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46話 <六条優馬と仲間たち2>

六条は汚物でも見るような目で吐き捨てた。


「何がありがとうだ、裏切り者のクソ野郎が!」


六条の手のひらが返った。

そして更に畳み掛ける。


「俺は以前みんなに何て言った?肉が食えない今、みんなで一つになって乗り切ろうって言ったよな?少しでも食べやすい様に虫の姿が分からない位、細かく加工したり、少しでも食べやすい味付けを工夫したりって。みんなは協力してくれた。この中に虫を食べたがってる奴なんて1人もいない。それでもみんな我慢して耐えてくれた。俺だってそうだ。はっきり言って虫なんて食いたくない。魔獣の肉が食いたいよ。日本の料理が食いたいよ。けどな、みんなお互いに我慢し合ってギリギリ乗り切ろうとしていたんだ。それをお前がぶち壊した。お前の身勝手な行いでその結束に傷を付けた。俺は言ったよな?正真正銘、最後の肉だって。その一欠片の肉をお前は全部自分一人で食いやがった。これがどれ程罪深い事か想像してみろ?」


「・・・だって・・・お前がくれたんだろ?」


「ふざけるな!俺はお前に委ねたんだよ!お前は『肉を寄越せ』と暴れた。『みんなの声を代表して要求を伝えているだけだ』とも言ってたよな?だからお前にその肉の使い道を委ねたんだよ。俺はてっきり、細かく切って一口でもみんなの口に入るようにするのかと思ったら、みんなに何の相談も無く独りだけで食いやがった。結局、みんなの代表なんてのは綺麗事で、要は自分さえ良ければ他のみんなはどうなろうが知った事じゃないって考えなんだよお前は!」


「そ、そうじゃない!俺は・・・お前が食って良いって言ったから・・・」


「そんな事は言ってない。俺はお前が自分で判断しろと言った筈だ」


「そんな!俺はてっきり...」


「黙れブタ野郎!何で俺がお前一人だけに肉を食わせなきゃならないんだよ!俺はいつでもみんなの為に動いてるんだ。お前と違ってな・・・・・その俺がみんなの為に言ってやるよ。お前は俺達全員の結束をぶち壊す有害な裏切り者だ!」


ここで六条はみんなを見た。


「みんなはコイツをどう思う?俺は切り捨てていいと思うんだが?」


「俺もそう思う!こんな奴もう仲間じゃねえよ!」


「そうよ!みんなの最後のお肉を独り占めして、本当にブタ野郎ね」


「だな。俺は元々コイツの事、気に入らなかったんだよな」


「あ、俺もずっとキモいと思ってた」


周囲が一気に六条に同調した。

宇土へ罵声が次々と飛ぶ。

しかも「キモい」とか全く関係ない悪口までが出る始末だ。


これが六条の狙いだった。


巧妙に仕組まれた罠、宇土はそれにハマった。

そして1人、悪になったのだ。


あの状況でリーダーから肉を渡されたら、自分に与えられたと思うだろう。


特にあんな状況なら宇土が肉をみんなで分けるなんて考えつく訳が無い。

当然1人で食べるだろう。

そして食べた後に糾弾する。


宇土は六条に完全に嵌められたのだ。


糾弾の声は続く。


「お前さっきメイドちゃんを脅してたよな?変態野郎が!」


「『食ってやる』とか言ってたよな?ヤバくないか?」


「ブタ野郎だけじゃ無くて変態野郎だったか」


「もうコイツ要らねえわ。追放しちまおうぜ!」


「良いじゃん。ウソ月と仲良くやれば良くね?」


「無理無理、こいつ、ウソ月の事めっちゃ虐めてたし」



六条は1つ小さく息を吐いた。


「追放はしない。けど魔王討伐班からは外れて補欠になって貰う」


「六条君、補欠ってどういう事なの?」


「討伐から外れるって、訓練からも外すのか?この変態ブタ野郎を楽させるだけだと思うぞ?」


「当然、訓練は受けて貰う。だがメインの仕事は俺たちのサポート、要するに雑用だ。そしてこいつの態度次第では魔王討伐後も日本へは帰さない」


六条のこの言葉に宇土は顔を真っ青にさせた。


「待ってくれ、俺を見捨てるつもりかよ?頼むこの通りだ、俺も日本へ連れて帰ってくれ!ここの飯は死ぬ程辛いんだ!」


そう言って土下座する宇土を見下ろす六条。


「後はお前の行動次第だ。いいか、裏切り者は許さない。俺だけじゃない、みんなそう思ってる。これからはみんなから裏切り者のブタ野郎として扱われるだろうがそれは自業自得だ。受け入れろ」


うなだれる宇土。

それを見下す六条、そしてみんな。


「じゃあな。俺は王女との打ち合わせに戻る。みんなも夕食の途中だろ?再開してくれ」


そう言うと六条は部屋を出て行こうとした。




しかし、


「ねえ、みんな、おかしいと思わない?どうして私達がこんな目に遭わなくちゃいけないの?」


声をあげたのは、元クラス委員長の初瀬綾音だった。


六条は初瀬を見ると大して興味無さそうに話しかけた。


「初瀬か。『元』クラス委員長なら黙っていたらどうだ?」


「元でも何でも、私がクラスの一員には変わりないでしょ?言いたいことは言わせて貰うわ」


「ふん、好きにしろ」


「言われなくてもね・・・・・ねえみんな、どうして私達はこんな酷い目に遭っているの?最初は順風満帆だったのに。みんな夢一杯で楽しかったでしょ?それが今はどう?虫なんて食べさせられてまさに地獄だわ!」


「そうだ!何で俺たちはこうなった?」


「飯さえまともな物が食えればこんな事にはなって無いのに!」


初瀬はみんなを煽っていた。


「そうよ!全ては食べ物のせい。それで天国から地獄に真っ逆さまに落ちたのよ。こんな事が許されると思うの?」


「だめだ!」


「許されない!」


六条が一度は鎮めた不満を再び堀り起こし、更に煽ってゆく。


「今の六条君のやり方は何?宇土君1人を悪者にする事でみんなの不満の矛先を変えただけじゃない!確かに、これから何か不満があれば、宇土君に八つ当たりする事で、多少の不満は解決するでしょう」


「ひいぃ!」


それを聞いた宇土が悲鳴をあげた。


初瀬は続けた。


「でもそんなやり方じゃあ、結局、虫を食べる事に変わりはないし、空腹は一向に解消されないわ!」


「確かにそうだな」


「宇土なんてサンドバックにしても俺たちの空腹は変わらないって事か?」


「なら、どうすればいい?」


初瀬は、六条他、全てのクラスメイトが見守る中、話を核心へと繋げた。


「みんなも本当は分かっているんでしょう?六条君の手前、言えないだけで、みんな心の中ではこう思っている筈よ!」


「・・・・・」


「魔獣肉を食べられるようにする『毒処理特効』スキル、実は、海月君が持っていたんじゃないかって・・・」


「!!!!!」


初瀬が核心を突いた瞬間、場内の空気が下がった。

そのように感じる程の緊張感に包まれた。


「初瀬、どういう事だ?」


ここで六条が口を挟んで来た。


「惚けないで!このクラスで1番頭が切れる六条君なら、真っ先に思い至っていた筈よ?それとも、全く考えなかった?もしそうだとしたらお笑いね。言ったでしょ?クラスのみんなだって一度は考えた事がある筈よ?そんな事を六条君だけ思いつかないなんて、リーダーの資質が問われるんじゃない?」


「初瀬!貴様ぁ!!」


六条の顔が凶悪に歪んだ。


初瀬はそれを涼しい顔で受け止める。


「ああ、それ、俺も考えてた」


「俺も」


「私も」


「今までの勇者は例外なく持ってたスキルだもんな。それが無いって事は、そう言う事だろ?誰だってすぐに思いつくさ」


1人がその事を口にした途端、堰を切ったようにみんながそれを口にし始めた。


その声が止むのを待って、初瀬は再び口を開いた。


「やっぱりみんなが思ってた事よね。六条君も本当は分かっていたんでしょ?それとも、おマヌケな事に思い付きすらしなかった?」


「初瀬・・・ただじゃ済まさねえからな!」


「何がただじゃ済まさないの?脅し?そんな事を言うって事は、認めるのよね?海月君の称号を剥奪したのが間違いかもしれないって?」


「間違いな筈ねえだろうがっ!あのクソが俺より上のSSSなんてあっちゃいけねえだろうが!テメエもあいつの事を拒否っただろ?あいつの女になりたくねえって!」


「なっても良いわよ?今ならね」


初瀬の発言に、クラスが衝撃を受けた。

あの初瀬が・・・委員長が・・・四大美人の一角が・・・海月の女になっても良い。

そう言ったのだ。


「今ならなっても良いわ。私はもう嫌なのよ!虫を食べるなんて。海月君があの魔獣肉を食べさせてくれるなら、もうどうにでもしてって感じよ!みんなはどう?」


「あいつの女は嫌だけど・・・手を繋いであげるくらいならいいわよ?」


「まあ、おでこにならキスしてあげてもいいかも」


「一瞬だけなら胸を触らせてあげても・・・」


「パンツくらいいくらでも見せてあげるっしょ!」


女子達の空気が変わった。


「はあ?!あのウソ月だぞ?」


「お前ら正気かよ?」


「ついでに俺も胸揉ませろ!」


「俺もパンツみてえ!」


ざわつき出した空気を初瀬が再び締める。


「聞いて!今からでも遅く無いわ。方法はある!・・・・・返して貰えばいいのよ。龍王様から、毒処理特効スキルを」


「「「それだ!!!」」」


初瀬の解決策は、クラスメイトの多くに受け入れられた。


六条にとって痛いところを突かれた事もあり、ここまで大勢が決した以上、覆す事は出来なかった。


覆すどころか、この流れに反発すれば、クラスメイトの多くを敵に回す可能性すらあった。


食事の問題はそれだけ深刻だったのである。


こうなった以上、六条自らが龍王に会いに行くと手を挙げる事は、クラスメイトなら誰でも予想できた。


ここで六条が動かなければ彼の面子は潰れるからだ。


初瀬はそこまで計算していたのだろう。

彼女は・・・やりきった顔をしていた。



翌朝、早速、六条は旅に出た。

六条は、王女からいくつかの魔道具を受け取った。


1つは、龍王の居場所だけを感知するレーダー。

歴代の国王は勇者召喚の際、このレーダーを使って龍王を探し出した。今回もそうだった。


もう1つは、王家に1つしかないそれはもう貴重過ぎる秘薬、


『勇者版:レベルアップの秘薬』だ。


これは、過去の勇者が1つだけ作り出す事に成功した秘薬で、飲んだ者のレベルを飛躍的にアップさせるのだ。


そのほか、必要な装備や道具を持って、六条は旅立った。


そして彼には滝座瀬と三津島がついて行った。


六条に「2人も付いて来い」と言われ、ブーブー言いながらも従ったのだ。


こうして六条は旅立った。


そしてスピーリヒル城内に六条は


・・・・・居なくなった。


初瀬と片山がほくそ笑む。


「予定通り、六条君は城を離れたわ」


「ええ。これで、情報収集に最も厄介な邪魔者が居なくなったわ!」


片山が初瀬に聞いた。


「でも驚いたわ。初瀬さん、本当に海月君の女になってもいいの?」


初瀬は顔を赤らめた。


「あれは・・・調子に乗りすぎただけよ」



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