミ。


俺はアールも紹介する。


「こっちがアール。ガージャックはアールが倒したんだよ」


それを聞いて大きく目を見開いたミミ。

すっと立ち上がって深々と頭を下げた。


「あ・・・ありがとう・・・みんなの仇を・・・討ってくれて」


「どういたしまして。でも、私はカガリの意思で動いただけよ。お礼なら私よりカガリに言いなさい」


ミミが俺に向き直って深々と頭を下げた。


「ありがとう・・・みんなの仇を・・・討ってくれて」


「どういたしまして。そこのホリーは、ずっと君の看病をしてくれていたんだよ?」


「ありがとう・・・看病・・・してくれて」


今度はホリーへあまたを下げるミミ。


めちゃくちゃ良い子だ〜!


ミミは馬車の御者台に座るシブいおっさんを見た。


「・・・あの人・・・は?」


「ああ、あの人は・・・」


そういえば俺、あのおっさんの事、ダミーの御者としか知らないんだよな。

けど、あのおっさんがミミの傷を癒したんだったよな?さて、どう紹介したものか?


すると、アールが代わりに答えてくれた。


「ランサムよ。ランサム・ジェットリックス、彼があなたの傷を癒してくれたのよ」


・・・ランサム?ああ!・・・そうだよランサムだよ、ランサム・ジェットリックス!あいつ、ハリウッド映画のアクションスターじゃないかよ!


≪そうなのよ。昨日、ちょうど1人で彼の映画を観てたから、つい作ってみたのよね≫


・・・ついじゃねえよ!肖像権の侵害だぞ!


≪この世界に肖像権なんてあると思う?それに彼だって私達が遠い異世界でこんな大変な目に遭ってると知れば、快く許可してくれるわよ≫


・・・ああ。肖像権料を数百万ドル払えばな!


≪分かったわよ・・・じゃあ、本物宛に1000万ドル程、送金しておくわ≫


・・・マジで?そんなにお金持ってるの?


≪そりゃ、電子マネーなんてデータをちょちょっと弄れば幾らでも作り出せるし≫


・・・これ以上罪を重ねるなああぁぁ!


なんてやりとりしてる間に、ミミはランサムへお礼を済ませていた。


「はあ、はあ、」


俺はなんとかアールを思いとどまらせたが、危なっかしいったらないぞ全く!


「カガリ殿、なぜ急に息を切らしているのです?」


「ははは、この瞬間にも色々とあってね!」


「また内なる声・・・ですか?」


「ははは、この声がまたヤンチャでさ」

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