49話 戦端は開かれたのか?オイ
ドッカーーーン!!
また落ちて来た!
ドッカーーーン!!
ドッカーーーン!!
ドッカーーーン!!
次々と落ちて来る。
ドラゴンは、傷だらけの血だらけだ。
・・・死んでるのか?
「ええ。みんな死んでるわね。どうやら上空で戦闘をしているみたい。まだまだ落ちて来るわよ!」
「嘘だろ?!俺たちの上に直撃したらどうするんだよ?」
「もう遅いわ」
「は?」
ドッカーーーン!!
言ってるそばから俺たちの真上に落ちて来た。
しかし・・・直撃する直前で透明の何かに弾かれた。
・・・助かった!
「当然、バリアは張ってあるわよ。地上の戦闘なら馬車の自動迎撃システムが作動するんだけどね」
ドッカーーーン!!
ドッカーーーン!!
まだまだ落ちて来る。
ふと見ると、落ちて来たドラゴン達の巨体が・・・縮んでいた。
ん?縮んでいる?・・・ていうか・・・人間じゃん?!
墜落したドラゴン達が次々と人間の姿になってゆく。
男性に女性、みんな裸だった。
「これって、どういう事?」
「さっぱりだわ。龍の姿をした人間か、人間の姿をした龍のどちらかじゃない?それで、どうするの?」
「どうもこうも、人間なら助けた方がいいでしょ!みんな死んでるんだっけ?1人くらい生きてる人いないの?」
「1人いるわね。今落ちて来るわよ」
「え?」
「行ってらっしゃい!」
「は、はああ?」
次の瞬間、俺は・・・飛んでいた。
しかも、ロケットみたいに真上に発射される感じで。
「おいおいおいまてまて!何してくれとるんじゃああああ!!」
≪宇宙へ行きたいのよね?このまま行っちゃう?≫
・・・マジか?
≪冗談よ≫
・・・ははは、カガリロケット、宇宙へは辿り着けず!
≪ホラあそこ、落下して来る女の子、あの子は生きているわよ≫
・・・そういう事かよ!
俺は落下少女の所まで飛んで行き、受け止めた。
受け止めたのだが・・・
うっ!
今俺が抱きかかえている少女は、一糸纏わぬ姿。
そして、俺は少女をお姫様抱っこの形で抱えている。
やばい!
丸見えじゃん!
≪カガリの変態・・・≫
・・・不可抗力だああ!!てか早く隠すもの寄越せええ!!
俺を覆っているナノマシン服からウネウネと布状のペラペラが分離して少女の体を包んだ。
そして俺はゆっくりと地上に、降り立った。
「ん・・・」
少女が薄めを開けた。意識が戻ったようだ。
「大丈夫か?!」
しかしまだ朦朧としているようで目の焦点が合っていない。
そんな状態で・・・
「あの・・・魔族・・・止めて・・・お願い・・・」
どうやらこの惨状は魔族にやられたようだ。
「カガリ殿!大丈夫ですか?!」
ホリーも飛び出して来た。
「起きたのか?!」
「アール様に起こされました!それよりこれは一体?!」
「俺もイマイチ分からん。俺達は様子を見てくるからホリーはこの子を頼む!」
「承りました!」
「アール、行くぞ!」
「了解!」
俺は再び飛び立った。
今度はアールも一緒だ。
とんでもないスピードで一気に高高度まで到達した。
こうしている間にも落下するドラゴンや裸の人間とすれ違う。
みんな死んでいた。
皆殺しって事かよ。
俺は事情こそ分からないが、落下少女が朦朧とする意識の中で告げた『魔族』に対してかなりの敵意が燃え上がって行った。
そして・・・更に上空へ。
いた!
アイツだ!
そこには頭に二本の角を生やし、背中からコウモリのような羽を伸ばした、悪魔のような姿をした男が1人いた。
俺のアニメ脳から推察して・・・見た目的にモブ感は全く無い。
てかあれだけのドラゴンをコイツ1人で殲滅した訳だしな。
そして奴は今まさに最後のドラゴンを仕留めたばかりだった。
息の根を止められた最後のドラゴンが落下して行く。
≪コイツ、かなり強いわね≫
・・・だろうな。
コイツが魔族か?
魔族らしき男は、俺とアールに気付くと、問いかけて来た。
「何者だ、貴様等は?」
「お前こそ何者だ?」
「ふん、カスが。どうやって飛んでおるのかは知らぬが、貴様の魔力は雀の涙、女に至っては魔力を全く感じぬ。そのような者に名乗る気は無い!」
「なら俺も名乗らないからな!」
「好きにせよ。我輩は忙しいのだ。貴様等なんぞに関わっておる時間は無い。死ね」
ガキイイイーン!
男が懐へ飛び込んで来たのとほぼ同時に甲高い金属音が鳴った。
男は刃物の様に鋭く研がれた爪で俺を突き刺そうとして・・・しかし、俺を背後に庇ったアールが、男の爪を素手で受け止めた。
「お、女!貴様、魔力がない筈では?」
アールは男の爪を軽々と受け止めながら、完璧なる無表情で男を平然と見下している。
アールの無表情って、こういう時の威圧感が半端ないのな。
「あなた、魔族よね?」
男は、アールに掴まれた爪を必死に引き剥がそうとしながら答えた。
「そうだ!魔王軍麾下、魔将軍の1人、ガージャックだ。貴様は何者だ?何ゆえ魔力が無いのにそこまで腕が立つ?」
・・・名乗る気無かったんじゃ?俺達の力を認めたって事か?
「ふん、魔力なんて不確実な力、この私が使う訳ないでしょ?安心しなさい。あなたが弱いんじゃない、私が強すぎるのよ・・・・・あーこのセリフ言ってみたかったのよね!」
そう言った瞬間、アールはガージャックの爪を片手の指5本分、全てを引き抜いた。
ズボッ!
「うぐあああぁぁ!!」
ガージャックは一瞬で飛び退いた。爪を引き抜かれた指からは緑色の血がどくどく流れている。
そして顔を歪めてアールを睨みつけた。
「貴様・・・まさか勇者か?」
「は?気分悪いこと言わないでくれる?」
「違うのか?では何者だ?」
≪あいつに名乗っておく?≫
・・・だな。まあ向こうも名乗ったしね。
「俺はカガリ、通りすがりの魔法使いだ。そっちは相棒のアール、俺に匹敵する魔法使いだ」
俺の名乗りにガージャックは目を見開いて激昂した。
「嘘をつくな!魔力の無い魔法使いがいる訳無かろう!」
「いるんだなこれが。まあこれ以上ネタバレはしないけどね。それより、お前、何でドラゴンの人達を殺した?」
「龍人の事か?魔族が人間を殺すのは当然だろう?」
・・・やっぱりあの人達、人間だったのね。ならなおさら捨てては置けないな。
「人間を殺すのが当然ってどういう事だ!」
「ふん、物を知らぬガキが!魔族は人間の殲滅を掲げておるのだ。殺すのは当たり前だろう?」
「人間の殲滅だと?」
「これ以上御託を並べる気はない。我輩は急いでおるのでな。そろそろ死んでもらうぞ人間!」
そう言うとガージャックは再び爪を生やした。
そして、
「我が牙は永遠なり、我が爪は永遠なり、我が角は永遠なり、三つの永遠重なりし時、我が刃は決して折れぬ三刃となる・・・永刃!!」
するとガージャックの角、爪、牙がより大きく、鋭くなった。
・・・今のは、魔法詠唱か?
「何をしようと無駄よ!」
アールは高速でガージャックの懐に懐に飛び込んでみぞおちへ一撃!・・・した筈だった。
しかし、
ガージャックの爪が伸びて盾の代わりにアールの拳を受け止めていた。
・・・アールってば、さっき魔法使いって紹介したのに、肉弾戦かよ!
しかし、
「超振動!」
次の瞬間、ガージャックの爪が砕け散り、体中から血が噴き出した。
「うぐおおぉぉ!」
・・・おお、魔法っぽい技来た!てか決して折れないんじゃ無かったのかよ?それだけ『超振動』が凄まじいって事なんだろうけどさ。
「これでトドメよ!」
アールがもう一撃入れようと腕を振りかぶった僅かな隙に、ガージャックが口を開けた。
口から無数の牙が伸びてアールを貫こうと・・・・・
ガキイイイイッ!
しかし、貫いてはいなかった。
バリアで防いでいる。
アールはそんなガージャックの悪あがきには全く構わず、振りかぶった拳をそのまま叩き込んだ。
ガージャックはもう片方の爪を伸ばして拳を防ぐが、今度はアールの一撃に耐えられず爪は速攻で破壊された。
そしてアールの拳はそのままガージャックのみぞおちへ・・・今度こそ叩き込まれた。
ガキイイイイーン!!
この音は?
生身の体へ突き刺さったならこんな音はしない筈だが?
・・・防がれたか?
目を凝らすと、ガージャックのみぞおちから一本の角が生えていて、その鋭い先端にアールの拳が突き刺さっていた。
俺はガージャックの頭部を見た。
奴の頭の角が1本消えていた。
コイツ、角を体内経由で腹から出したのか?
器用な奴だ。
それにしても、鋭く尖った先端にパンチなんて、想像しただけで痛過ぎて鳥肌が立つよ。
しかし、普通なら拳は角に貫かれてグッチャグチャになっている筈だが、アールの拳は無傷だった。
バリアで防いでいたのだ。
これは・・・バリア最強説だな。
確かに俺もスチルヘルモー戦では、バリアの有能さをこれでもかと味わったけど、この魔族、明らかにスチルヘルモーより強いだろ?
「懲りないわね」
アールがそう言うと、みぞおちの角が砕け散った。
そして、
「うぐおおおあああぁぁ!!」
再びガージャックの全身から血が噴き出した。
しかもさっきよりも大量に。
そしてガージャックは堪らずフラついた。
これは、一撃目と同じく『超振動』ってやつを使ったのだろう。
恐らく、あり得ないくらいの振動を奴の体に伝播させる事で、内部からダメージを与えているのだろう。
・・・アールってば、ガージャックを全く相手にしていない。
強すぎる!




