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26話 さあこらかかって来いやオイ!!

「・・・分かったよ。ホリーに任せる」


「アホが!テメエを放っておく訳ねえだろうが!」


スパガーラはそう言うと腰から指揮棒の様な物を抜いて目の前の地面に向けた。


「我、世界の理に湧きし泉を汲み取りたる英傑なり。暴突の刺槍、再生の属片、絶死の鉄目、破獄の砲玉、四窟の祝福を受けたる雄々しき僕よ、ここに顕現せよ・・・・・眷属召喚!!」


スパガーラの詠唱に呼応する様に地面が揺らぎ出し、そこから全長10メートルはあろうかという巨大な牛の様な魔獣が現れた。全身が鉛色で見るからに硬そうだ。


「ぐもおおおおおおおおぉぉぉ!!」


凄まじい雄叫びをあげながら俺を睨みつける魔獣。


コイツが俺の相手かよ・・・ビビるんだけど?


「カガリ殿!お気をつけ下さい!そいつは恐らくダンジョンボスです!」


「よそ見してんじゃねえぜ!」


「くっ!」


スパガーラが猛烈な速さでホリーへ襲いかかった・・・ように見えた。

いや、速すぎて殆ど見えなかった。


一般人の俺の目では殆ど捉えきれない高次元の戦いになりそうだ。


幸いホリーは、スパガーラの一撃を何とか避けたみたいだ。

良かった。

やるじゃんホリー!


「ソイツは俺が制覇したダンジョンのラスボス、スチルヘルモーだ。ダンジョンの力を吸収した時に眷属になってな。本来の勇者の力より数段劣る落勇者ごときに倒せる代物じゃねえぜ!」


・・・そうか、落勇者になると勇者の頃より力が落ちるのか。『落』とはそういう意味も含まれていたんだな。


・・・これでお互いにタイマン勝負になった訳だけどはホリーは大丈夫だろうか?


≪渡した剣はナノマシン化しているからそうそう後れはとらない筈よ≫


・・・ナノマシン化って具体的には何か効果あるの?


≪まあ、ラノベ風に言うと『魔剣』みたいな感じね。色々と特別な力を持っているわ≫


・・・えらくざっくりだなおい。

そうか!さっき剣に入って行った女神を召喚出来たりするんだな!


『あれは演出だって言ったでしょ?本気で何の意味も持ってないわ』


・・・だよね。

まあ良いさ。女神の力はなくても魔剣ならきっとホリーの助けになってくれるだろう。


・・・それよりさ、むしろこっちの方が大丈夫なのか?

正直、俺自身は何の戦力にもならない自信があるぞ。


≪任せて。今、その生物のスキャン情報を解析しているから≫


おお!流石は超科学、スキャン&解析と来たか。


けど、この世界って魔法とかスキルとかダンジョンとか、科学とは全く違う原理で動いてる世界だよね?

そいつだって何も無い空間から出てきたし。


そんな不思議要素も解析出来るの?

てかそもそもこの世界ってどこまで科学が通用するの?


≪安心して。ここがどんな世界でも問題無いわ。我々の科学力が伊達では無い事を見せてあげるわ!・・・とはいえ、実際のデータも取りたいから一通りはソイツの攻撃を受けてほしいの。よろしくね!≫


・・・え?よろしくって・・・攻撃受けるの?ワザと?!


≪痛くはしないから大丈夫よ!何なら目を瞑っていても良いし。すぐ終わるわよ!≫


・・・うーん、その注射を嫌がる子供にかける言葉みたいなのはやめてくれるかな?

多少痛くても我慢出来るからさ・・・多少だよ?


≪ガマンできるんでちゅかエラいでちゅねー≫


・・・ほほう。あくまで注射を嫌がる子供プレイで通す気だな。しかも赤ちゃん設定とは宇宙人の癖にレベル高いじゃねえか!


≪私はカガリの監視役よ。日本の雑学もしっかり勉強してるんだから≫


・・・アールさーん、もっと重要な事をお勉強しようねー。ってうおっ!!


スチルヘルモーが猛烈なスピードで突進してきた。


・・・おいコラ会話中だ空気読め!


≪脳内会話なんだから分かる訳無いでしょ?≫


そうだった。

良かったよ、空気読めない牛さんって訳じゃなかったのね。


なんて、間一髪回避する俺。

ていうか俺が着ているナノマシン服に引っ張られただけってのが情けない。


≪心の準備は良い?次、ワザと当たるからね?≫


・・・おい待て!心の準備ってうぐおっ!!


間髪入れず襲ってきたスチルヘルモーの第2撃目は見事、俺にクリンヒットした。


「カガリ殿!!」


ホリーの悲痛な声が聞こえた。


吹っ飛ばされた俺は鉱道の壁にぶち当たった。壁が割れ破片が飛び散っていく。


やべえ、死ん・・・で無い?

てか全く痛くない。チクッとすらしなかったよ。

こりゃ凄い!


「はははっ!一撃で終了ってか!どうだホリー、大人しく俺様の女になるんならその男のトドメは刺さないでやるぜ。もっとも生きてりゃあだがな!」


「カガリ殿!おのれ!!」


ホリーの闘気が高まっていく。

一般人の俺でも感じられるほどに。


俺の死に憤ってくれてるのか。

嬉しいものだな!


・・・死んでないけど。


「ホリー、大丈夫だ何ともない!」


「カガリ殿!本当ですか?!」


「ああ。本当だピンピンしてるよ!俺は訳あってこれから牛魔獣の攻撃を何回か食らうと思うけど全然大丈夫だから気にするな!ホリーはそっちの戦いに集中してくれ!」


「しかしカガリ殿!私も助太刀したほうが・・・」


「大丈夫だって。俺を信じろ!」


「・・・分かりました、ご武運を!」


ホリーはそう言うとスパガーラへ向かっていった。


スパガーラは俺のタフさに驚いているようだ。


「あの一撃を食らって立ち上がるかよ!どうなってやがんだ?」


俺はスパガーラに言ってやった。


「魔法だよ。落勇者だってやる時はやるって事だ!」


・・・なんてカッコつけたけど、ホント、どうなってんの?


ナノマシン服を着ている部分は良いとして、手とか顔とか剥き出しの部分も無傷なんですけど?


≪それはね、バリアを張ってるからよ。全身くまなく覆ってるからどこにも死角は無いわよ!≫


・・・出た、SFもので良くあるやつ!あとファンタジーものでも魔法障壁って良く出てくるよね。そう考えると不思議な現象って意味では魔法も科学も案外似てたりしてね。


≪この世界の魔法障壁がどんなものか知らないけど、それを軽く超えていく自信はあるわね。何てったって、60億光年レベルの科学力よ?≫


・・・アールさん、本当に頼もしいな!素敵!


≪当たり前よ!もっと頼って良いんだからね?そうだ、攻撃を受けてばかりもつまらないから、次は一発攻撃しちゃおうかな!≫


意外とチョロいアールさん。

早速、閃光が走った。


ズガガガーン!


「ぐもおおおおおおおおぉぉぉ!!」


ドゴーン!!!


凄まじい衝撃音が鳴り響いたと思うと、雄叫びと共にスチルへルモーが豪快に倒れた。


見ると、右前足がまるで溶鉱炉の様に真っ赤になってドロドロに溶けて無くなっていた。


・・・たった一撃でダンジョンボスを行動不能にしたのか?凄まじい火力だな。さっきまではあれを人に向けて撃ってたんだよな?普通にアウトだろ。


≪流石に極限まで威力を落としてたわよ。じゃないと人間なんて蒸発して消えちゃうし。まあそれでも頭とか足とか吹き飛んでたけど≫


・・・人間が蒸発か・・・そりゃトラウマものだから絶対やめてね?


≪・・・さあ!どんどんいくわよ!≫


・・・絶・対・やめてね!


≪・・・さあ!どんどんいくわよ!≫


・・・やめる気ないんだ。


「ぐもおおお・・・」


苦しげな声を上げているスチルへルモー。


その牛面の眉間がいきなりパックリと縦に割れた。

そして中からは奴の両目を合わせたくらいの大きさの・・・第三の目が現れた。

その殆どが白眼、いや、血走り過ぎてむしろ赤く見えるその中心には鉛色の眼球が一つ、俺をまるで射殺すように見据えていた。


瞬間、目の前が真っ黒になった。


・・・ん?どうなってんだ?


あれ?全身動けないんだが・・・


≪これは、予想を超えてきたわね。全身が金属化されたわ≫


・・・金属化ね・・・って、はああああああああ???

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