100話 感動の再会の筈が・・・オイオイ
いつの間にか100話まで来ました。
ここまでお付き合い頂いた皆さま、
本当にありがとうございます!
「もうすぐか?」
「そうね。もうすぐ到着よ」
「ワインブルー王国・・・楽しみ」
ついさっきワインブルー王国の国境線を越えた。
俺たちが向かうのは首都にある王城だ。
ホリーとの通話で、空から直接王城に降り立って良いと許可を貰っていたのだ。
・・・それってセキュリティー的に大丈夫なの?
≪問題大アリね。もし私たちが悪い奴なら、即、王城制圧じゃない≫
・・・だよな。ワインブルーの連中は警戒心が無いのか?
以前、ホリーから聞いた身の上話。
(*35話『ホリーの事情を聞くぞ、オイ』参照)
ホリーは姫を連れて逃げる際、事前にもしもの場合の避難先にワインブルー王国を想定していた。
それがなんと王宮だったのだ。
つまり、ワインブルーの王族とホリーの家とはそれだけ繋がりが深いという事なのだろう。
そして彼らはホリーの信頼に応えて、今まで姫を匿い切ってくれた。
そこから考えるとワインブルーの王族はとても義理堅いのだろうと思う。
「でも、豚なんだよな?」
「豚らしいわね」
「カガリ・・・豚キライ?」
ミミが不思議そうに聞いて来た。
「どっちかと言われれば、好きなんだけどさ、それって美味しいからというか何というか・・・元の世界には豚人なんていなかったんだよ」
「豚人・・・カワイイよ?」
「そりゃドラゴンから見たらそうかもしれないけどさ、現代日本人の美的感覚からするとちょっとアレなんだよな・・・それにラノベやアニメに出てくる人型の豚って言ったらさ・・・」
「オークね」
そうなのだ。
オークのイメージが強いのだ。
オークといえば、ラノベやアニメだととても醜く描かれているキャラクターで、大抵敵として登場する。
醜悪な豚面にでっぷり太った巨体を引っさげ、食い意地が張っていて何でも食べる。
しかも性欲絶倫で人間の女性を襲いまくる。
そんなイメージなのだ。
ホリーみたいな金髪超美人騎士団長とオークの取り合わせなんて、ドンピシャで『くっころ』なのだ!
・・・『くっころ』されてないだろうな?
≪さっき通話したでしょ?≫
・・・だよな。めちゃくちゃ元気そうだった・・・まさかアールの美貌を聞きつけて、俺たちが到着するまで泳がせてるとか?!
≪私は絶対に『くっ、殺せ!』なんて言わないわよ?≫
・・・俺だってヤだよ!てか俺ってば男だし食料にされるコースかも?
なーんてな!
ぜーんぶ壮大な前フリだったよ!!
王城に降り立った俺たちを出迎えた豚人達は・・・オークなどでは決して無かった。
醜いどころか、めちゃくちゃ愛くるしい姿だったのだ。
・・・なんじゃこりゃああぁぁ!めちゃくちゃカワイイじゃないか!!
≪流石にこれは・・・不意をつかれたわね≫
アールも脱帽した彼らの姿とは?
身長は、オークの様な巨体ではなく、かなり小さい。
120cmくらいか?
それに気持ちポッチャリなくらいで、でっぷり太ってはいなかった。
そして、醜悪な顔なんてとんでもない。
激カワだった!
例えるなら・・・ペットのミニ豚だ。
とにかく愛くるしい顔立ちで、まさにペットに対して抱くような庇護欲を猛烈に掻き立てられる。
俺は近くの豚人の頭を・・・思わずナデナデしてしまっていた。
・・・ヤバイ!いきなり失礼なことをしてしまっ・・・た??
ナデナデされた豚人は、怒るどころか、めちゃくちゃ気持ちよさそうに目を細めたのだ。
・・・い、良いのか?
思わずナデ続けていると・・・スーッとその場に身を横たえ・・・寝てしまった。
「マジか?!」
「ダメですカガリ殿!豚人達は頭を撫でられると気持ち良すぎて寝てしまうのです!」
「どんだけ愛くるしい種族だよ豚人!・・・って、ホリーか?」
「はい!お久しぶりです。カガリ殿!」
「久しぶりって、ほんの数日だけど・・・」
などと言いつつ、ホリーの姿を見た俺の心は一気に頂点を突破する勢いでパッと華やいだ。
・・・やっぱりホリーに恋してるみたいだな俺。しかもめちゃくちゃに。
再会の嬉しさでいっぱいになりながらも、黙って結婚してしまった事への後ろめたさも痛いほど感じた。
ホリーと目が合った。
ホリーも嬉しさを噛み殺しているように見えた。
そして意を決した様に俺の方へ走って来た。
これは・・・再会のハグ?
ホリーはまっすぐ俺の所へ走って来る。
俺は思わず両手を広げてホリーを待ち構えた。
ホリーが俺へ飛び込む直前・・・急にブレーキがかかった。
ホリーの目線は俺を越えてその後ろに突き刺さっていたのだ。
俺が後ろを振り返ると、飛空挺から続々と、元奴隷改めメイド達が降りて来ていたのだ。
「カガリ殿?あの方々は・・・?」
「ああ、話しただろ?オークションにかけられそうになってた奴隷達を助けたって」
「その奴隷達が、何ゆえメイド服姿なのですか?しかも、いかにもカガリ殿が好みそうな露出度高めで色とりどりの煌びやかなメイド服とは、一体どういう訳でしょうか?」
ホリーのやつ『いかにも俺が好みそう』とは失礼な!
これはアールが『いかにも俺が好みそう』とか言って、勝手に用意したメイド服だっ!
・・・ってアールも大概失礼だったわ。
俺がしどろもどろになっていると、メイド達に続いて、ミラが登場した。
「メイドだけでなく、あんな超美女まで・・・カガリ殿はこの数日、一体何をしていたのですかっ?!」
ミラを見た途端、ホリーの口調がかなりキツい感じに変わった。
あ、これは真剣に怒ってるな。
そう思った瞬間、俺は心の奥がズキリと痛んだ。
今までの俺なら、ただ慌てて土下座するなり弁解するなりしていただけで、心が痛むなんて事は無かったのに。
・・・これは、『結婚した』なんてどう言い出せば良いんだ?
俺の心を知ってか知らずか、ミラが俺の側まで来て、ホリーに挨拶をした。
「初めまして。カガリ様に命を救われましたミラと申します。これから身も心もカガリ様に捧げてお仕えしてゆく所存です。以後、お仲間としてよろしくお願い致しますわ」
「み、みみ身も心も?・・・そそそれはつまり、カガリ殿が目指しているハーレム帝国の一員になると・・・そういう事でしょうか?」
「その通りです。ハーレム要員の先輩としてご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致しますわ」
「ハハハーレム要員の先輩いいぃぃぃぃ?!」
ヤバイ!何をどうすれば良いのかはサッパリ分からんが、とにかくこの流れはとんでもなくヤバイ!
・・・アール、助けてくれ!
≪この程度の修羅場、自分で解決出来ないとハーレム王にはなれないわよ?≫
・・・だからそんなの目指してないってばああぁぁ!
ホリーとのすったもんだが有りつつ、取り敢えず、みんなで城に入った。
でも、ホリーの機嫌は悪いままだ。
しかもミミが、
「ホリー・・・あのね、カガリが・・・結婚した」
なんていきなり言うもんだから、ホリーの怒りはそれはもう烈火のごとく迸って、もはや収集がつかなくなった。
ミミ、物事には『話す順番』というものがあるんだよ?
ホリーの剣幕は相当のものだった。
結婚相手がホリーの師匠であるブルーネルだって伝えたかったのだけど、それすら全く話せる状況じゃ無かったのだ。
こういう時、恋愛経験ゼロの俺はどうして良いか分からないんだよな。
・・・あ、結婚したし恋愛経験1になったけどさ。
ところで、滝座瀬と三津島は何処だ?
アール伝いでホリーに聞いたところ、ここへ着いた当日、歓迎の食事会で虫料理を食べさせられて以来、馬車に引きこもって出てこなくなったらしい。
『折角、歓迎してくれているのだから虫料理だろうが食べないと失礼でしょう!』と、ホリーによって無理矢理食べさせられたって事だった。
その後2人は『馬車の見張りに専念する』と言い残して全く出て来なくなったのだとか。
・・・ホリーのやつ、この前聞いた時は『何も問題無い』って言ってたのに、初日からトラブってるじゃん!
≪まあ・・・こんな事でカガリを煩わせたくなかったんでしょ?ホリーなりに気を遣ったのよ≫
・・・そうなのか?
≪そうに決まってるじゃない。でも本音では、カガリの事を待ち焦がれていたと思うわよ?≫
・・・そうは言っても、いきなり怒らせちまったしな。
≪そんなのカガリが愛の告白をすれば一瞬で鎮火するわよ!≫
・・・あ、あ、愛って・・・なんでそうなる!
≪だってカガリはホリーへの恋愛感情を自覚したんでしょ?なら告白あるのみじゃない!≫
・・・普通は自覚してもすぐに『じゃあ告白すっか』とはならないの!色々葛藤して、どうしようか迷うものなの!
とはいえ、気まずいままだと、これからやりにくいしな・・・って違うだろ!!・・・嫌なんだ。俺はホリーと仲良くしたいんだよ!なぜか?・・・彼女に恋してるから・・・単純な理由なんだ。だからこそ俺が何とかしないと!・・・でもどうすれば良いか分からん!
全く答えが見つからないまま、取り敢えず馬車へ向かう事にした。
滝座瀬と三津島に会う為だ。
すぐに姫やこの国の王様に会わされると思っていたのだが、姫は仕事で忙しく、王は姫を極秘で匿っている手前、公式には会えないのだそうだ。
後で非公式に会ってくれるらしい。
アールとミミも馬車までついて来た。
ミラも来ようとしたのだがそれは俺が止めた。
だって新たな修羅場が生まれそうだし・・・
俺は馬車の扉を開けた。
中から鍵が掛かっていたけど俺には関係無い。
俺が近づくと、カチャッ、自動的に鍵が開いた。
あの2人の事だから中はさぞかし散らかっているんだろうと思いきや、入ってみると意外と綺麗だった。
滝座瀬は顔にパックを、三津島はガッツリとゲームをやっていた。
2人は俺を見た途端、顔のパックを剥がし、ゲームのコントローラーを投げ出し、勢い良く立ち上がるとガバッ!と抱きついて来た。
「遅いわよ!この私を何日待たせるのよ?」
「わああぁぁん、カガリ君会いたかったよおおぉぉ!」
2人は余程寂しかったらしく、ガッチリと俺を抱きしめて来た。
色々『むんにゅり』と当たっているけど、動揺は最小限に抑えた。
「遅くなって悪かったな。俺も会えて嬉しいよ」
俺も2人の背中を抱き返してやった。
なんだか俺もだいぶ女の子に慣れて来たみたいだ。
随分余裕の対応が出来るようになったものだな。
少し前なら、こんな超美少女2人から熱烈なハグを受けたら、
『あばばばばばばば・・・』
とか言ってフリーズしてたよ。
しかし、そんな熱烈な再会を一瞬で凍りつかせるような、某週刊誌砲も真っ青の一撃がミミから放たれた。
「麻耶、沙彩・・・あのね、カガリが・・・結婚した」
カチーン・・・
2人の体温が急降下しているのを感じた。
「「結・婚?」」
2人は同時に呟いた。
『あばばばばばばば・・・』
女の子に慣れて来た?
余裕の対応?
・・・こんな重っくるしい空気で、んな事出来るかよ?!
俺は完璧にフリーズした。




