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38話 バトっちゃうよ、オイ!

「カガリ殿!そのエッチな根性を叩き直して健全な男子に戻して差し上げます!」


「いや、あれは誤解でだな・・・」


「問答無用!」


俺は今、鉱山内にあるドーム状になった広いスペースで、ホリーと一騎打ちをしていた。


なぜこうなったかというと・・・


勿論、昨夜勃発した『ホリーのお着替えに乱入事件』のせいだ。


あの後、こってりとお説教を受けたのだが、翌朝、ホリーから模擬戦の提案を受けたのだ。


ホリー曰く、別に昨日の事件のせいではなくて、単純に俺の魔法以外の実力を確かめたい。


という事だった筈なのだが・・・


・・・思いっきり『根性叩き直す』とか言っちゃってんじゃん!


≪安心して、私がついてるから≫


・・・あのね、人ごとみたいに言ってるけどさ、アールのせいだからね?


≪テヘペロ!≫


端っこで試合を見学している生アールを見ると、無表情のまま、片目を閉じて舌を出していた。


・・・無表情でそれやると怖えよ!


≪失礼ね!≫


・・・お前に言われたくないよ。それに、今回は魔法という名の超科学は使えないルールだからな?


≪なら魔法じゃない超科学はOKって事じゃない≫


・・・どんな屁理屈だよ全く。あと、『超科学』じゃなくて『五五超科学』じゃ無かったのか?


≪昨夜のお詫びに、ここは譲って『超科学』呼びに合わせてあげるわ≫


・・・もっと別のお詫びにしてくれよ・・・


「カガリ殿!心ここに在らずでは一撃も持ちませんよ?」


試合用の模擬剣を構えるホリーは、まさに闘志溌剌と言った雰囲気で俺を見据えている。


顔がキリリとしていてめちゃくちゃ凛々しい。


・・・やっぱり超美人だわ。


≪そんな事ばっかり考えてるから、誤解されるのよ?≫


・・・ばっかりは考えてない!少しだけだっ...


脳内でアールに突っ込んだ瞬間、ホリーの姿が視界から消えた。


ブオッ!


目の前で剣が空を切る音がした。

物凄い剣圧だ。


俺は・・・間一髪、ホリーの一撃を躱していた・・・みたいだ。


「うおっ!」


「まだまだ!」


再びホリーが消えると、またもや


ブオブオッ!


今度は2連撃の音だ。


俺はまたもや躱していた・・・みたいだ。


・・・みたいだ。って、何?なんで躱せてるの?


「やりますね、さすがカガリ殿!」


・・・やるの?俺。やっちゃってるの?・・・って訳ないだろ?アールってば、魔法はダメだって・・・


≪魔法はダメでも、魔道具なら問題ないでしょ?カガリが着ているナノマシン服が自動で動くから『このくらい朝飯前さ!』みたいな顔してれば良いわよ≫


・・・魔道具って、この屁理屈め!けど、これから先、こういう戦いもある訳だし、慣れておくのが俺にとっての訓練かもしれないしな・・・じゃあアール、任せるぞ?


≪了解!≫


・・・一応言っておくけど、絶対殺すなよ?あと怪我も無しだからな?


≪流石に分かってるわよもう!≫


ホリーは再び構え直すと、再び消えた。


ガキンッ!


火花が散った。


今度は、剣を交えたのだ。

俺はホリーへ反撃の一撃を放った。


今度はホリーが飛び退いて躱した。


・・・けどさ、ぜんっぜん見えん!

なあ、アール、以前、脳内で映像補正して多少早い動きも見えるようにしてくれたよな?あれ、出来ないか?


≪別に見えなくてもナノマシン服が全部勝手にやってくれるんだから問題ないでしょ?≫


・・・無理無理!見えないと全く何やってるかも分からないから!『朝飯前』みたいな顔できないよ?ポカーンとしたアホ面にしかならないよ?


≪仕方ないわね。最強剣士がアホ面じゃ様にならないし≫


一瞬、視界にノイズが走って、その後は世界がまるで違って見えた。


ホリーの動きが見える見える!


≪補正の精度を上げたから、これなら良い感じでしょ?≫


・・・マジですげえな!流石アールだよ!


≪このくらい朝飯前よ!もっと褒めていいからね!≫


そう言うと、俺の動きが一段階速くなった。


ホリーが慌てて躱そうとするが、俺の動きはそれを逃がさなかった。


ガキンッ!


辛うじて剣を盾にする事で俺の一撃を防いだホリーは、後ろに吹っ飛ばされた。

勢いを殺してスッと着地したホリー、


「やりますね、あそこで動きが上がるとは。では私も本気で参ります!」


一瞬で俺の懐に飛び込んで来るホリー、確かにさっきより数段速い。


俺はしかし、それを躱しざま剣を叩き込む。

今度はホリーが躱しざま剣を叩き込んで来た。

お互い、至近距離で剣を躱しつつ、剣を叩き込んで行くが、全くかすりもしない。剣と剣が交わる事すら無い。


それはまるで途轍もなく高度な演舞のような、計算し尽くされた動きのようだった。


その高速の動きの中で、ホリーと目が合った。何度も何度も。ホリーの目は、ギラギラと鋭く、そしてこの戦いを心から楽しんでいるようだった。


・・・バトルジャンキー


そうだった。ホリーはバトルジャンキーなんだった。


どうやら俺は、というかナノマシン服は、ホリーの闘争心に猛烈に火を付けたようなのだった。


その後、演舞のような躱し合いが暫く続いた後、ホリーによる誘いの一撃によって、激しい剣と剣のぶつかり合いに様相を変えた。


ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!


高速で飛び散る火花。そして金属音。


今度は演舞の様な優美さは微塵もなく、ただ、力と力のぶつかり合い、先程の躱し合いを女性に例えるとすると、今行われているのはまさしく男、それもゴリッゴリの厳つい男そのものだった。


しかし、このせめぎ合いも一進一退、決着は付かなかった。


2人は互いに飛び退いて距離を取った。


「ハァハァ・・・やはりやりますね。ただの大魔法使いでは無いと思っていましたが、まさか剣の腕もここまでとは・・・やはりカガリ殿は別格です。勇者とは、こうも物凄い存在だったのですね?」


「でも、剣はここまで互角だろ?勇者が別格って事にはならないと思うけど?」


「あれだけ魔法が使えた上に剣の腕まで凄いというのがもう別格なのですよ。普通はいかに凄腕でも、どちらか一つだけです。剣も魔法も凄腕というのがもう別格の証なのです」


「そうなんだ・・・」


・・・実際はどっちも別格なくらい雑魚いんだけどね。


ホリーは息を整えると再び闘気をみなぎらせると、


「カガリ殿、残りの戦い、私の全力で行きます。カガリ殿を信じて、殺す気で行きますので、どうか死なないで下さい!」


・・・なにその宣言、怖えよ!


宣言通り、ホリーの猛攻はさっきよりも更に凄まじかった。

速さも撃ち込みの鋭さも全てが更に数段増していた。


しかし、ナノマシン服もそれに見事に合わせて来ていた。

あの動きについて行けるって、ナノマシン服さん優秀すぎだろ!


しかし、ホリーがここまで強いとは思わなかった。

スパガーラ戦も凄かったが、あの時はあくまで観戦していただけだった。

今は実際に戦っている。

肌で感じているだけに、その凄まじさがヒシヒシと伝わって来た。


このホリーと渡り合っていたスパガーラもやっぱりバケモノクラスだったんだな。


凄まじい攻撃の最中、ホリーが一瞬、ニヤリと笑ったのが見えた。

そして、


「カガリ殿、ここまで良くやりました。しかし、これで終わりです!『斬導』!」


というと、ホリーが何も無い空間に必殺の一撃を放った。


・・・斬導って、スパガーラを葬ったあのとんでもない決め技か?!ヤバイっ!ヤバイっ!ヤバイっ!


≪問題ないわよ≫


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・あれ?」


ホリーが首を傾げた。


・・・ん?不発か?


≪問題ないって言ったでしょ?≫


すると、ホリーがフッと、笑った。


「まさか、あの仕掛けに気付かれていたとは、やはり私ではカガリ殿には勝てませんでしたか」


・・・は?どういう事だ?


≪糸よ。ホリーは戦いながら、カガリの体中に巧みに糸を巻きつけていたの。それはもう細い細い目に見えないくらいの糸ね。『斬導』って、物を伝って斬撃を飛ばすんでしょ?だから、その見えない斬撃が来た瞬間、体の糸を切り離したのよ≫


・・・そうだったんだ。


ホリーは、完全に、戦闘態勢を崩して俺に微笑みかける。


「この勝負、切り札が破られた時点で私の負けです。カガリ殿、お見事でした!」


・・・どうやら勝ったみたいだ。


≪ほら、心配要らなかったでしょ?さあ、『朝飯前だよ!』みたいなキメ顔でフィニッシュよ!≫


そうだった、キメ顔するんだったよな。


けど俺ってば、


≪何でキメ顔がそれなのよ!全くもう!≫



ポカーン・・・めちゃくちゃアホ面をしていた。

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