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40話 <委員長こと初瀬綾音の視点6>

「あー、ちょっと良いかな?君達の中で『毒処理特効』っていうスキルを持っている人、手を上げてくれないかな?」


新騎士団長が尋ねてきたけれど誰も手を上げない。

因みに私は、持っていなかった。


「誰か居ないかな?数人は絶対にいる筈なんだけど?」


何人かから手が上がった。

けれど・・・


「『毒耐性』ってスキルはあるけど、それですか?」


「いや、それは違うかな。『毒処理特効』ってヤツだよ?」


「あー、じゃあ俺のは違うわ。『毒消し』だし」


「私のも『毒消し』かな」


「え?嘘だよね?・・・ホントに誰もいないの?」


結局、一人も見つからず、新騎士団長は笑顔を引きつらせていた。


どうやら深刻な事らしい。


誰か毒に侵された人でもいるのだろうか?

でもそれなら『毒消し』でも良さそうなものだ。


彼が補佐役の騎士団員へ何か耳打ちすると、補佐役は大慌てで城へすっ飛んで行った。


何だか嫌な予感がする。


どういう事なのか聞こうと思ったけれど、また六条君に割って入られる様な気がしてタイミングを逃してしまった。


結局、六条君が何かを発言する事は無かったのだけれど・・・



異変はその夜起こった。


夕食の為に集まった大広間は悲鳴に包まれた。


「キャー!何これ?!」


「おい!昨日の飯と全然違うじゃねえか!」


「ヴォエぇ、気持ち悪い、ヴォエぇ」


「こんなもん食える訳ねえだろ!」


「どういう事なのか説明してよ!」


食卓に所狭しと並べられた料理。

その全てに虫が入っていた。


誤って混入したとかそんな生易しいものではなくて・・・虫がメインの料理だったのだ。


色々な種類の虫がそのままの姿で豪華に盛りつけられている。


正直、かなりグロテスクで見ていられない。


おそらくこの世界の郷土料理的な物なのだろう。


けれど、流石にこれを食べる気にはならない。


だって、気持ち悪すぎるから・・・私も・・・これは本当に・・・ダメだ・・・オエェ。


クラスメイト達は、それはもう、阿鼻叫喚、大恐慌、修羅場、そして大ブーイングだった。


クラスメイト達の批判に晒された王女様は、あらかじめこの事態を想定していたのか、比較的冷静だった。

そして淡々と説明を始めた。


「やはり、皆様の世界では虫をお食べになる習慣はありませんのね。過去の勇者召喚に関する文献にも書いてありましたのでおそらくそうだとは思っていたのですが。しかし、この世界の主食は虫なのです。皆様には早く慣れて頂かないといけません」


「ふざけるな!聞いてねえぞ!」


「こんなもん慣れるかよ?!早く昨日の肉料理に取り替えてくれ!」


当然、みんなは反発した。

私もこれに関してはみんなと同意見だった。

虫は・・・本当に虫だけは・・・勘弁してほしい。


しかし、王女様は申し訳なさそうな表情で首を横に振った。


「申し訳ありません。その肉が、尽きてしまったのです。一昨日の皆様への歓迎の晩餐会で使い切ってしまい、その残りも昨日の夕食で食べきってしまいましたので」


「はあ?何で備蓄が無いのよ?ここは王宮でしょ?普通大量にストックしてるものでしょ?」


「だよな、それに無いなら狩ればいいじゃん!確か魔獣の肉だったよな?」


「魔獣をいくら狩っても無駄ですわ。全ての魔獣の肉には致死性の猛毒が含まれているのです。そのままではとても食べられるものではありません。皆様の中に『毒処理特効』スキルをお持ちの方がいれば、毒を無効化して食材に出来たのですが・・・」


「別に俺達じゃなくても、他に誰かそのスキル持ちはいねえのかよ?」


「残念ながら、このスキルは過去、勇者様にしか発現が確認されていません。勇者様専用のスキルなのです」


「それっておかしくないか?昨日までは食べられる肉があったんだよな?」


「はい。あれは皆様の一つ前、100年前に召喚された勇者様がスキルを使って毒抜きされた肉を使いました。我が国の秘宝、無限収納に保管してあったものです。無限収納の中は時間の流れも止まりますので、新鮮な状態を保ったまま100年間保管されておりました」


「100年前って・・・マジかよ?」


「はい。その貴重な肉も一昨日の晩餐会で使い切ってしまいました。皆様の中に『毒処理特効』持ちがいらっしゃると思っていたので使い切ってもさしたる問題は無いと考えていました。事実、100年前は勿論、その前も、そのまた前もずっと、この世界に召喚された勇者様は例外なくこのスキル持ちがいらっしゃいました。それも複数」


「それって、そのスキルを持ってない俺らが悪いって事かよ?」


「その様な事を申し上げるつもりはございません。ただ、そのスキルが無いと本当にどうしようも無いのです」


「それじゃあ結局、そのスキルについては俺達勇者が頼みって事かよ?」


「はい。この世界の人間は元々、虫が主食ですので何の問題もございません。しかし、過去の勇者様も皆様同様、虫を嫌い、食材はスキルを使ってご自分達で調達されていました」


「俺達はそれが出来ないって事か?」


「残念ながら」


「何だよそりゃ!俺はこんなもん食うの嫌だからな!」


「そうよ!こんな世界に連れて来たんだからあなた達が責任持って食べられる肉を用意しなさいよ?!」


「俺は『毒消し』ってスキルを持ってるんだけど、それじゃダメですか?」


「はい。毒消しは人間の体内に入った毒を中和するスキルです。毒そのものと言える魔獣には効きません」


「じゃあ、食べた後に『毒消し』を使って中和すれば?」


「あ、それ有りかもね。ちなみに私『毒耐性』持ってるから食べられるかも?」


「『毒消し』や『毒耐性』があると言っても、全ての毒に効く訳ではありません。お持ちのスキルよりも強力な毒だと効果は無いですし。毎日、朝昼晩が命がけになります。それに、そもそも、毒抜きをしていない肉は不味くてとても食べられたものではありません」


「食い物は何も肉だけじゃ無いだろ?魚とか、野菜とか、穀物とか、フルーツとか、それに魔獣じゃない普通の動物はいないの?牛とか豚とか」


「魔牛や魔豚はおりますが、魔獣でない生き物は人間や亜人、後は虫くらいです。それ以外は魔魚、魔菜、魔草、魔木などがあり、それらもひっくるめて全て魔獣と呼ばれています。勿論、毒入りで食べる事は出来ません。ちなみに人間も亜人も毒はありませんが食べるのは禁忌です。食べると神の呪いで"同族喰らい"という醜い魔物に変わってしまい、討伐対象となりますのでお気をつけを。皆様、人肉を食べる習慣はおありですか?」


「「ない「ねえよ!」わよ!」」


全員一斉に突っ込んだ。


「説明は分かった。けどそれじゃあホントに虫しか食べるもの無いじゃん」


「どうするのよこれ?」


「こんなの絶対嫌よ!すぐ元の世界に帰してよ!」


「頼むよ!何とか食える肉を確保してくれよ!」


「責任取れよ!」


クラスメイト達は大パニックどころでは無い、それはもう酷い状態になっていた。

泣いている女の子もいる。


当然だろう。


今日のお昼までは、心から美味しい料理ばかりだったのだ。

日本にいた時と遜色ないどころか、むしろ上回ってさえいた。

だって、最高級の料理を毎日食べられるのだから。


この幸せがずっと続く。


・・・そう思っていたのだ。


みんな、私と同じ気持ちだったと思う。

ここは国の王様が住んでいるお城で、私達はそこに住んでいて、しかも勇者で、そしてこの国の人達から請われてここに居る。

ゲストなのだ。


そりゃ当然、VIP待遇がずっと続くと思うでしょ?普通。


元々、魔王討伐まで出来る限りのサポートをしてくれる。

そういう話でもあったし。


けれど王女様の話が本当なら、こと食事に関しては、VIP待遇したくても物理的に不可能という事なのだろう。


現に、王女様は、とても申し訳無さそうな顔をしている。


私達だって、ワガママを言って王女様を困らせるつもりは無い。


無いけれど、流石に虫は・・・


何度も言うけれど私だって虫は大嫌いだし、この問題に関してはどうして良いか全く分からなかった。


もう、お手上げだ。


虫なんて絶対食べたく無い・・・

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