18話 大暴れかよ、オイ!
≪待って、殺さないのなら方針を変えるわ。見てなさい、ここの奴らにとっておきの恐怖を与えて戦意を完全に消し去ってあげるんだから!≫
アールがやる気モードだ。
一体何をする気なんだ?!
≪じゃあ行くわよ、始動!!≫
「ウィーン」
俺のナノマシン服からほんの一瞬だけ小さな起動音が鳴った。
次の瞬間、
ドゴゴゴゴゴ!!
地響きと共に突然、地面からヤツが現れた。
まさかここでコイツが来るとは思わなかったよ。
ファンタジーの定番。
その名もドラゴン!
大きさ的には中型クラスか?
それでも威圧感は破格だった。
あと、顔が・・・凶悪過ぎた。
コイツ絶対、悪い側のドラゴンだろ?って感じの顔だ。
睨まれただけで腰抜かすよコレ。
しかも出るわ出るわ。
全部で10匹。
鉱道はかなり広くなっているので、10匹でもコイツらが動き回るのに問題無かった。
「グルルルルルルル!」
「グアアアアアアア!!」
10匹のドラゴン達、その凶悪な唸り声が鉱道中に響き渡った。
「うぎゃああああ!」
「ド、ドラゴンだああああ!」
「や、やべえヤツだあああぁぁ!」
「し、死ぬうううううううう!!」
当然、鉱道内は大パニックに。
・・・アール、このドラゴンって仲間なんだよな?
俺はちょっとだけ・・・ごめん見栄張りました・・・とんでもなくビビリながらアールに確認した。
≪仲間って程じゃないわ。只のホログラムよ。まあ只のって言っても我々の技術レベルでの話だけどね≫
・・・ホ、ホログラム?ウソだろ?俺の知ってるホログラムと全然違うぞ?
コイツが歩くとちゃんと地響きするし、口は臭いしヨダレも垂れている。それに、
ガブリ!
そして
ポーイ!
「ぐぎゃああああ!!」
逃げ惑う監視役のモヒカン共を咥えては放り投げ、尻尾をブンブンしてはモヒカンへ叩きつけ、挙句は
ボワァァァァ!!
「あぎゃあああチチチチチ!!」
口から炎を吐いていた。
・・・普通に大暴れしてるんだけど?
≪大丈夫よ。確かに臨場感はハンパないけど、そこはあくまでホログラム。見た目ほど大した攻撃じゃ無いわ。せいぜい、痛がらせて、怖がらせて、おしっこチビらせるくらいで命に別状無いわ。でもこの威圧感なら充分反撃の気持ちは削がれるでしょ?敵を殺さないなら、気持ちだけはへし折っておかないと。ねえ、あなた、≫
・・・カガリで良いよ
≪カガリ、両手を上に掲げてポーズしてみて≫
俺は言われた通り、両手をかっこ良く上げた。いわゆる勝利のポーズだ。
すると、10匹のドラゴンが俺の周りを囲み、なんと跪いて服従のポーズをとったのだ。
・・・何これ?
≪演出よ。カガリがコイツらの主だっていうアピールタイムよ!これを見てカガリを捕まえようとする奴なんていないでしょうね≫
・・・なんか地味な脱出作戦だった筈がいきなりド派手な作戦になったな・・・
≪殺して良いならシンプル・イズ・ベストで良かったけど、殺さないなら、二度と歯向かわないように恐怖を与えておかないとね。それにこっちの方がスカッとするでしょ!≫
・・・ああ、そうだな・・・・・めちゃくちゃスカッとするよ!
俺はこの状況を見渡してみた。
凶悪なドラゴン。
そいつらが大暴れ。
そして逃げ惑う監視役達。
まさにカオス!
とばっちりで労働者達も逃げ回ってるのは・・・ゴメンやで。
でも、当然攻撃を加えるのは監視役のモヒカンのみ。
コイツらにはこの1週間とちょっと、散々イビられて来たからな。
何度、死にかけの体に鞭を入れられたか!
何度、意味もなく蹴られたか!
何度、罵声を浴びたか!
何度、飯の時間にポテ虫を横取りで食われたか!
・・・ポテ虫は激マズだったしいいや。
とにかく、逃げ惑うモヒカンを見て、胸のすく気持ちだよ。
≪カガリって、そんなに色々嫌がらせされてたんだ?≫
・・・え?記憶見たんじゃないの?
≪最後のほうは早送りしながら見てたから≫
・・・適当かよ!
≪ポイントは押さえてるから問題ないわよ。それよりどんどん進みましょう!≫
俺が歩き始めると、ドラゴンも後に続いて動き出した。
数匹が俺を守るように歩き、それ以外はかなり広範囲に暴れ回っている。逃げ惑う監視役のモヒカン共を齧ったり、蹴散らしたり、尻尾で叩いたり、踏みつけたり、火を吐いたり、氷を吐いたり、巨大なウンチで押し潰したり、大立ち回りを繰り広げていた。
見よ、この絶対的な強者感!
「気持ちいい〜!」
思わず声に出してしまった。
暫く歩くと、鉱道の分岐点に着いた。
ここは更に広いドームになっていて、いくつもの鉱道に分岐していた。
そこに、1人の男が立っている。
「まさか、あんたが脱走者だったとはな」
「あれ?あの時の?」
アイツだ。馬車の時のモヒカン。
「死ぬ奴に教える名前は無い」
とか言ってた奴。
俺は聞いてやった。
「まだ名前を教える気はないか?」
「・・・・・ラングレーだ」
「へえ、カッコ良い名前じゃないの」
「教えたからって、別にお前が死ななくなった訳じゃねえからな?」
「いや、俺は死なないね。てか、戦うつもりか?」
「仕方ねえだろ?スパ様の到着が遅れてるからな。それまで俺達が持ちこたえるしかねえしよ」
「スパ様?」
「この鉱山のトップだ。そして俺は副長なんだよ」
「副長?って、ラングレーあんた中ボスだったのか」
「中ボスってなあ、人を魔獣扱いしてんじゃねえぞ、このドラゴン使い野郎が!」
「ドラゴン使いか。カッコ良いなそれ!」
「けっ!余裕コキやがって!俺は他のザコモヒカンとは一味違うぜ、元Aクラス冒険者だからな。俺だけじゃない!元Bクラス冒険者の鉱山四天王もここへ向かって来てるぜ?」
・・・へえ、元AクラスとBクラスか。アール、大丈夫そう?
≪そのAだかBだかが『原超ミル粒子核98ロド攻殻弾』を装備してるならヤバイわね≫
・・・なら余裕ぽいね。なんとなく。
俺は更に煽ってみた。
「来ないのかよ?ラングレー!」
「行ける訳無えだろ!1匹ならともかくドラゴン10匹なんてたった1人でどうしろってんだよマジで!」
「ならこっちから行くぞ!」
「来ないで良いよ全くっ!」
と言った瞬間、ラングレーが消えた。
いや、俺の一般人レベルの目では奴の動きを追い切れ無かったのだ。
しかし、
ピカッ!
ドゴオオオ!
いきなりの閃光と衝撃音。
俺が我に返った時には、既にラングレーは吹っ飛ばされ壁に叩きつけられていた。
多分、俺のナノマシン服からのビーム攻撃だろう。
≪威力は弱めたわよ?≫
・・・ドラゴンが攻撃するんじゃ無かったのか?
≪ザックリだけど、そいつの強さは本物っぽいからね。ホログラムじゃ対処出来なかったわよ≫
・・・そうなのか?!
≪ええ。流石はこの鉱山の副長って所ね。最初で最後の攻撃、かなりのスピードでドラゴンの間をすり抜けて、カガリにだけ狙いを定めてたわ。Aを名乗るだけあったわね≫
そうだったのか、俺には全然見えなかったよ。
けど、そんな『本物』のラングレーでさえ瞬殺なのね。
こりゃ本当にチートっぽいな、俺の服は!・・・てか超科学は!
ラングレーを見ると、胸と両腕、そして両足が出血しているが、欠損はしていない。
・・・千切れて無くて良かったよ。
≪コイツ、かなり体が頑丈ね。普通の奴なら今ので手足の1つくらい吹っ飛んでたわよ?これがこの世界の『レベル』って概念かしらね?結構、高レベルだと思うわよコイツ≫
確かに、ラノベなどでも、レベルが上がるにつれて頑丈になっていくからな。
それと同じだろう。
俺は、気絶するラングレーの横を抜けて、再び歩みを進めた。




