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25話 また孤独に逆戻りかよ?オイ

ホリーは全てを話し終えると、ガバッと俺に縋り付いて来た。


「カガリ殿!あなたにはこんな事知られたく無かった。しかしコイツが中途半端にバラすから、真実をお話せざるを得ませんでした。どうか、元キモデブ男の私を見捨てないで下さい!!」


「別に見捨てないけど?」


「え?今何と・・・」


「別にそんな事で見捨てないよ。てか超絶太った男だってさ、好きで薄汚いんじゃないと思うぞ?」


「いえ、天地がひっくり返ってもあの姿には戻りたくありません!だって、「ブヒッ!」て言っちゃうんですよ?!」


「ホリーお前・・・盛っただろ?」


「・・・すみません、つい」


・・・ついじゃねえよ!


スパガーラが俺を見て意外そうな顔をした。


「カガリって言ったか?テメエ、全然幻滅して無いじゃねえか!良いのか?元キモデブ野郎だぜ?」


「良いのか?って、別に良いも悪いも何も変わらないんだけど」


「へえ、中々肝が座ってんじゃねえか。この俺様といえど、あの野郎の薄汚え顔がチラついて未だに躊躇いが残ってるのによ」


「ああ、俺、そいつの顔見てないから」


「何だと?!テメエそれは都合良すぎねえか?!こちとら結構な覚悟を決めて再びホリーをゲットしようと臨んでるんだぜ?」


「いや、そう言われてもな・・・」


「ふっ、その危険性を考えて事前に変身を解いてからカガリ殿へ接触したのだ!」


悔しがるスパガーラにドヤ顔のホリー。

二人にそこまでのトラウマを与えるって、その男、どれだけ薄汚かったんだよ!


「けっ、変身中は強さや体質まで変わっちまうらしくてな。さっきお前本来の膨大な闘気が解放されたから、ようやく変身が解けたと思って急いで駆けつけてみたんだが・・・もう男をたらし込んでやがるとはな。それでも乙女かよ!」


「わ、私とカガリ殿はその様な関係ではない!カガリ殿が脱走を企てていたからそれに便乗させて貰っただけだ!」


・・・ガッツリ俺の犯行をバラしてくれちゃったなおい。まあ良いけどさ。どうせ正面突破の予定だったしね。でもアール、コイツに勝てそうか?


≪まあ余裕でしょ。ていうかこんな無駄話してるならその間に瞬殺しても良かったわね≫


・・・そこはまあお約束というかだな・・・ホリーはコイツに恨みがありそうだし、勝手にぶっ飛ばしたら怒られるんじゃ?・・・あと俺が倒す場合はあくまで殺しはNGだからね。


≪手加減する余裕が無かったら?≫


・・・どうしてもの場合は正真正銘の正当防衛だし仕方ないさ。けどワザとピンチを演出なんてしないでくれよ?


≪あ、当たり前でしょ!≫


・・・ちょっと動揺してるし。


「まあ良い。もう御託は終わりだ。そろそろふん捕まえてやるぜ。そっちの男はムカついたからお前の目の前でぶっ殺してやるよ」


「やれるものならやってみろ!剣を手にしたからには貴様になど負けるつもりは無い!それにこれはただの剣ではないぞ、カガリ殿の偉大なる魔法で作り出された第12次ナノマ聖剣だ!」


・・・第12次ナノマ聖剣って、なんか色々端折ってないか?あと、聖剣じゃないしさ。


「はあ?魔法で作っただと?ウチの鉱山にそんな凄腕の魔法使いをブチ込んだ事はねえ筈・・・ん?・・・カガリ?・・・テメエ、もしかして落勇者か?!」


「何を世迷言を!カガリ殿が落勇者のはず・・・しかし走る椅子といい、ナノマ聖剣といい、あの様な摩訶不思議な魔法は見た事が・・・まさか、カガリ殿?!」


「ま、まあ正解なんだけど・・・」


「ちっ!あの王女、勇者の力は剥奪したとか言ってやがったけど嘘じゃねえかよ!」


・・・なる程、やっぱりあのクソ王女がここにぶち込みやがったのね。分かっちゃいたけどあらためて聞くと、はらわた煮え繰り返るな。


「カガリ殿!・・・カガリ殿が『落ちた勇者』とは・・・一体、どういう事なのですか?」


ホリーが恐る恐る聞いてきた。


・・・そういえばこの世界の人々は勇者への期待が高すぎて、魔王討伐をしない勇者は落ちた勇者、つまり落勇者として迫害を受けるんだったか?


≪カガリの記憶だと王女がそう言ってたわね≫


・・・厄介な事だな全く。


「ホリー、事情は後で話す。まずはコイツを倒して脱出しよう」


「カガリ殿、『落勇者』とは、この世界における勇者としての義務を放棄した最低の卑怯者に贈られる称号です。カガリ殿は本当にその『落勇者』なのですか?」


「・・・そうだ。でもな、同じ『落勇者』でも俺のは『落ちた勇者』じゃなくて『落とされた勇者』だ。俺は自分で魔王討伐を放棄したんじゃなくて放棄させられたんだよ!」


「・・・・・」


ホリーは何も言わなかった。

ただ、悲しそうな瞳で俺を見つめ、ジッと突っ立っていた。


・・・終わったかな


≪残念ね≫


俺はどこでも迫害される。

前の世界でも学校でいじめられていたし、この世界に来ても奪われ、拷問され、騙され、殺されかけた。


そして今やっとアールという味方を得て、更にホリーという仲間まで得たというのに・・・


・・・また1人ぼっちか


≪安心して、私がいるわ≫


・・・ありがとう、アール。


「・・・・・」


ホリーは依然として無言だ。

体がプルプルと震えている。

怒りを溜め込んでいるのかもしれないな。


そんな中、スパガーラは俺に向かって唾を吐いた。


「ぺっ!テメエが何を取り繕おうが無駄だぜ?落勇者なものは落勇者だ、何も変わらねえぜ!テメエは魔王討伐から逃げた臆病者で裏切り者のカスだ!クズだ!ゴミなんだよ!」


「・・・・・」


「テメエがここに送られて来たときはたまげたぜ!まさか落勇者が来るとはな。この鉱山を作ってからこれまで無数の犯罪者やら奴隷やら政治犯やらそりゃもう碌でもねえ連中をしこたまブチ込んで来たけどよ、正真正銘、テメエが一番のクズだぜ!」


「・・・・・」


「そうだ、ホリーよお、一緒にこのゴミをぶっ殺そうぜ!それで仲直りと行こうや。もう無理矢理にはしねえからよ。時間をかけてゆっくりとお互いの気持ちをだな・・・」


「・・・・・だ」


「ん?何だ?」


「・・・・・様だ」


「何だって?聞こえねえな?」


「ゴミは貴様だああああぁぁぁ!!」


「・・・なん・・・だと?」


「黙って聞いていれば落勇者だのカスだのクズだのゴミだの好き放題に!確かにカガリ殿は落勇者かもしれないが、貴様の様な男となど比べるまでもない!貴様の方が本物のカスでクズでゴミだっ!」


「お前・・・ソイツは落勇者だぞ?とち狂ったか?!」


「狂ってなどいない」


ホリーは改めて俺へ向き直った。

その瞳は決意に満ちていた。


「カガリ殿」


「・・・は、はい?」


「私はカガリ殿を信じます。確かに私の知る落勇者のイメージは最低です。しかしカガリ殿は違う。それにあなたは先程、私の醜聞を聞いてもなんの嫌悪も蔑みも無く私を受け入れてくれた。だから・・・私もカガリ殿を信じます!」


俺は・・・泣いていた。


≪また泣いてる≫


・・・いいだろ!俺はヘタレで泣き虫なんだよ!けどな、傷ついて泣いた事は今まで一度も無いんだよ。


≪それって・・・≫


・・・嬉しい時に泣くんだよ!


「ホリィー!ありがとうー!!!」


俺は全力でホリーにお礼を叫んだ。


「カガリ殿、どういたしまして。そんなに泣かないで下さい!カガリ殿を虐めたクソ野郎は私がぶっ殺しますので!」


「テ、テメエら、良い雰囲気になりやがってえええ!!ぜってーぶっ殺してやる!」


俺は涙を拭いた。


「ぐすん・・・ホリー、俺も手伝うよ。一緒に倒そう!」


「いいえ、コイツの相手は私が務めます!コイツには本気で恨みがあるので!ご安心下さい。カガリ殿を傷つけた代償も払わせます!」


「・・・分かったよ。ホリーに任せる」

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