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13話 鉱山へ行っちゃうぞ、オイ!

訓練とは名ばかりの拷問でボロッボロにされ、クソ王女の罠にハマって引導を渡され、俺は鉱山送りに決定してしまった。


「明日、鉱山へ出発する」


そう告げられ、一旦牢獄へ戻された。


昨日は精神的にきつかったけど、今日は体力的にフラフラだ。

というか死にかけだ。

全身傷だらけだし。

深い傷は回復薬で応急処置されたが、浅い傷はそのまま放置だし。


「いてっ!」


座っただけであちこち傷が痛んだ。


痛いだけじゃない、牢獄の石畳が残された体力をどんどん奪って行く。

固くてとても眠れないし、冷た過ぎて体の体温が持っていかれるのだ。


・・・ああ、こりゃ遠くないうちに死ぬかもな。


鉱山というのはどんな所なのだろうか?ここよりはマシだろうか?

マシに決まってる。


だって城にいたら地獄だよ?あんな訓練を毎日なんて絶対にぶっ壊れる。


ちなみに訓練が厳しすぎる様を表して『訓練という名の拷問』みたいな言葉を使ったりするけど、俺の場合は本物の拷問だからね。

だって『串刺し』とかされたし。


そんな状態に加え昨日から飯も食べてないので力も入らない。


しかもまたパン虫が出てきた。

虫ってこればっかじゃん。


牢獄は真っ暗だが、目も慣れてきてそこそこ周囲の様子も見えるようになっていた。


何となくパン虫を見ていると突然、ウネウネと動き出した。


生きてるし!!


でもまだこれを食うほど極限の飢餓状態にはなっていない・・・


いないのだが、牢番の男に、


「鉱山へ行くなら、尚更食った方がいい。少しでも体力を回復しておかないと早死にするぞ。数日か下手したら一日持たないかもしれん。それに鉱山ではこんなに良い虫は出ないぞ」


そんなゾッとする事を言われてしまった。


マジかよ?


「お前、良い虫だったのな」


俺はウネウネしている虫へ話しかけた。


俺の問いかけに答えるようにウネウネしているパン虫。


ダメだ、なんかもう愛着すら感じるよ。


「虫なんて食った事無いんだけどな」


しかし牢番の忠告を聞いた以上、無理してでも食っておかないと本当に死ぬだろう。


まあ食おうが食うまいがどうせ遠からず死ぬんだろうな。

そんな予感はしている。間違ってはいないだろう。

でも、決して死にたい訳じゃ無い。


なら、何が何でも食うしか無い。


確か元の世界だと虫って意外と美味しいって聞いた事がある。栄養も満点らしい。


牢番も普通に食ってるって言ってたし不味くはないだろう。グロいだけで。


とにかく口に入れさえすればなんとかなるかも・・・・・


「なあ・・・お前・・・食って良いか?」


俺はウネウネしているパン虫へ何度か手を伸ばしたが、踏ん切りがつかなかった。


「はぁ〜、ヘタレめ」


自然とため息が出た。

ん?

何か違和感を感じて目を凝らすと、

昨日食べなかったパン虫が転がっていた。

こっちは動かない。

死んでいるのだろう。


生きてる奴は無理そうだけど、死んでる奴なら何とか・・・


手に取ろうとしては止めるを何度も繰り返し、ようやく手に取った。そして手に取った勢いでグッと一噛みした。


「うぐっ!」


思ったより豪快に噛みちぎってしまったみたいだ。

中から体液がどっと溢れ出す。


咀嚼してみると・・・・・


「うぼうえぇ、、、ゴホッゴホッ・・・・・・まっず」


生臭くてとんでもなく苦かった・・・・・って良薬かよ!


とにかく飯の定義から随分離れてるぞ?薬だろこれ!薬を飯とは言いません!


この手の虫って濃厚でクリーミーって聞いた事あるけど、全然違った。見た目通りのマズさで逆にビックリだわ。


ここは『グロいけど意外に美味い!』って展開であって欲しかった。


とにかくここの牢番の味覚がぶっ壊れてるのは分かったよ。


折角、勇気を出して一口食べて見たけど、これ以上はとても食えそうにない。


ていうか噛んだ分も思わず吐き出したから実質一口たりとも食ってない。


俺は食うのを諦めて寝る事で少しでも体力を蓄える事にした。


結局眠れず。

しかし普通に朝は来た。

別に来なくて良かったんだけど?


今日は鉱山へ向かう日だ。

迎えに来た牢番に言ってやった。


「パン虫、食ってみたよ。どこが良い虫なの?激マズじゃん?」


牢番は不思議そうな顔で答えた。


「何言ってる?飯って糞マズいものだろ?」


その時、俺は思った。


ああそうか、クソ王女とかクソ龍王とかそんな事じゃ無かった、この世界自体がクソなんだ。


俺は牢屋から出された後、人、人、人のすし詰め状態になっている馬車に乗せられ、鉱山へ向かった。


馬車の中は窮屈だわ臭いわ手足を鎖で繋がれているわでキツかったけど、それでもあの牢屋よりはマシだった。だって同じ境遇の人が沢山居たから。

少なくとも孤独じゃ無い。


隣に座っている歯のボロボロな男が話しかけて来た。


「なあ、お前、何やったんだ?」


「・・・何も。俺は何もしてない!」


「だよな、俺も何もやって無いんだよ。無実なんだ!」


俺は驚いた。だって俺と同じ境遇だから。


「あんたも?」


「当たり前だ!俺は嵌められたんだ!チクショウめ!」


「あんたも嵌められたのか?俺もそうなんだ!それで勇者の称号を剥奪されて・・・」


男はそれを聞いて目を見開いた。


「お前もか!俺も勇者の称号を剥奪されたんだ!」


「・・・え?」


更に別の男が、


「お、俺も無実なんだ!勇者の称号を剥奪されたんだよ!」


「俺もだ!」


「俺も勇者だ!」


「ワシは神様じゃ!」


もう収集が付かなくなった。


「無駄だぜ、そいつらみーんな拷問受け過ぎてぶっ壊れてやがるからな」


みると、厳つい顔をしたモヒカン頭の男だった。


「・・・あんたは壊れてないのか?」


「俺はコイツらとは違うからな。便が無くてたまたま廃棄便に乗り合わせただけだ。あんたも他とは違うな、目が死んでねえ」


「廃棄便って何だよ?」


「見ての通り、拷問でぶっ壊れた奴らをまとめて鉱山へ送る便だぜ。他にも犯罪者をまとめた便とか、鉱山奴隷の便とか、政治犯の便とか色々だ。ま、生きて戻れねえって意味じゃ、みーんな廃棄便みたいなモンだけどな」


「生きて戻れないって、絶対なのか?」


「ああ。後はいつ『おっ死ぬ』か?だな」


本物の死がリアルに近づいて来たのを感じた。


なんか、諦めモードが少し入ってたけどさ、だんだん腹わたが煮えくり返ってきた。


こっちに来てまだ3日目なのに悲惨な目にばっか合ってんじゃん。


おまけに死ぬ?嘘だろ?


何でこうなった?!


俺ってばSSS勇者だったんだよ?

ウハウハだよ?


ステータスを見たときの沸き立つ気持ちを思い出すと、どっと悲しさが溢れてきた。


クラスメイト達はどうしているだろうか?委員長はどうしているだろうか?

好きだったなあ委員長。

話した事無いけど。


でも俺をからかう奴らに注意してくれた事は何度かあったな。

その都度惚れ直したもんだ。


でも、もうその『好き』って気持ちもどんなだったか覚えていないよ。


六条の野郎、あの仕打ちは無いよ全く。


どうせアイツは何不自由なく異世界生活を満喫しながらレベル上げまくって現地の金髪美女とかエルフっ娘とかケモミミっ娘達とハーレム作ってそれから4大美人とか3大アイドルとか2大エロスも同時にゲットして、最後に魔王を倒してハッピーエンドで日本に帰るんだろうな?


俺は討伐組から脱落したから一緒には戻れない。


それどころか鉱山では数日も保たない可能性だってある。


このギャップは何よ?


大体さ、ラノベだと主人公が酷い目に遭っても、ゴミスキルだと思われていたのが実は最強スキルで、酷い目に遭わせた奴らを『ざまぁ』するって展開だよな?

俺ってば、何も無いんだけど?

称号:破損

だよ?

称号と一緒にスキルも魔法もぜーんぶ奪われて何一つ残ってない。


『もしかして大化けするんじゃね?俺が唯一もってるこのゴミスキル!』


みたいな展開出来ないじゃん!


書き直せこの野郎!作者誰だよ?!


恨めしさだけが積もっていく。


クラスメイトもクソ王女もクソ龍王もこの国もあの国もそっちの国もこの大陸もこの世界も全部ぶっ壊れ無いかな?


良いよ、俺が許可する。

・・・って、誰だよ俺?


もう本当にどうでもいいわ。

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