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20話 やっぱ旅は道連れだよな、オイ!

≪カガリ、この先に1人、誰かいるわよ?≫


・・・1人?

て事はスパ様か?


目を凝らすと道の先で誰かが行く手を塞いでいる。

いや、塞いでいるというよりも、どうやら俺を待っているようだ。


その人物は・・・なぜか片膝を付いて跪いていた。

何だかファンタジーものに良くある、王様の前で臣下が取るポーズみたいだ。


まだ結構離れているが手足に鎖があるのが見えた。

て事は労働者だな。


・・・ん?まてよ?俺ってばこんなに視力良かったか?


≪今は覚醒状態だからよ。部分的にだけど、人間の限界を突破してるわ。視覚や嗅覚に聴覚、あとは精力もね≫


・・・そうか、どうりで思考の合間合間にエッチな妄想が割り込んで来る・・・ってそっちじゃない!

視聴覚に嗅覚も限界突破って、なんか超人ぽくてテンション上がるぞ!


その鋭くなった視線で周囲を見回すと・・・やっぱりいつもより良く見えてるよ!


・・・でも何で今まで気付かなかったんだろう?


≪そりゃ脳だって活性化してるからね。違和感を感じるより前に感覚が馴染んじゃったんでしょ?それに精力が増大してるからそこに跪いてる若い女の子に自然と目を凝らしちゃったんじゃないの?≫


・・・そういう事か、脳活性に女の子・・・女の子?!


よく見てみると、


服装そこボロボロだが、綺麗な金髪ロングヘアだった。

跪いているので顔は分からない。

しかし、そんな確認し辛い姿勢からでもガッツリと主張してくる・・・おっぱい!・・・それはもうバインバインで・・・間違いなく若い女の子だ!


こんな酷い環境で他の労働者はみんな痩せ細ってガリガリだっていうのに、あの子だけバインバインってどういう事なんだ?!


≪ちっ。バインバインだか何だか知らないけど、吹っ飛ばされたいようね、あの女!≫


・・・吹き飛ばしちゃダメダメ!!

って、何で急に敵意剥き出しになった?・・・まさか・・・あのバインバインに嫉妬とか?


≪ち、違うに決まってるでしょ!わ、私だってバインバインじゃない事も無かったりする可能性も無きにしも非ずかもしれなくて信じるか信じないかはあなた次第なんだからね!≫


・・・いやいや、動揺しまくってますやん・・・


そんなバインバインを巡る脳内会話を余所に、俺に跪いているバインバイン。


彼女が顔を上げた。


その意思の強そうな金色の瞳はキラキラと美しく輝いて見えた。

そして鼻筋はスッと通っていて、形の良い唇はキッと引き結ばれている・・・あと顔ちっちぇえ!


間違いなく超美人だ。


彼女はキリッと俺を見つめると、覇気に満ちた声で、


「ドラゴン使いの脱走者殿!貴殿のだぎゃああああぁあ!!」


ガブリとホロドラに咥えられポイッと放り投げられた。


・・・あれ敵じゃないと思うけど?


≪バインバインは敵よ!≫


・・・おいっ!


≪なんてね。ごめんなさい、ホロドラを止めるの忘れてたわ≫


・・・本当か?なんか怪しいな?

モヒカン以外は襲わない設定だろ?


≪てへ!≫


・・・てへじゃねえよコラ!

ホロドラを一旦停めろおぉ!!


俺に叱られ、しゅんとしながら消えるホロドラ達。別にお前らに言ったんじゃないんだけどな。手を振りながら消えるホロドラが寂しそうで・・・


・・・なんか後ろ髪引かれちゃうだろ?


「あいたた、ドラゴン使いの脱走者殿・・・痛いです・・・」


お尻をさすりながら立ち上がるバインバイン。


「ごめん!大丈夫か?!」


「はい、とにかく私は貴殿の敵ではありませんのでドラゴンをけしかけるのはやめ・・・ってドラゴン消えてるぅぅ?」


「まあな。消したから」


「ええぇ?!本当に消したのですか?!どうやって?」


・・・さてどう伝えるべきか?ホログラムって言っても意味不明だろうし。


≪適当に言っておけば良いんじゃない?あと、私の事は他言無用だからね!≫


・・・分かってるさ。


けど適当って言われてもな。

俺は返答に困った。

うーん、やっぱこの世界定番のアレしかないよな。


「魔法で消したんだよ!」


そんな感じで誤魔化した。


まあホログラムってなんとなく魔法っぽいし、あながち間違いでもないよね?


「ま、魔法で?あの禍々しいドラゴン達を?!あなたはドラゴン使いにして大魔法使いでもある脱走者殿だったのですね!」


「・・・まあ何でも良いけど。俺に何か用?」


ハッとするバインバイン。

再び跪いた。


「そうなのです!ドラゴン使いにして大魔法使いでもある脱走者殿!貴殿の脱走に是非とも便乗させていただきたい!」


便乗って・・・

なんだか『助太刀いたす!』的な勢いで言ってるけど要するにこのドサクサに紛れて自分も逃げたいって事ね。


俺は聞いた。


「あんたは犯罪を犯してここに入ったのか?」


「天地神明に誓って潔白です!!」


気持ち良いくらいの即答だった。

あと声でけえ!

てか何で鉱山で死ぬ程こき使われてる筈なのにそんな元気いっぱいなんだよ?


≪嘘はついてないわね。潔白ってのは真実よ≫


・・・そうか。なら元気いっぱいな感じだし、連れて行ってみるか。


≪バインバイン目当てじゃないでしょうね?≫


・・・ち、違うし!良い奴っぽいからだし!


≪・・・怪しいわね・・・でもまあ敵意は感じないし、別に問題無いけどね。ただ、私が守るのはあくまでカガリだからね?万が一の時までその子の面倒は見切れ無いわよ?それでも良いなら好きにしなさいな≫


・・・アール、ありがとう!


俺は、アールが彼女を連れて行く事に反対すると思っていたので意外に感じた。

今の言い方だと、万が一な事態にさえならなければ彼女の面倒も見てくれるって事だよな。


俺は彼女に告げた。


「俺も無実だ。付いて来い!」


「かたじけない!」


ナノマシンの服からビームが放たれ、女の子の手足の鎖が外れた。


「おお!これで思う存分に暴れられる!!我が行く手を阻むものよ、命は無いと思え!!!」


暴れる?命は無い?・・・何とまあ、お前もバトルジャンキーかよ!


≪良いわねこの娘。気に入ったわ!≫


気に入られちゃったよ?

バトルジャンキー仲間だもんね。


彼女は立ち上がると近付いてきて俺にグイッと顔を寄せてきた。


眼光鋭い超美人顔が間近に!


近過ぎだって!

ドキドキしちゃうだろ?!


そんな俺のドキドキなどどこ吹く風で彼女は質問をぶつけて来た。


「貴殿程の大魔法使いと言えど、あれだけのドラゴンを召喚すれば魔力は殆ど残っていないと見ました。魔法はあとどのくらい使えますか?」


「ん?・・・えーっと・・・」


・・・またホロドラって出せる?


≪余裕だけど?≫


「・・・まだ余裕らしい」


「らしい?」


しまった。アールの答えをまんま伝えたから不自然な言い回しになった!


「いや、らしいじゃなくて・・・ら、らっしゃい?」


「らっしゃい、とは?」


「えと、えと、だな・・・敵さんどんどんいらっしゃい!の、らっしゃいだ!」


「ほほう、随分やる気ですね!さてはバトルジャンキーですね?」


・・・そりゃお前だよ!


「はやる気持ちは分かりますが、ここは少数の敵だけを相手に切り抜けるのが無難だと思います」


で、ですよね。

バトルジャンキーに宥められてる俺って一体・・・


「しかし、貴殿の気合いは伝わりました。及ばずながら私も全力で敵を蹴散らしましょう!」


そういうと女性は目の前の岩石を拾うと恐る恐る近付いて来たモヒカンの胸に投げつけ吹っ飛ばした。


・・・いきなり容赦ねえー!


≪やるわね、この子!≫


・・・アールも触発されてんじゃないぞ!


≪何でよ?今のを見たらそりゃ燃えるでしよ?≫


・・・いやむしろ俺のハートはドン引きで冷え込んで来たんだけど?


しかしアールのハートには盛大に火をつけてしまったようだ。


新たなるバトルジャンキーは、


「ううむ、思ったより勢いがつかなかったな。私も鈍ったものだ」


などと、首を傾げながらいっている。


・・・いやいや、充分豪速球でしたよ!だってものすごい勢いでふっ飛んで行ったよあの人。


俺の見立てじゃあ、プロ野球なら10年に1人の逸材としてドラフト会議では5球団から1位指名入るよ?

やったね!契約金ガッポガポ!


俺はその気持ちを頑張って表現してみた。


「あんたもかなりの凄腕じゃないか?」


「いえ、本職は剣でして。剣があればもっと凄いものをお見せ出来るのですが」


・・・いえいえもう充分見せて貰ったよ。お腹いっぱい!


「改めてまして、私の名はホリー。ホリー・フューネラルです。貴殿は?」


「俺は・・・カガリだ」


「カガリ殿、これからよろしくお願いします!」


深々と頭を下げるホリー。

ちょっとその角度は・・・谷間がちょっと!


「ヤバ過ぎるぅ!」


「・・・はい?」


「違った!こ、こちらこそよろしく!」


盛大にやらかしてしまった!

俺は心の動揺を誤魔化す為、元気よく叫んだ。


「よし!じゃあいっちょ脱出するかぁ!!」


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