27話 牛さん怒涛のラッシュだオイ
「カガリ殿ぉぉぉ!!」
「ははーっ!スチルヘルモーの必殺技が炸裂したな!第三の眼に見られた奴は全身金属化するんだよ!あとは死を待つだけだぜ。ざまあみろ!ホリーよ!残念だったな!お前もこうなりたくなきゃあ早く降参して俺の女になりやがれ!」
何とまあ。全身金属化だとさ。
・・・マジ?
≪マジよ≫
・・・・・
『・・・・・』
・・・・・
『・・・・・』
・・・・・
≪・・・・・なーんてね。対策は取っているから問題無いわ≫
・・・・・脅かすなよおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!
≪そ、そんなに驚くと思わなかったのよ!と言うかもっと私を信じなさいよ!≫
・・・ごめん・・・って、こんな目に遭ってさらにアールにも怒られるの?
理不尽すぎないか?
マジで焦ったんだからな!!
だいたい、あれだけ自信満々だったアールに『予想を超えて来た』なんて言われたらそりゃもう『終わった』ってなるでしょ?
≪予想を超えて来たくらいで終わってたら、大宇宙の荒波で生き残れないわよ!伊達に60億光年の距離を超えて地球くんだりまで辿り着いて無いわよ!≫
・・・それを言うなら、俺なんて光年換算0光年の地球人だよ?その中でも特に何の変哲も無い単なる一般人なんだからな!
≪・・・何の変哲も無い一般人なら私がわざわざ観察したり守ったりして無いんだけどね≫
・・・なら俺って何なんだよ?
≪それは機密事項だから教えられないわ≫
・・・そう言うと思った。
そこは一番知りたい部分なんだけどな?
まあ期待はしてなかったよ。
でもいつか教えて貰うからな!
≪まあ状況が変わればね≫
・・・約束だぞ?
≪期待はしないでね≫
・・・ところでさ、
≪まだ何かあるの?≫
・・・あるだろ重要な事が!何でも良いから早くこの金属化の暗闇から解き放ってくれ!
≪ああそれね。待ってなさい、今、バリアを膨張させるから≫
・・・バリアを膨張?
≪バリアは常にあなたの全身をピッタリ覆う形で張ってあるの。実際には皮膚から0.1ミリ離してあるんだけど、今はそのバリアの表面が金属化しているのよ。だからバリアを一旦膨張させて金属化を引っぺがすわ≫
パリンッ!
音がした次の瞬間。
金属化で真っ暗闇になった視界に光が・・・目を瞑った俺のまぶた越しに・・・届いた。
そして・・・・・動ける!
全身動けるか確かめる為、取り敢えずラジオ体操をしてしまうのは俺が日本人スピリットを忘れてない証拠だと思う。
「カガリ殿!よくぞご無事で!」
真っ先にホリーのホッとした声が聞こえて来た。
その声を聞いて俺も何だかホッとしていたよ。
癒されるってもしかしてこういう事なのか?!
そして復活した俺の視界の先には驚愕に目を剥くスチルへルモーがいる。
第三の眼は多用出来ないのか既に閉じられていた。
そして、同じく驚愕に声を震わせるスパガーラ。
「はあああああああ???テメエどうなってやがる?!」
≪カガリ、ここで決めゼリフよ!≫
・・・え?決めゼリフって、何それ?
≪だから、敵の必殺技を破ったんだから、ここはドヤ顔で決めゼリフを言う場面なの!≫
・・・ああそうか。
なら一発かましてやるか!
って、俺自身はなーんにもやって無いんだけどね。
俺は思い切り息を吸い込んで叫んだ。
「どうだまいったかぁ!!」
「・・・・・うもぉ?」
「・・・・・はあ?」
「・・・・・カガリ殿?」
みんなの反応がイマイチだった。
・・・あれ?何か間違えたかな俺?
≪・・・・・うーん、今のセリフはちょっと気が抜けちゃうかな≫
・・・分かってたよ。分かってた!自分が主人公の器じゃ無いってさ。
はあぁ、どうせここで六条なら、
『お前は俺の事を、所詮、落勇者だと思って根っこの部分で侮っていたのだろう。確かに俺は落勇者だ、どん底まで落ちてるさ。だが勇者の底ってのはな、テメエらが見上げる遥か高みに存在するんだよ!』
くらいの事は言ってるよな。
≪それよ!それ行ってみよう!!≫
・・・ん?
『だーかーらー、そのセリフをそっくりそのまま言ってやるのよ!』
・・・え?これ、六条のセリフだぞ?只の想像だけど。まあ言えって言うんなら言ってみるかな
「お前は俺の事を、所詮、落勇者だと思って根っこの部分で侮っていたのだろう。確かに俺は落勇者だ、どん底まで落ちてるさ。だが勇者の底ってのはな、テメエらが見上げる遥か高みに存在するんだよ!」
・・・どうだった?
『うーん、カッコつけ過ぎね。』
・・・お前が言えって言ったんじゃん!
しかし、それを聞いた周りの反応は劇的だった。
「なんだと?!もしかして敵に回しちゃいけない奴に喧嘩売っちまったか?俺様・・・」
「さすがはカガリ殿、惚れ直しました!!」
・・・スパガーラは完全に及び腰だ。
そしてホリーは・・・惚れてたのかよ!ならもっと早く言ってくれよ!
俺ならお前みたいな超美人は大歓迎だよ!
なーんてね。恋愛的な意味じゃないのは分かって...
≪はあ?何寝言言ってるのよ?釣り合う訳ないでしょ?≫
・・・そんなに否定しなくても分かってるよ。そりゃ俺なんかとこんな超美人が釣り合う訳ないけどさ、もっとオブラートに包んで言って欲しかったな。俺だってシュンとするんだよ?
≪逆よ逆。ホリーがあなたに釣り合わないって言ってるのよ≫
・・・へえ。アールって俺の事そんなに高く評価してくれてたんだ。なんだか照れ臭いなうふふ。
≪ちょっとバインバインだからって調子に乗らないでよね!≫
・・・そこかよ!
≪カガリったらその緩んだバカ面そろそろ戻しなさいよ!牛さんが動きだしたわ≫
見ると、スチルへルモーの溶けた右前足の切断部分、その赤くドロドロに溶けた辺りがまるで切り離されたかの様にボトリと地面に落ちた。
そして何と、新たな鉛色の足が生えてきたのだ。
これは、再生能力!
そう来たか。アニメやラノベではまあ良くある展開だからそんなに驚きは無いけど、この手の敵は決まって厄介なものだ。
・・・さてどうしてやろうか?・・・てかどうするの、アールさん?!
≪もう解析は終わってるわ、さっきの突進は想定より強力だったから上方修正もしたし完璧よ。後は牛さんの悪あがきを全部受け切った後フィニッシュブローを決めてKO勝利よ!≫
・・・え?まだ攻撃を受けるの?!
≪ええ。今後の戦いの為にコイツのデータは出来るだけ取っておきたいのよ。悪いけど頼むわね≫
仕方ない。
さっきも無傷だったし問題無いか。
今度は目を閉じてようかなと思ったけどやめた。
俺ってば、なにもやってない上に目まで閉じてたなんて、流石に情け無さ過ぎる。
せめてこの目で戦いの行方はしっかり見届けないと!
立ち上がったスチルへルモーが前足でしきりに地面を掻いている。
今にも突撃してしてきそうだ。
そして低く飛び出す体制になると、第三の眼があった部分からドリルの様な角が生えてきた。
と同時に強烈な突進が襲って来た。
・・・信じて・・・信じてるけどさ、こんな尖ったやつをワザと受けるって怖すぎるよ?
思わず目を閉じそうになるのをグッと堪えた。
絶対目は閉じない!これはせめてもの俺の意地だ。
奴の鋭く尖った角が俺の胸に突き立った瞬間、俺は上空に飛ばされていた。刺さったのか?
いや痛みは無いので刺さっては無い。無事だ。
そのまま天井にぶち当たったがそれも無傷。
落ちて来た俺に合わせて奴は後ろ足で強烈な蹴り上げ。
再び天井に叩きつけられる。
怒涛の攻撃ラッシュは続く。
天井から再び落ちて来た俺をスチルヘルモーが角で串刺しにしようとするが刺さらず俺は地面に落ちた。
その上を奴の全体重を乗せた踏みつけが襲う。
ドスン!!ドスン!!
何度も何度も踏みつけられた。
次に俺の頭を口で咥えたかと思うと、力の限り噛み砕こうとして来た。
ギリギリギリ!!!
強烈な歯軋り音が鳴り響く。
奴は俺を咥えたまま首を振って投げ飛ばした。
そのまま横壁にブチ当たり地面に落ちる俺。
俺はゆっくりと立ち上がった。
その瞬間、奴の口から砲弾の如く鉄の塊が撃ち出され、俺に直撃した。
俺は吹っ飛び、再び横壁にブチ当たる。
すると間髪入れずに次の砲弾が命中。更に命中、命中、命中、それは果てしなく続き、俺は横壁に釘付けにされながら砲弾を食らい続けた。
何発食らっただろうか?
遂に砲弾の雨が止み、俺は地面に落ちた。
地面には俺の体に命中し、形が歪んだ砲弾が大量に転がっていた。
それは砲丸投げの球位の大きさだった。
そんなのが歪むなんて、どれ程の衝撃なのか計り知れない。
しかも床に落ちているって事は、俺の体で弾かれた、つまり俺の体に見事命中してた事になるのだ。
壁に砲弾の穴は無い。
という事は一発たりとも狙いを外さなかったって事だ。
流石はダンジョンボス。
それにしても多彩な攻撃だ。
これでトドメの魔法攻撃とかあったりするのかな?
しかし、暫くしても魔法も来なければ他の追撃も無かった。
怒涛の攻撃ラッシュが終わったのだ。
「ぐもはあっ、ぐもはあっ、ぐもはあっ」
スチルへルモーは息を切らしていた。
地面に大の字で寝っ転がっている俺は・・・無傷だった。
俺は、スチルヘルモー怒涛の攻撃ラッシュをうけきったのだ!




