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33話 これが至福ってヤツか?オイ!

コンコン・・・ガチャリ


ノックの後、ドアが開き、ホリーが入って来た。


「カガリ殿、お食事の支度が出来ましたよ!」


「ああ、今いくよ」


アールはさっき、偽スパとして鉱山の仕事をしに出て行った。


「この体はご飯食べる必要無いから二人で楽しんで!」


だとさ。


ああ、そうするよ・・・楽しめればな。


飯ね。正直、この世界に来てからの食事って良い思い出が全くないんだよな。


だって、虫、虫、虫!だぞ?


パン虫にポテ虫。

決して忘れる事の出来ないヤツらだよ。

でもここまで生き延びたのはアイツらのお陰でもある。


ありがとう!成仏しろよ!


・・・・・激マズだったけどな。


そういえばさっきはお粥を作るような事を言ってたよな?

ホリーが作ってくれたのか?


ホリーってば、只のバトルジャンキーかと思ったけど、料理も出来るんだな。

「得意料理は虫料理です!」

なんて、もし日本なら嫁の貰い手ないぞ?

まあホリーの器量ならそれでも引く手数多かもな。


そう言えば、パン虫もポテ虫も、全く調理されてなかったんだよな。まんま食ってたから。


まさに素材の味を楽しむパターンだったし。

あ、間違えた、素材の味を苦しむパターンだった。


虫のお粥ってどんなやつなんだろうか?

また新たな虫が登場するのか?

もしかして米粒みたいな虫か?


あ、分かった!


コメ虫だろ?


どうせそんな安易な名前に決まってる。


俺はそんな事を考えながら、部屋を出た。


部屋の外は長い廊下になっていた。

まるで洋館の廊下みたいだ。


「ここって、鉱山の中なんだよな?」


俺は不思議に思ってホリーに聞いた。


「はい。しかし、この建物自体は、アール様が作ったセーフハウスというヤツです」


「セーフハウス?」


「はい。秘密基地みたいなものだ。と仰ってました。カガリ殿はご存知ないのですか?」


「それは知ってるけど、ここをアールが作ったってのは今知ったよ」


セーフハウスって事は、他の奴らに見つからない様になってるんだろうな。流石アールだよ全く。


長い廊下を進み、通された部屋は食事部屋だった。


部屋はそれ程広くはないが、2人で使う分にはかなり余裕がある間取りだ。


部屋の真ん中に大きめのスチール製のテーブルがあって、その上には、大きな鉄鍋が置いてある。そしてその中には真っ白な・・・お粥?が食べきれないくらいタップリと入っていた。

湯気と共に漂ってくるお粥の匂い。


じゅるり!


めちゃくちゃ美味そうな匂い!


お粥の匂いなんて、日本にいた頃は意識した事無かったけど、これは、確かに俺が知っている匂いだ。でも、こんなに香ばしくて食欲を唆る匂いだったんだな。


これって、本当に虫か?虫なのか?


このコメ粒1つ1つがコメ虫だと?嘘だろ?


「なあ、これって、コメ虫なのか?」


「コメ虫とは?・・・これは、お粥ですよ?カガリ殿はご存知かと思いましたが・・・」


「勿論、知ってるけどさ、けど俺の知ってるお粥は虫じゃなくてだな・・・」


するとホリーは、いきなり意味不明な事を口走った。


「偉大なる大魔法使い、カガリ・ウミツキが作りし魔道具、ザ・料理長1号よ。この料理の説明をせよ!」


「・・・この料理名はお粥です。日本の家庭料理で、白米を水で柔らかく煮た料理です。カガリ様は食べ盛りの男子ですので、少々、塩分多めの濃い味付けにしております。

惣菜には、

梅干し、半熟玉子、海苔の佃煮、たくあん、奈良漬け、イカの塩辛、とろろ昆布、塩昆布、しらす、鮭、鮭フレーク、肉味噌、

以上をご用意しています。

どうぞごゆっくりお召し上がりください」


「・・・は?」


「は?とは?これはカガリ殿の魔道具ですよね?」


「あ・・・そ、そうだったよ。料理番長だよね。思い出した!」


「ザ・料理長1号ですが・・・」


「そうだった、適当に名前付けたから忘れてたよ!」


・・・アールの奴、こういう事かよ!


そういえば、アールと二人きりの時に言われてたんだった。


「カガリが寝ている間、魔法と称してホリーに色々と見せちゃってるから、適当に話合わせておいてよね!」


だってさ。


それにしても、ザ・料理長1号って何だよ?

なんだかあのスチール製のテーブルから声が聞こえた様な・・・スチール製・・・魔道具・・・ナノマシン・・・超科学・・・料理長・・・お粥・・・!!!


「まさか・・・本物か!!!」


「カガリ殿?!」


俺は驚くホリーをよそに、速攻で席に着いた。


そして間近で見るお粥と、お惣菜の数々・・・


「今まで生きて来た中で一番美味そうだよこれ!」


俺は茶碗を手に取ると、あたまをひっ掴み、ガバッと豪快にお粥を救った。


ドロッと茶碗に盛られるお粥。


その動きと共にモワッと香るお粥の匂い。


これは・・・本当の本当に正真正銘、間違いない!


本物のお粥だ!!!


・・・最高だあああぁぁぁ!!!


俺はもう待ちきれなくて、ホリーの分も茶碗によそいだ。


「ありがとうございます!」


「ホリー、もう待ちきれなくてさ、食べて良いか?」


席に着いたホリーへお伺いを立てた。


「勿論です。どうぞお食べください!」


「じゃあ遠慮なく!いただきます!!」


俺は手を合わせると、一気に口に流し込んだ。


「い、いただきます?」


日本流の作法に戸惑ってるホリーを尻目に、俺は速攻で一杯目を胃に流し込んだ。


口が、舌が、喉が、食道が、胃が、そして体全体が、お粥を味わい、吸収していた。

そんな感覚だった。


「そうだよ!これが飯だよ!これが食事だよ!・・・美味い!美味すぎる!!こんな美味いお粥生まれて初めてだよ!」


俺は泣いていた。

涙を流しながら食べていた。

泣きすぎ?そんな事は無い。


これは、妥当な涙だよ。

俺と同じこのシチュエーションで泣かない奴は日本人じゃねえ!


それ程当たり前の感動だよ!


俺は、お惣菜をつまみ、それぞれの味のバリエーションを思う存分堪能した。


会話は無い。

いや、話している暇が無い。


時間も感じない。

いや、今この瞬間、俺の中で時間の流れは完全に止まっていた。


ただただ、この、至福の時を・・・思うがままに・・・味わっていた。



「ぷは〜、食った食った〜。流石にもう食えん!」


ああ、本当、最高のひとときだったよ。


「ごちそうさまでした!」


「ご、ごちそうさま?」


ホリーは俺の勢いに気圧され、唖然と俺を見つめていた。


「ごめんな、ホリーを置き去りで食べちゃってたな?」


「い、いえ、久々のお食事なのですから、そうなるのも致し方ありません。実は、私も初めて、『ザ・料理長1号』の作る料理を食べた時には、それはもう今のカガリ殿に負けないくらいに我を忘れて食い散らかしてしまいましたので・・・」


「そ、そうなんだ・・・」


「はい。何せ、虫以外の物を食べるのが生まれて初めてでしたので」


・・・ああ、やっぱりそうなのか。この世界には虫以外に食べ物がないんだ・・・


ホリーは幸せそうな顔をして続けた。


「しかも、出る料理出る料理全て、この世のものとも思えない程に美味とは・・・今まで、クソマズい虫しか食べてこなかったので、食事とは、クソマズくて当然だと思っていました。しかし、まさか世の中に『美味しい』という言葉が実在するとは、本当に生きてて良かったです!」


「そこまで喜んでくれたなら良かったよ。俺もこの世界に来て、パン虫とかポテ虫とか、クソマズい虫ばっか食ってさ、まさかまた日本の料理が食えるなんて思ってなかったからさ、もう本当、嬉しくて嬉しくて。ホリーも俺の世界の料理を気に入ってくれて嬉しいよ!」


「はい。大いに気に入りました!というか、これを気に入らない人間はいません!私は本当に運がいい。カガリ殿と出会えるとは!その点だけは、この鉱山へぶち込んでくれやがったクソ野郎共に感謝しなければ!」


「クソ野郎?」


「はい。カガリ殿には、差し支えなければ、私のお話を聞いて頂きたいと思います」


「分かった。俺もさ、ホリーには、俺の事を色々と話さないとと思ってたんだよ。『落勇者』の事とかさ」

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