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31話 奇跡が起きたって事だよな、オイ

鉱山のラスボス、鉱帝スパガーラを倒した!

これで鉱山からの脱出を阻む者はいない。

作戦は成功した!


俺はホリーが掛けてくれた言葉を思い出した。

・・・『カッコ良かった』か。


≪なーに噛み締めちゃってるのよ?≫


・・・いや、ホリーがさ、カッコ良かったって...

≪はあ?それ、私も言ったんだけど?≫


・・・分かってるよ。アール、ありがとうな!


≪ど、どういたしまして!≫


・・・でも、最後は危なかったな。まさに間一髪だったよ。それに、まさかあんな事になるなんてさ。


≪後悔してない?≫


・・・全然!むしろ良かったと思ってるよ。アレのお陰でホリーを救えたんだからさ。



あの時・・・


ホリーがまさに首を絞め落とされそうになっていた時・・・


そしてスパガーラが手出し出来ないでいる俺を仕留めようと、左手も触手化すべく魔法詠唱を始めた時・・・


俺とアールは、超覚醒された脳と体の全神経を集中して、破損した称号の修復に取り組んでいた。


・・・時間がない!手早く頼む!


≪無茶言ってくれちゃって全く!綺麗には修復出来ないし二度と戻らない傷跡が出来るかもしれないわよ、覚悟してね!≫


・・・問題ないさ!


≪ふーん、なんだか一皮向けたって感じね≫


・・・何だって?


≪何でもないわ。それよりもっと神経を研ぎ澄ませなさい!修復箇所のイメージがブレてるわ!≫


・・・了解!


そうして緊急の称号修復作業は行われた。

と言っても、作業自体はほんの一瞬で終わった。

繊細な作業をしている暇なんてない。

手荒く一気に傷口を閉じたのだ。


俺の体の中に取り憑いている『称号』という異世界の異物、そのボロボロに引き破られた傷は強引に閉じられた。


≪作業は終わったけど、思ったより酷い傷跡が残ったわよ。カガリはどう?異常ない?≫


・・・ああ、何ともないよ。でも、傷跡には何の力も宿って無い・・・相変わらず空っぽのままだよ。


失敗だったのか?


いやまだだ。


「ステータスオープン」


俺は最後の可能性に縋って、ステータスを開いた。


・・・・・・・これは?!



名前 海月加架梨

レベル21

称号 ☆♪○*¥$€(バグ)


HP 2/30

MP 0/30


攻撃力30

防御力30

素早さ30

魔法攻撃力30

魔法防御力30

器用さ30

頭脳30


スキル テレ☆♪パシー¥$€

魔法 なし



・・・・・バグっていた。


ちくしょう!本格的にぶっ壊れたって事かよ?!

もう万事休すか?

ホリーを助けられないのか?


・・・・・いや待て、スキルの欄に何かある。


これは?


テレ☆♪パシー¥$€


・・・テレパシーって読めないか?


バグってるけど・・・


でも、辛うじて読めるって事は、試してみる価値はある。


俺は神経を集中させてホリーに想いを届けた。




・・・・・それで今に至ると。


≪あのタイミングであんな事になるなんて奇跡としか言いようが無いわね≫


・・・どうせ奇跡ならもっと綺麗に決めたかったよ。


≪綺麗に?≫


・・・ああ。称号を修復した後さ、ちょっとは期待したんだよ?

SSS勇者の称号が戻らないか?もしくはそれ以上のとんでもない称号が宿らないか?


≪とんでもない称号って?≫


・・・SSSS勇者とか?


≪バッカじゃないの?・・・でも、やっぱり無理やり修復した事、少しは後悔してるんだ?≫


・・・後悔は本当に全くしてないよ。ちょっとだけ夢は見たけどね。

それにしても、この『バグ』ってヤツ、これからどうしよう?


≪改めて、必要な技術データをアップデートしてから調べてみるわ。可能なら改めて修復し直せるかもだしね≫


・・・頼むわ。


≪それより、無理に超覚醒までやったから、カガリはもうすぐ完全な電池切れになるわ。当初の予定だった、鉱山を脱出してから休養を取る。ってのはもう無理よ。この鉱山で休養しないともう間に合わないわ≫


・・・そうか、じゃあホリーだけ先に...

≪悪いけど、ホリーには残ってカガリのお世話をしてもらいたいのよ。今から説明するから、カガリは電池切れになる前に最後の仕事を頼むわね≫



俺はまだホリーに膝枕をして貰っていた。

このふんわりと蕩けるような心地良い感触は一度味わうと、もう離れ難い。もっとも俺は離れたくとも離れられない状態だったのだが・・・体が全く動かないのだ。


・・・アールが言った通りだな。


アールの説明だと、俺はもう電池切れ寸前で、この後、意識を失うらしい。

そして数日は一切目覚めないという事だ。


その前にホリーに状況を説明し、後を託すようお願いするのが、俺の最後の仕事だった。


「なあ、ホリー」


「何でしょうか?」


「実は俺、もう体力も魔力もほぼ使い果たしちゃってさ、もうすぐ意識を失うんだよ」


「それは!大丈夫なのですか?!」


「ああ、問題ない。ないんだけど、数日間は目覚めないんだ。それで、ホリーには悪いんだけど、その数日間だけ鉱山の中で俺の世話を頼みたいんだ。ホリーの脱出が遅れる事になるし、申し訳ないんだけど・・・」


「やります!カガリ殿のお世話します!いやむしろさせて下さい!カガリ殿は私が必ずお守りします!誰にも指一本触れさせません!」


「頼む・・・よ・・・使い魔を1人・・・召喚するから・・・あとは・・・たの・・・む」




・・・・・目覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。


「ここは・・・?」


「カガリ殿!気がつかれましたか!」


近くにいたホリーが、ガバッと俺の顔の間近まで顔を寄せて来た。


ホリーの心配げな超美人顔が目の前に!


「お、おう。お、おは、おはよう」


俺は目覚めて早々、ドギマギしてしまった。


「おはようございます!お体は大丈夫ですか?どこか痛い所はありませんか?」


「だ、大丈夫だ。痛い所はない・・・けど、き、気持ち良いかな?なんて。ははは・・・」


「・・・気持ち・・・良い?」


ホリーは言葉の意味が分からず、首を捻っている。その顔は未だに俺の顔の超至近距離にあった。


そうなんだ。ホリーが俺に顔を近づけ過ぎているせいで、ホリーのあの魅惑のバインバインが俺の右腕にむんにゅりと当たって・・・俺は人生初の感触を味わってしまっているのだ!


ホリーは自分のバインバインが仕出かした『むんにゅり事故』に気付くと、顔を真っ赤にして俺に食ってかかって来た。


「カガリ殿っ!!人が折角、心配して心配して心配しているのに、そのエッチな顔は何ですか!!あれから三日三晩、一度も目を覚まさず眠り続けるカガリ殿の事を、どれ程案じたか?本当にもう本当にもうっ!」


「ご、ごめんて!」


ホリーは真っ赤な顔に頰を膨らませながらも、心配げな目で聞いてくる。


「本当に、痛い所はないのですね?」


「うん」


「辛い所は?」


「無いよ」


「・・・・・・・良かったです」


そう言うと、ホリーの目から涙が溢れて来た。


「けど、お腹は空いたかな?」


あ、でも食うっても虫なんだよな。

まあ、ポテ虫はもう食べ慣れたけどさ。不味過ぎてテンション下がるんだよな。


ホリーは涙目を一拭きすると、優しげな、それはもう女神のように優しげな顔で微笑むと、


「はい。では美味しいものを沢山食べましょうね!」


そのホリーの笑顔と優しい言葉はまさに、『女神のご褒美』みたいだと思った。この笑顔を見れたのなら、虫だって美味しく食べられそうだ。



ガチャリ。

部屋のドアが開いた。


ん?ホリー以外に誰かいるのか?


入って来たのは・・・女の子?

とことこベッドの側まで歩いて来ると寝ている俺を見下ろした。


身長は俺と同じくらいか。

その体は触れると壊れそうなくらい細っそりとか弱い。

そして光に反射してキラキラと輝く長い銀髪に、透き通る様なワインレッドの瞳、顔は小さく、目鼻立ちは整いすぎる程に整っていた。しかし、整い過ぎている事に加えその完璧なる無表情から、冷たい印象を受けた。

年齢は俺より少し上か。

とにかく、目の覚める様な超絶美女だった。


超絶美女は、完璧な無表情で俺を見下ろすと、口を開いた。


「良かった!起きたのね!」


「き、君は?」


「何よ、分からないの?」


「・・・・・」


ん?この声、どこかで聞いた事あるような・・・


次の瞬間、ホリーが美少女にかけた言葉が衝撃だった。


「アール殿!カガリ殿がやっとお目覚めになりました!どこも痛く無いそうです!」


超絶美女こと、アールは相変わらずの完璧な無表情のままだった。


「良かったわね!ホリー。献身的に介抱した甲斐があったじゃない!」


「はい!・・・そうだ、カガリ殿がお腹が空いたそうです。ご馳走を沢山食べて頂きたいのですが?」


「起きたばかりで急に食べると胃がびっくりするからね。最初はお粥から慣らしましょうね!」


・・・ちょ、ちょっと待て!なんだこの光景は?

ホリーとアールが普通に会話してる?

目の前のアールって、あのアールなのか?ウソ?マジで?とんでもない美女じゃん!

けど何でここにいるの?

あれ?アールって宇宙人だよな?

なんで人間の姿なんだ?

もっとこう・・・タコみたいな姿じゃ?


≪くぉら!誰がタコよ!!目の前の私が本物の私よ!人間の姿が地球人だけの特権なんて、自惚れるのも大概にしなさいよ?≫


・・・あ、アール!

そうだよ、アールは心の声でこそアールであってだな、目の前の超絶美女がアールって事は決して・・・・・・ほ、本物なの?


「≪ええ。本物よ≫」


心のアールと目の前のアールの声が見事にハモった。


間違いない、目の前のアールは・・・本物だ。

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