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2話 やる気出ちゃったよオイ!

勇者として魔王を討伐して欲しい。

王女様は俺達にそうお願いしてきた。

しかも討伐すると俺達にメリットがあるという。


王女様が掲示した俺たちへの対価。


1つは、俺たちが召喚された時に得ている『勇者』という称号。


これは異世界人にのみ与えられる特別な称号で、とてつもない潜在力を秘めているらしい。

要はレベルを上げれば上げる程、現地人との力の伸び具合の差が歴然と違ってくるって事だ。


当然、そのレベル上げも帝国側が責任を持って面倒を見てくれる。

しかも、勇者固有の魔法やスキルなんてのもあってどれも現地人が羨むくらいの強力な性能だそうだ。


そして何と帰還した後も、この力は残るらしい。

つまりこの世界でのレベルや称号、高いステータスに魔法やスキルなどのとんでもない力をもったまま日本に戻れるって事だ。


それを聞いた時、みんなの表情が明らかに変わった。

そりゃそうなると思うよ。

だって、元の世界に戻れば確実に勝ち組になれるじゃん。

総理大臣でも大富豪でも金メダリストでもプロ野球選手でも一流芸能人でも何にでもなれそうだ。


俺ならどうしよう?やっぱりあれかな、宇宙飛行士。

そう、俺は宇宙に行ってみたいのだ。

宇宙飛行士は男子みんなの憧れだしさ。


何?今は動画配信が熱い?『ドーガダッチューバー』が憧れの職業第1位?

日本一のダッチューバーは年収数十億円?

それって世界最大の動画サイトに動画を投稿して広告収入を得ている奴らだよな?

知るかそんなもの!


俺の夢は宇宙飛行士かNASAの職員だ。

普通なら無理ゲーレベルの狭き門だけど、もしその夢が現実になるなら、この世界で勇者にでも何でもなってやるぞ!

そしてレベルを上げまくって、このチート能力を日本に持って帰って夢を叶えてやるぜ!


俺を含めみんながワクワクの極みに達している中、六条は「それじゃ不十分だ」と言って王女から追加でかなりの譲歩を引き出した。

具体的には、レベルアップの旅及び魔王討伐の旅の際、帝国が持つ戦力と財力と権力を最大限動員する事の確約だ。

確かに、いくら国がレベルアップの支援をしてくれると言っても、漠然としていて具体的にどれくらいの支援か分からないしな。

最大限の支援というのは心強い。


次の対価。

それは、この世界の魔道具や武器・防具、ポーションなど、この世界だからこそ手に入る強力なアイテムを持ち帰れる事。


「おお!」


「マジか!」


「すげー!」


クラスメイトの数人から声が上がった。

そりゃ俺だって思わず「よっしゃ!」とか言っちゃいそうになるよ。ギリ抑えたけど。


王女様の説明によると、俺たち一人一人にアイテムバッグと呼ばれる肩掛けカバンが支給されるそうなのだが、それが異世界ラノベ定番の無限収納なのだ。

実際には無限ではなく限界があるようだが、それでもかなりの量を収納できるらしい。


定番ではあるけど、実際のところかなり規格外のアイテムだよな。


うーん、俺なら何を入れようか?

武器や防具は日本では必要無いし、やっぱり魔道具と回復薬がいいかな?

回復薬なんて日本に戻ったら奇跡の薬になるんじゃないか?

よし、出来るだけ強力でどんな病気や怪我も欠損部位さえ復元するレベルの、伝説の『エリクサー』みたいな薬を手に入れてやるぞ!

魔道具は何がいいかな?欲しい物が多すぎて困る。

アイテムバッグがぎゅうぎゅうになるくらい色んな魔道具を手に入れてもって帰りたい!


そしてこの対価についても六条がしっかり交渉してくれた。

俺たちが希望するアイテムを貰える事の確約だ。

確かに「アレはダメ、コレはダメ」とか後で言われて結局、向こうに言われるままガラクタを掴まされる可能性もあるよな。


六条、マジで有能だな。


3つ目は、従魔契約の権利。


文字通り、魔物を自分の従魔として使役できる権利だ。


この世界で従魔は従魔界と呼ばれる世界から召喚して契約する必要があるらしいのだが、その機会自体がほとんど無いらしい。

契約には『召喚の権利』が必要でそれが市場に出回らないからだ。

今回、勇者召喚及び魔王討伐は国家事業の為、特別に国が所有している『召喚の権利』を俺達に大放出してくれるという。

よっ!太っ腹!

しかも従魔も連れて帰れるんだって。

ファンタジーっぽい胸熱なプレゼントだよな。

俺ならやっぱりドラゴンが欲しいな!でもヴァルグリッド、お前は要らん!


これも六条の交渉の結果、気に入らない従魔はチェンジできるという確約も得た。

ただしこれは本当に貴重な権利の為、勇者全体でトータル5回までのチェンジで限界だという。


まあ俺みたいなクラスカースト最下位にはチェンジの権利は回ってこないだろうけどさ。

いかん、しょぼいのが来そうな嫌な予感がしてきた。


4つ目は財宝、言葉のまんまだ。


まあ説明は要らないか。

とにかくこれで大金持ち確定だ。

魔王との最終戦の前に貰えるって話だ。

これも六条が大幅な増額を勝ち取った。


5つ目は高待遇での身分保証。


俺達は『勇者』として民から敬われるのは勿論の事、『伯爵』相当の地位も保証されるという。

いきなりVIP扱いって事か。


これも六条が伯爵の1つ上である『侯爵』相当の地位を要求したが、流石に聞き入れられなかった。


断られた時の六条の顔がほんの一瞬だけ般若の様になった事に、『皆さんお気づきだろうか?』


そして最後は個人的な経費の負担。

この世界への滞在中及びレベルアップの旅や魔王討伐の旅での生活費、宿泊費、飲食費、装備や備品購入費などの費用負担は必要経費として国の支援が確約されているが、それ以外の個人的な買い物や遊興費についても、お小遣いが支給される事になった。


これにはクラスメイトから歓声が上がった。

だよな、俺も上げたいよ。


お小遣いに関しては、そもそも王女様からの提案すら無かった。

全て六条が勝ち取ったのだ。

さっき一瞬見せた般若顔が効いたか?

王女様あの顔見て固まってたし。

今も説明しながら笑顔を若干引きつらせているし。


こんな感じでまあとにかく至れり尽くせりだ。


正直、かなりやる気出た。

勿論、最終的には日本に帰れるって前提でだが、それまでは『全力で頑張ろう!』って気になった。

もしかすると、帰りたくないって言い出す奴も出てくるかもしれない。


笑顔を引きつらせていた王女様も俺たちの好反応を見て徐々に余裕が出てきたらしく本来の自信満々の笑みで話を締めくった。


「以上です。ちなみに、今の皆様は勇者の称号を宿す資格があるというだけで、実際にはまだ授かっている訳ではありません。称号を授かる特別な儀式が必要なのです。そしてその儀式を執り行えるのは、『聖王女』の称号を持つ私だけです。皆さまが魔王討伐に御同意頂き次第、儀式に移らせて頂きます」


「つまり、同意しない場合は俺たちは何の力も得られないまま元の世界にも帰してもらえず放り出されるって訳ですか?」


六条が再び睨みを効かせる。


王女様が慌てて弁解する。


「ほ、放り出すつもりはありません。しかしもしも皆様が我々の提案を否定し自らの意思で帰還を目指される場合は、多くの困難が待ち受けていると言わざるを得ません。我々も知らない帰還方法を独自に見つけ出す必要がありますし、仮に独自に魔王討伐での帰還を目指した場合は、勇者の称号も無く国の支援も無しですのでほぼ達成は不可能でしょう。魔王の強さは想像を絶します。勇者の称号無しには話になりません。それに魔王だけでなく道中では精強なる魔王軍も相手にしなければなりませんし。また、帰還を諦めこの世界に住む場所も、何の身分も後ろ盾も無しで生きて行く事になります。それに、勇者の称号を持たない異世界人は、魔王討伐を拒否したという事で、落勇者(らくゆうしゃ)と呼ばれ迫害を受ける可能性があります。それは過去に何例かありますが、皆、惨めな末路を遂げています。隠して暮らす事も出来なくは無いでしょうが、皆様の外見は我々と少し違いますし、バレる可能性も高いですし、そうなるとかなり厳しい状況に立たされるでしょう。コソコソ隠れて暮らすのも辛いでしょうし。尤も、こういった迫害については我々の本意ではありません。国民失望がそうさせるのでしょう。裏を返せばそれだけ勇者様方への期待が大きいという事です」


「迫害ね。まあ要するに俺たちに拒否権は無いって事ですね」


「そのようなつもりはございませんが、是非お引き受け頂きたいと皆願っています」


そんなつもりは無いなんてよく言うよな。

引き受け無い場合、デメリットしかないし、俺たちが拒否できないように外堀が完璧に埋められてるよね?

引き受けた場合と断った場合に天国と地獄程の差があるじゃん。


「あなた方の思惑通りってのは癪だけど、分かりました。引き受けましょう!」


六条が決断を下した。

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