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19話 心の声がダダ漏れかよ、オイ!

いつもより少しだけ長めです

俺はアールの誘導に従って悠然と出口方面に向かって歩いていく。


相変わらずドラゴン達は、俺の周りで忙しく暴れまくっている。


この鉱道、来た時は分かれ道が多い印象だったが、帰りはそれほど複雑では無かった。

とにかく分岐を無視してメイン通路をただ遡れば良いのだ。


「何ぃ!ドラゴンだと?!助けてく...ぎゃああああ!!」


ドラゴンと初遭遇のモヒカンは言葉を言い終える暇も与えられず速攻で潰された。

容赦ねぇな、ホログラムのドラゴン、略してホロドラ。


しかしたまに、ある程度の強さを持つ監視役がいて、そいつらはホロドラの攻撃を掻い潜って俺に肉薄して来る。


ピカッ!


ドゴオオオ!


とはいえ俺へ届く前に、ナノマシン服から放たれるビーム攻撃を食らって吹っ飛んでいくのだが。


ホロドラにやられてた方が絶対幸せだったよな。


だってさ・・・・・足取れかけてるもん!


≪ビームの威力を調節してるんだけど、コイツら弱すぎるから加減が難しいのよ。でも吹っ飛ばしたと同時に傷口は焼けて塞がってるから失血死の心配はないわ≫


・・・そうかそれなら安心だね!・・・って足取れかけてるじゃん!!


≪まだ辛うじて繋がってるからギリセーフでしょ?≫


・・・ギリアウトだよ!


≪うーん、このくらいは仕方ないと思うけどね。向こうはあなたの命を狙って来てるんだから返り討ちに遭って死ぬ覚悟くらいはしてるでしょ?足が取れかける程度で済んだのなら逆に喜ぶんじゃない?≫


・・・喜ばねえし!


やっぱり容赦ないな。

さすが宇宙人。


だんだん、普通の日本人である俺と宇宙人のアールとの倫理観の違いが怖くなって来た。


特に敵に対して一切容赦ない所なんかは、俺が止めてやらないと絶対暴走するだろコイツ。


まてよ?これってもしアールが俺を敵と認定したら、この超科学の力が俺に向くって事だよな?


そう考えるとゾッとした。


だって俺を観察って、そんなに興味あるなら俺を殺して解剖研究するなり捕まえて飼育研究するなり、好きに出来る訳じゃん?その力はあるんだし。それをしない理由は分からないけど、例えば、今は偶然上手くいってるだけで、もし無闇にゴネてアールの機嫌を損ねたりしたらどうなる?1つ歯車が狂うと・・・『やっぱ観察面倒だから解剖しちゃお!』ってなったりする?!


・・・マズイって事じゃないか?!


≪なーに勝手にビビってるのよ!安心しなさい。我々はカガリを決して見捨てないし、カガリに攻撃を加える事も捕まえる事も殺す事もあり得ないから。まあ非常時に一時的な身柄の保護はする可能性あるけど、捕まえて飼育なんてしないから。まあカガリがどうしても『お座り』と『お手』を憶えたいって言うなら飼ってあげても...≫


・・・憶えねえし!・・・って・・・今の考え事、聞かれてたのか?!・・・だよな。心の声は全部聞かれてるんだもんな。エッチな考えとかエッチな考えとか、あとはエッチな考えとか。


≪まあ健全な男子なら当然の事よ。あの時、だらしない顔ながら妄想していたアレは全然気にしてないから安心して≫


・・・全っ然、安心できねえ!『あの時』ってどの時いいいぃぃ?!


≪毎晩よ≫


・・・ドッカーン!爆死だわ。


≪なーんて冗談はここまで。少し真面目に話すわね。カガリが我々に対して怖いと感じるのは当然だと思う。でもね、あなたが怒ろうが恨もうが我々の排除を試みようが、カガリへの保護と観察は変わらず継続されるわ。そこにカガリの意思は関係ないのよ。それが我が国の方針だから≫


・・・それは、随分強引なのね?


≪そうよ、強引なの。そして私も国の方針に基づいて動いているわ。だからこれからもずっと私はあなたを観察し続けるわよ≫


まあ難しく考えても仕方ないか。

だって常識を超えた存在がやる事に口を挟めないしさ。


取り敢えずアールの機嫌を損ねても見限られる心配は無さそうだと分かって安心した。


・・・けどさ、俺の意思は無視ってのは複雑な心境だな。


≪無視って訳じゃないわよ。我々の存在がカガリに知られた以上、滞りなく観察を続ける為にもお互いの良好な関係が必須だしね。我が国の方針を曲げない限りは、出来る範囲でカガリの要望にもどんどん応えていくつもりよ!別に束縛もしないしね。あなたは自由にやりたい様に動けば良いのよ。いざとなったら助けてあげるから。≫


・・・そうなの?


≪ええ≫


・・・本当に?


≪本当よ!≫


・・・じゃあもし魔王と戦う事になっても一緒に戦ってくれるのか?


≪それはむしろ得意分野よ!≫


・・・魔王ってめちゃくちゃ強いかもしれないよ?


≪我々は惑星自体を破壊する規模の兵器だって保有しているのよ?言ったでしょ?月位の大きさの宇宙船と殴り合って楽勝だったって≫


・・・え?それ、冗談だと思ってた。


≪本当の出来事よ。ちょうど3年前ね≫


・・・マジかよ?!て事は地球人ってかなりピンチだったんじゃないの?!


≪ピンチどころか確実に滅んでたわね。レンリット星人は1億5千万光年レベルの宇宙人よ?地球人は光年換算すると0光年レベル。その差1億5千万。全く相手にならなかったわよ≫


・・・差の開き具合がエグすぎだろ?じゃあ、アールってば地球の救世主じゃん!ありがとうございますアール様!地球のみんなに変わってお礼言います!


≪そう?じゃあカガリのお礼、受け取ってあげるわ。仕方ないわね〜。うふふふふふ≫


・・・おお!アール様が喜んでおられる!


≪けどまあ実際、我々からすれば大した事じゃ無いわよ。別に地球人を守ろうとか思ってた訳じゃないしね。カガリ、あなたを守ったのよ?≫


・・・は?俺を?


≪そうよ。ただ、あなたを守る為だけの理由で地球を救ったのよ≫


・・・嘘だろ?


≪本当よ≫


・・・じゃあ、俺ってば、地球の危機を救った英雄って事?


≪まあ、そうとも言えるわね≫


・・・やばい、鳥肌立ってきた。


≪でも逆に、地球人がカガリの敵になるなら、地球を滅ぼす事もあるけどね≫


・・・大丈夫。俺ってば全然目立つ男じゃないし、存在感だって無いから!


≪そうよね≫


・・・そこは冗談でも『そんな事ない、目立ってるわよ!』とか言って欲しかった・・・


≪カガリって意外とめんどくさいわね≫


・・・しょうがないでしょ!心の本音がダダ漏れなんだから!


≪まあ良いわ。話を戻すと、準備の都合で今すぐは無理だけど、やろうと思えばそっちの世界で、惑星をも破壊できる決戦兵器を運用する事だって出来るって事なのよ。まあ、この世界なら今あなたが身に付けてる服型のナノマシン集合体だけでも充分かもしれないけどね。でも万が一、ナノマシンだけじゃ手に負えないレベルの魔王だったとしても、倒す方法は幾らでもあるから安心して。ド派手に行くならさっき言った決戦兵器の『星殺し』がオススメね。魔王だってひとたまりもないでしょう≫


・・・『星殺し』?!何その物騒すぎる名前!いくら魔王でも単なる一生命体にそんなヤバイ兵器使うなんてやり過ぎだろ!惑星ごと壊れたら俺だってひとたまりも無いよ?


≪その時は、カガリには宇宙船に避難してもらうわ。異世界の宇宙に飛び出して居住可能な惑星を探してあげる≫


・・・それはスケールが違うね。異世界の宇宙は是非行ってみたいよ!けど絶対に星は壊さないでね。困るから。


どうやらアールの国は当初思ってたよりも遥かに科学が進んだ国っぽい。


アールの協力が得られるなら、俺ってば既にこの世界で最強なんじゃないか?

そのくらい想像を超える科学力だよな。


ならもうその力で地球に帰れるんじゃね?そう考えると、一度消えた光明がまた差してきた気がした。


・・・なあアール、そこまでの科学力があるのなら、俺を元の世界に、日本に戻してくれるのが手っ取り早いんじゃないか?


≪・・・それは、出来ないの≫


・・・は?!何で?!


≪詳しくはここを無事脱出してからにしましょう≫


・・・いやいや待ってくれ!かなりの衝撃発言だよそれ?何で出来ないの?国の方針?


≪違うわ。残念ながら60億光年レベルの我々の力を持ってしてもあなたを戻すのはリスクが高すぎるのよ≫


・・・アールの国の超科学を持ってしても?


≪ええ。残念だけど≫


かなりの衝撃だった。

まさに天国から地獄っへ真っ逆さまだ。


魔王討伐から弾かれ、諦めていた元の世界への帰還。


その可能性を見出した瞬間、否定されてしまったのだ。


アールの声はここまで届いてるのに何で?


まあ、俺なんかが計り知れないくらい高い技術的な壁があるんだろうけどさ。


短い夢だったな・・・


ふと見ると、足が取れかけたモヒカンがまだ気絶していた。


俺はふと思い付くと、アールへ問いかけた。


・・・なあ、アール。アイツの足って元に戻せたりするか?


≪出来るけど、助けてあげるの?≫


・・・ああ、頼むよ。


≪仕方ないわね。いいわよ≫


俺の服からニョロニョロと数本の触手が伸びてモヒカンの足を治療し始めた。

取れかけていた足は見る見るうちに血管が繋がり血の気が差して来た。


そして待つ事ほんの数分。


≪ま、こんなものでしょう?≫


見ると、そこには傷1つ無い足があった。


取れかけていた足を一発で治すなんて、やはりアールの国の超科学は凄い。


こんな途方もない力を持ってしても、俺を元の世界に返すことは出来ないんだ・・・・・なら仕方ないよな。


今の奇跡を目の当たりにした事で、不思議とすんなり諦めがついた。


・・・ありがとう、アール。


≪どういたしまして!≫




一方、そんなちょっとした奇跡が起きていた瞬間も、次々とモヒカン共がホロドラの餌食になっていた。


ラングレー以外にホロドラを掻い潜って俺に肉薄して来たモヒカンは、さっき足を治した奴を含め全部で4人。

全てビームの一撃で瞬殺だった。


・・・ん?4人って、もしかして・・・鉱山四天王?!


今しがた倒した4人目をよく見ると、腕に『鉱山四天王爆誕!』って刺青が入ってたよ。

爆誕て・・・刺青ダッサ!


けどこれで目の前のモヒカンが鉱山四天王の1人だと確定した。


≪その刺青なら、さっき倒した3人にもあったわよ?ダサ過ぎて目立ってたし≫


・・・『ダサ過ぎて目立つ』って悲しい評価だな。


・・・でもそんな事よりさ、


・・・まさかの、鉱山四天王を知らないうちに倒してたああああ??!!


見せ場無くてゴメンよ四天王。


・・・て事は、後厄介そうなのはラスボスのスパ様って奴だけか。どこにいるんだろ?


≪出口へ向かって進めばそのうち出てくるでしょ?≫


・・・だな。


俺とドラゴン達は逃げ惑うモヒカン共を蹴散らしながら更に進んで行った。


この頃になると、ホロドラの狙いが監視役のモヒカンだけで自分達は襲われないと理解した労働者達が、この異様な状況にビビりながらも怖いもの見たさで遠巻きに俺たちを見守っていた。


その中を悠々と歩いて行く俺。


ふと思い立って、俺は労働者達に向かって手を振ってみた。


最初はぽかーんとしていた労働者達も、次第に手を振り返してくれる様になった。

そしてそれは次第に増えて行って・・・


俺が振っていた手のひらを握り、ガッツポーズに変えると・・・


「うおおおおおおおおお!!!」


労働者達が一斉に雄叫びを上げ、そしてみんながみんな高々と拳を上げた。


俺はその大歓声の中、ホロドラ達を引き連れて鉱道のど真ん中を悠々と歩いた。


肩で風を切るって感覚が分かった気がしたよ。

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