14話 鉱山最悪絶対来るなよ、オイ!
城から鉱山まで一週間かかった。
道中の馬車も、例の騒ぎが収まった後は、みんな誰も喋らず、ただ無言だった。
俺も当然無言。
最初に俺に話しかけて来た男は口に猿轡を付けられていた。
そしてあのモヒカン男は、実は鉱山の職員だった。
そう言われれば手足の鎖は付けていなかった。
けどさ、いくら便が無かったとは言え、職員があそこに乗るか普通?
しかも名前を聞いたら、
「これから死ぬ奴に名乗る名前はねえ」
だってさ。
そうかよ。もし馬車が山賊に襲われてそのドサクサで逃げ出した時にあんた一人逃げ遅れて山賊に捕まっても助けてやらないからな!
当然、鉱山に着くまで山賊は現れなかった。
鉱山に着くと、他にも数台馬車が停まっていた。馬車から降ろされた俺達はまず全員広間に通され、一旦、手足の鎖を外された。
そして、服を脱がされ素っ裸に。
その時知ったが、女性も少しだけ混じっていた。
多分、別の馬車からだろう。
だけど女性といえど見境なし。
素っ裸で立たされていた。
正直、恥じらいとか興奮とかそんな次元じゃ無かった。
数人、見てくれの良さげな女の子が引っ立てて行かれた。
彼女達はこれから地獄が待っているのだろう。
でも残された俺たちだって別の地獄が待っている。
どっちも最悪だ。
素っ裸にされた時、残された僅かな私物も奪われてしまった。
そこかしこで悲痛な声が聞こえる。
「それは、親の形見で!」
「うるさい!」
バシッ!
抵抗した人は容赦なく蹴り飛ばされていた。
俺は学生服とスマホ、財布と家の鍵が奪われた。
まあこの世界じゃどれも役に立たないけど。
最後にみんな同じボロ着を着せられ再び鎖に繋がれる。
そして休む暇もなく採掘作業が始まった。
引き連れられて鉱道の奥深く、採掘現場へ到着した。
監視役がそこかしこにいた。剣を下げている。
鞭を持った奴もいた。
そいつらの頭は・・・・・モヒカン?!
とはいえ馬車で一緒だったあの男という訳でも無かった。
なぜなら何人も見かけた監視役が全てモヒカンだったからだ。
・・・正装か?
モヒカンが正装なんて、以前、再放送で見たあのアニメみたいだ。
確か世紀末が舞台だったな。
そういえば、ここはあのアニメに出てきそうな如何にもマッドな場所だよな。
て事は、アイツが来てくれるのか?!
助けて、シロケン!
冗談はさておき、坑道の奥、俺達の作業場に到着した。
労働者は・・・ギッシリいた。
こんなに居て空気とか大丈夫だよね?
まあそんなの一切考慮して無さそうな現場だよな。
こりゃ数日もつどころの話じゃ無いかも。
ピッケルを持たされて、岩をひたすら砕く。
延々と。ただ延々と。
遠くでピシッと鞭の音が響いた。
「あぐ!」
誰かが打たれているのだろう。
何をしたのか?
俺は何をしたら鞭打たれるのか?
サボったらかな?嫌だな。
鞭とか絶対痛いだろ。
一日目は緊張感が凄くて正直なところそれ程、死にそうには感じなかった。めちゃくちゃキツかったけど。
驚いたのは、作業が終わっても地上に出なかった事だ。
岩を削っていたその場所で寝ろだってさ。
そう来たか。ここで寝るってそれだけで体力削られまくるだろ。
ああ、こりゃ数日で死ぬわ。
確信した。
一応、食事は配られた。
何だかポテチみたいに平べったい虫だ。
ポテ虫って名前らしい。
そのポテ虫が一人につき5枚。
こんなペラッペラなのがたった5枚?
腹の足しになるのか?
とはいえ、こればかりは食っとかないと本当に力尽きて死ぬ。
もうグロいとかマズいとか100%言ってる場合じゃない。
食うか食わないか躊躇う気すら起きなかった。
目を瞑って一気に頬張る。
ボリボリ。
食感はまんまポテチ。
でも味は・・・・・
「ぐぼうぉぇ!ゴホッゴホッ!・・・・・クソまじい」
パン虫より断然不味かった。
やっぱ良い虫だったよアイツは。
周りの奴らも、むせ込みながら食っていた。
「まじい!」
って声がそこかしこから聞こえてくる。
この世界って美味しい物は存在しないの?
何度も言うが、パン虫もポテ虫も正直、食料未満だと思う。
味って重要だよ?
栄養取れれば良いってもんじゃ無いよ?
ああハンバーガー食いてー。
今なら都市伝説のミミズバーガーでも良いや。
ゴツゴツした岩の寝床。
布団は無い。
でも意外と寝れた。
まあ事前に牢獄で石畳を経験済みだからね。
人間何とかなるもんさ、ああ、慣れって怖い。
襲って来る睡魔、この瞬間だけは天国だな。
この勢いで1年くらい生き残れないかな?
・・・無理だな。
まあここに居れば1年も生きていたくなんて無くなりそうだけどさ。
鉱山2日目。
キツイ。
キツイがまだ何とかなった。
現代日本でそれなりに栄養を蓄えてたアドバンテージなのか?まだ今日の分の体力は残っていそうな感覚はある。
ただ、ピッケルを持ちすぎて手の皮が剥けて痛い。
血も滲んでいる。
それでもひたすら岩を削り続けた。
やっと仕事が終わった。
どっと疲れが出た、もうフラフラだ。
ポテ虫は食えなかった。
グロいとか不味いとかじゃなくて、命を諦めた訳でも無いのだが、どう頑張っても喉を通らなかったのだ。
今日は2日目だ。
一応、日にちは数えておく事にする。理由は無いけど、日にちの感覚が無くなるのが怖かった。
それに日にちを数えられるのならまだ正気を保ってるって事だし。
そうして1日1日、ギリギリのせめぎ合いをして、何とか7日を乗り越えた。
もう殆ど意識が朦朧としている。
飯は何とか食べられる様になった。
しかし絶対量が足りてないから体力は衰える一方。
疲れもとっくにピークを過ぎているので、作業中寝落ちはしょっちゅうだ。
その都度鞭で打たれ覚醒させられる。
そんな状況だから当然、作業効率だって上がらない。
でもある程度の採掘量をあげないと鞭打たれてしまう。
作業するフリだけってのは許されないのだ。
それでも何とか日にちだけは数えていた。
ここに来て一週間、よく持ったと思う。
気力さえ伴えばまだ保ちそうな気もするが、その気力がほぼ尽きた。
見知らぬ異世界だし誰かが助けに来てくれる訳でも無い。
クラスメイト?来る訳無いじゃん。
あいつら許さねえからな。
化けて出てやる。
ああ眠い。
意識が飛ぶ・・・・・
鉱山8日目
苦しい。もう嫌だ、逃げたい。
日本に帰りたい。コーラ飲みたい。
超ビックリバーガー食いたい。
カレー食いたい。
牛丼食いたい。
ポテチ食いたい、本物の。
すき焼き食いたい。あれ?すき焼きってあまり好きじゃ無かったんだけどな。けど懐かしい。絶対食いたい。
焼肉食いたい。スーパーのかったい筋だらけの肉食いたい。
高級なヤツじゃなくて良いから。
高級なヤツも食いたい。とろけるヤツ。でもいつも食ってるかったい筋だらけの肉も食いたい。
グラタン食いたい。まったりしたヤツ。ドリアでも良い。むしろドリア食いたい。
米とクリームのハーモニー。ハーモニーって何だ?
とにかくグラタン食いたい。ドリアでもいい。
ああ、この前ファミレスでドリア頼んだときの店の女の子可愛いかったな。
可愛い?ああ委員長、可愛かっな。
好きだー!
あれ?好きじゃなくなったんだっけか?
あ、おれ、宇宙に行きたかったんだよな?
宇宙飛行士になって、宇宙空間をふわふわと、月面に寝っ転がりたかったんだ。
ははは。
今、月の石掘ってるんだっけ?
月の石ザックザクだーやったー!
月ってウサギがいるんだっけ?
どこにいるの?おれはウサギより猫ちゃん派なんだけど、でもウサちゃんも可愛いよね。
バニーとかも良いね。
バニー姿の委員長。
ああ。好き。
あれ?もう好きじゃ無くなったんだよな?なんて、未練たらたらじゃん。
バニー委員長激カワだろうな。
激カワ?確か俺、激おこだったな。
プンプン!
もう・・・あれ?・・・ここどこだっけ?・・・わからない・・・・・
・・・・・・・・・・ああ、もう死んだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・い・・・・・・おい!・・・・・おい!こら!起きて!・・・・・ん?どこから声が?
・・・・・しっかりして!まだ死ぬ時じゃないわよ!・・・・・・・・・・俺の中から声が?ああそうか、俺のもう一つの人格だな。それが覚醒したのか。よし、ダニーと名付けよう。
≪やっほい僕ダニー!!なーんて言ってる場合じゃ無いわよ!私はダニーじゃ無いし、あなたのもう一人の人格でも無いわよ!それに男の子でもないから!思い出すのよ!あなたが12歳の時に起こった出来事を!≫




