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45話 <六条優馬と仲間たち1>

スピーリヒル帝国首都、その中心に位置するスピーリヒル城。


王族が住まうこの城は広大な敷地の中にそびえ立ち、その部屋数実に数千。

世界広しと言えど、これ以上豪華絢爛な城は存在しないと言われるくらいに贅を尽くした、強国スピーリヒル帝国を象徴する巨大城だ。


そんな巨大城の片隅にある小さな部屋、そこでこれからある集まりが開かれようとしていた。


「ねえ、優馬、本当にこんな場所なの?」


「ああ。俺は毎日来ているんだから、間違える筈ないだろ?」


「優馬君、本当にありがとう!楽しみ過ぎるよ!」


部屋の前に現れたのは、SS勇者の六条優馬。

そして彼の両サイドには、共にS勇者の滝座瀬麻耶(タキザセマヤ)と、三津島沙彩(ミツシマサアヤ)が寄り添っていた。


滝座瀬は濃いめの茶髪をポニテにまとめたキツめの顔立ちのスレンダー美人、三津島は赤みがかった茶髪ショートの小顔美人、いずれも相当なレベルの美しさだ。


2人は露出多めの服を着ていて、胸元も開いている。

その双丘は2人ともそれなりの大きさでいい勝負をしていた。

いや、三津島の方が少し優っているだろうか。


滝座瀬はクラスの四大美人の一角で、三津島は三大アイドルの一角だった。


2人は六条の勧めで、今初めてこの部屋を訪れたのだ。


「お前達だからこそ呼んだんだ。他には絶対言うなよ?」


「分かってるわよ。言うわけ無いから。安心して!」


「勿論言わないよ?ホント、優馬君を信じてよかったよ!」


女子2人は期待に胸を膨らませていた。


六条はドアをノックした。


すぐにドアが開き、3人は中へ入って行く。


「ようこそおいで下さいました!」


部屋で待っていたのは、フアナ王女だった。


そして王女の背後、狭い部屋の中心に置かれたテーブルには・・・・・ご馳走が並んでいた。


滝座瀬と三津島は思わず声をあげた。


「まさかまたこれを食べられるなんて!」


「ホント、夢みたい!」


王女は2人に微笑んだ。


「夢ではありませんわ。確かに、魔獣肉は先日の晩餐会で尽きました・・・・・しかしそれは、私達王族が食べる分を確保した上でのお話ですわ」


そうなのだ。

テーブルに所狭しと並べられているご馳走の数々は、全て、魔獣肉を調理した料理だったのである。


「さあ、早速頂きましょう!」


王女はそう言うと、席に座った3人を促した。


早速、料理を食べ始める滝座瀬と三津島。


「んまーっ!これよこれ!これが食べたかったのよ!」


「ホント、最高!虫なんて金輪際絶対食べないからね!」


見た目の美しさとのギャップがあり過ぎる位にはしたなく食い散らかしている女子2人、そして優雅に少しづつ口に運ぶ六条と王女。


驚く事に彼等は、他のクラスメイトに内緒で魔獣肉の料理を食べていたのだ。


他のクラスメイト達はどうしているか?

当然、みんな虫を食べていた。

ちょうど今は夕食の時間だ。


滝座瀬と三津島も昨日まではみんなと虫を食べていたのだが、六条に口説かれてキスをした途端、この場に呼ばれる事になったのだ。

六条のお気に入りになったと言う事なのだろう。


クラスメイトには、


六条と王女は夕食をとりながら今後の魔王討伐のスケジュールなど詳細を打ち合わせする。


という話になっている。

夕食のメニューも当然、虫だと思われているだろう。


六条と3人の女性は、美味しい料理を楽しみながら、会話に花を咲かせていた。


そこへ、扉がノックされ、1人のメイドが入ってきた。


「何ですか?食事中ですよ?」


「王女殿下、ただ今、勇者様方の食事中に1人の男性勇者が暴れ出し、それをきっかけにどんどん不満の声が高まり、大変な騒ぎになっております。騒動の原因は「肉を食わせろ」だそうです。


六条はフォークとナイフを置くと1つため息をついた。


「はぁ〜、少しは我慢出来ないのかよ?我儘な事ばかり言いやがって!」


そう言と、六条はフアナに耳打ちした。そしてフアナが用意した何かの布包みを受け取ると、部屋を出て行った。


「2人も来い」


呼ばれた2人は、


「え?私まだ食べてるんだけど?」


「今は動きたく無いんだけどな・・・」


と言いながらも渋々席を立って六条についていった。


一方、食事会場では、


ガシャン!


一人の男子が料理の乗ったお皿を床に叩きつけていた。


日本にいる時には食事が趣味だと豪語していた肥満体型の男子だ。

今は随分と痩せてきていたが・・・


「もう限界だ!こんなゲテモノはもうウンザリだ!ふざけるなよ畜生!」


肥満男子の言葉に同調するクラスメイト達。不満はもう爆発寸前だったのだ。


「そうよ!これからずっと我慢なんて出来ないわよ!」


「そうだそうだ!」


「もっとまともな飯はねえのかよ?」


「肉食わせろ!」


「ラーメン食いてえ!」


「おい、思い出させるなよ!余計辛いだろ?」


「うるせえ!食いてえもんは食いてえんだよ!」


「肉食わせろ!」


「さっきから肉々うるせえぞ!」


「もう日本に帰らせてくれよ!」


一旦爆発した不満はもはや収集が付かなかった。


「おい!もっと食える物を持って来いよ!俺達は勇者だぞ?魔王を倒す英雄様なんだぞ!」


給仕のメイドに詰め寄ったのは宇土貴弘、最初にお皿を叩きつけた肥満男子だ。


「ちょっと宇土、やめなさいよ!その人は関係ないでしょ?」


「おい宇土、そのメイドさんを食べる気じゃ無いだろうな?モテないからってヤケになるなよ!」


「うるせえ!けどそう言えば虫以外に人間も毒は無いんだったよな?」


メイドを睨みつける宇土、これには彼に同調していたクラスメイトからも非難の声が上がる。


そして震え上がったメイドの女性は耐えきれず失神した。


そこへ、


バタン!


「いい加減にしろ!」


扉が勢い良く開き、よく通る声が響いた。


六条だ。


混乱する室内に漂う安心感。


しかしまだ混乱状態は収まっていない。


「宇土、お前だってな、この混乱を引き起こしたのは」


「ああ?俺はもうこんなクソまずいゲテモノは食いたく無いって言ってるだけだ。あの超絶美味かった魔獣肉みたいな、まともな飯を食わせて欲しいだけだ!」


六条は宇土を睨みつけた。


「それでこのザマか?言っただろ、これはみんなで心を一つにして乗り切らないといけない問題だと」


「分かってるよ。だから提案してるんじゃねえか、まともな飯を食わせろってな!」


「みんなの覚悟や結束を乱してでもか?」


「俺は別に自分の為だけに言ってるんじゃねえぞ、みんな言わないだけで思ってる事だろ?代表して俺が動いただけだ」


「ほう、みんなの声か、自分さえよければ良いという訳じゃないんだな?」


「・・・そうだよ」


六条はおもむろに手に持っていた布の包みを宇土の目の前に放った。

包みは「ベチャ」という音と共に宇土の足元へ転がる。


宇土は何かに気付いたのかハッとして包みを拾い上げ慌てて布を解いた。


すると、中からは分厚い肉が一切れ出て来たではないか。


宇土は勿論の事、周りにいた全員の目が一気に見開かれた。


「これは、肉だ!」


「肉?」


「え、肉?!」


「あるじゃん!肉!!」


「よっしゃあ!!」


一瞬の沈黙の後、喜びを爆発させようとするみんなを六条が制した。


「待てみんな!それは確かに肉だ、魔獣のな。食べ尽くして空っぽになった無限収納の端っこに偶然引っかかっていたらしい。つまり正真正銘それが最後の肉だ。この騒ぎを聞いて王女に頼み込んで貰ってきたんだ。それっぽっちだけど1人分には足りるだろう」


「1人分だけ・・・」


みんなの目の色が変わった。


1人分だけ。


等しく飢えていた全員の気持ちは、これをどうすれば自分の口に入れられるだろうか?という一択だろう。


六条は周囲の様子を一回り確認して、宇土へ告げた。


「食えよ」


「は?だってこれが最後なんだろ?」


「ああ。けど俺はこの騒ぎを収める為にそれを無理言ってもらって来た。騒ぎの発端はお前だろ?さっきだって罪も無いメイドに肉を要求してただろ?なら良かったじゃないか。要求が通ったぞ?」


「・・・良いのか?」


「俺に同意を求めるな。これはお前の要求だろ?勝手に自分で判断して食うなり何なり好きにしろ」


宇土は少し迷った後、手掴みで肉にかぶりついた。


「美味え!これだよ!魔獣の肉だ!柔らけえ!マジ美味すぎるよ!」


そう言うとガツガツと勢い良く頬張っていく。


全員の目が宇土に集中していた。


今にもそこかしこから『ごくり』という喉の音が聞こえて来そうな静けさだった。

そのくらい宇土へ注意が向き過ぎていたという事だろう。


そんな中「ごくり」と本物の音を鳴らして宇土は最後の一口を飲み込んだ。


「はあ〜、生き返ったよ。ありがとうな六条」


六条は汚物でも見るような目で吐き捨てた。


「何がありがとうだ、裏切り者のクソ野郎が!」

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