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1話 召喚されちゃったよオイ!

ああ、懐かしい光だ。確かあの時もこんな感じで辺り一面真っ白な光に包まれたんだよな。それで気が付くと・・・・・・・・・・


「ん?」


目を覚ますと、どこか見知らぬ場所に寝かされていた。


あれ?どこだ?さっきまで学校に居たんだけど・・・


仰向けに寝ているので見えるのは天井だが、明らかに学校じゃない。

広すぎるのだ。

これが教室の訳がない。

広さで言えば体育館か?しかし、今見上げている天井にはそれはもう見事な絵画が描かれているのだが、これが体育館の天井なら鉄骨が剥き出してるし、何より、鉄骨の隙間に挟まって取れなくなったとんでもない数のバレーボールが、目の前の見事な絵などよりも余程強烈な存在感を放っている筈なのだ。

『バレーボールの墓場』と呼ばれる我が校の体育館と比べて、この天井には沢山の天使が描かれ楽しそうに舞い踊っている。

まさに天地の差だ。

それにそもそも明らかに西洋風の豪華な建物だし。

やはりここは俺が全く知らない場所なんだ、そう理解した。

身を起こすと、周りには、俺が通う高校のクラスメイト、2年A組のみんなが居た。

冷静な者、戸惑っている者、落ち着きなく辺りをキョロキョロ見回しているもの、パニックになっているもの、泣き崩れている者、そして「時は来た!」とか言っちゃってる者など様々だったが、流石にクラス全員が揃っているかまで事細かに確認する余裕は無かった。

まあ『気が付くと見知らぬ場所に居た』っていうシチュエーションは俺的には以前にも経験があるし、他の奴と比べるとまだ冷静を保てている方だとは思うけどさ。


これって俗に言う『異世界召喚』ってヤツだよな。


だって俺たちの周りに居るのは、中世ヨーロッパ風の鎧を来た兵士や、更に厳つい鎧を来た騎士団長風のおっさん、そして豪華な衣装を纏った貴族っぽい奴ら、ローブを被って先っぽに玉の付いた杖を持った魔法使い風の女に、一際高くなっている玉座っぽい豪華な椅子に座って俺たちを見下ろす王冠を被った王様風のお方、そしてその隣には長い金髪をキラキラと輝かせ、気の強そうな顔立ちを笑顔で誤魔化したような王女様風の超美人などそうそうたる面々だ。


ラノベファンタジー好きの俺としては、みんながみんな"異世界ですよ"って主張してる奴等なのだ。


騎士団長に魔法使いに貴族に王女に王様、まさに役者が勢揃いしていた。


て事はもしかして俺達は召喚された勇者なのか?


とすると俺達を含めたクラスメイトみんなが勇者サイドの役者って事になる。


ほんの少し冷静さと心の余裕が戻ってきた俺は、改めてクラスメイト達を見回した。

特にこちらサイドの主役達はちゃんと欠ける事なく召喚されてるんだろうか?

4大美人に3大アイドル、そして2大エロス。

うん、みんな居た。

何?って女子ばっかだと?当たり前じゃん、男に興味ないし。

とは言え、最初に口火を切った主役は男だった。

六条優馬。

頭脳明晰、スポーツ万能、家は金持ち、甘いマスクで口も達者、そして喧嘩も強い。

そのカリスマでクラス委員長を差し置いて『真のトップ』だとか『歩くカリスマ』だとか呼ばれているクラスカーストの頂点だ。


「それで、どう言う事なのか説明して頂けるんですよね?」


六条は王様風の人を見据えて堂々と言い放った。

この状況でその発言を王様風の人に突き付けるのは流石に勇気がいるぞ。

やっぱりカリスマは違うな。

ん?六条の目線が若干ズレてる?その先にいるのは・・・王女風の方だった。

流石イケメン、抜かりがないな。


「うむむ王へ無礼な口を叩きおって!」


「王への不遜な物言い、身の程を知らぬ輩が!」


ザワつく貴族達。

いやいやあんたらよく見ろよ、王はガン無視されてるから。

てかこの人やっぱり王様だったのね。


ざわつく貴族達を手で制したのは王様ではなく王女風の気が強そうな金髪ロングの超美人だった。彼女は六条を見ると、


「どうやら貴方がまとめ役の様ですわね。勿論ご説明致しますわ」


これで六条がこのクラスの代表認定された。

委員長は何してるの?!

見ると、彼女は泣き崩れている女子を慰めていた。

委員長らしいっちゃらしいけど、俺的にはここは委員長に仕切って欲しかった。

え、何で?

だって男に興味ないし。


王女風の金髪ロング超美人が説明する所によると、彼女はやはり王女らしい。

そして王様風のお方は王様、貴族風の奴らは貴族、魔法使い風のヤツは魔法使い、兵士風のヤツは兵士だった。

まあ誰でも分かるくらいまんまだったからね。

けど一人だけ、厳つい鎧を来た騎士団長風のおっさん、コイツは何と龍王だった。

本来の姿だと大きすぎて部屋に入らないから人間の姿になってたんだと。

紛らわしいなおい!

けどある意味良かったよ。やっぱり俺的には騎士団長といえば金髪美女パターンの方が好きだし。


王女様ことフアナ・ファルガ・スピーリヒルがこの後話した事も概ね予想どおりだった。

この世界、ラング大陸の覇権を巡って人類と魔族が戦いを繰り広げていて、魔族領との最前線であるこの国、スピーリヒル帝国の皇帝、ラースハイド・ファルガ・ツェ・スピーリヒル陛下の名の下に人類の脅威たる魔族の長、すなわち魔王を俺たちに倒して欲しいんだとさ。


俺たち異世界から召喚された人間には『勇者』という特別な称号が与えられるからレベルを上げていけばいずれ魔王を倒せるだけの力が手に入る筈なんだと。


やっぱり俺達は勇者だったか。

まあファンタジーラノベのテンプレだし異世界転移した時点で予想はしてたよ。俺ってば結構『あっち系』だしね。

『あっち系』って顔や脛に傷とかある方じゃないよ、オタク系って意味だよ。

小指もちゃんと付いてるし顔だって傷一つ無い綺麗なものだ。

まあ心なら結構傷だらけだけどさ。

敵はリア充にあり!


王女様の話は普通なら驚くべきものだが、俺はそんな予感がしていた事もあってそれ程動揺は無かった。

さて、六条はどう出るか?


「お話は分かりました。しかしどうして俺たちが、何の関係もないこの世界の為に危険を犯して魔王を倒さないといけないんです?しかも同意も無く連れてきて。今頃向こうでは俺たちが一斉に居なくなって大事件になっていると思います。今すぐ戻して下さい」


「実は...」


「『戻せない』は無しですよ」


「うっ・・・・・」


あーあ、黙っちゃったよ。

六条の奴、中々強気だな。

金髪ロング超美人王女様との会話だからもっとマイルドに接すると思ったんだけど。

いつものイケメンスマイルもしてないし表情も険しくてかなり怒ってるっぽいな、当たり前だけど。


すると横からシブいおっさんの声が割り込んできた。


「ごちゃごちゃうるせえなテメエ!戻せねえんだよ今はな。そもそも必要があって呼んだのに何も無しにすぐ戻す訳ねえだろ察しろよ!」


「人を呼んでおいてその言い草はあり得ないでしょ?そっちは俺たちにお願いする側ですよね?一体どんな教育を受けてるんですか?王様が居るって事はここは王城、つまり国の首都だと思うんですけど、その割には教育レベル最低ですね」


「レベルが低いだと?テメエ、この偉大なる最古の龍王ヴァルグリッド様に言いてえ放題だな!」


険しい表情で六条を睨みつける偉大なる最古の龍王。

って自画自賛だなおい。

だけど六条は全くビビってそうに無い。

お前も十分凄いよ。


「『言いたい放題』ね。そりゃ言いたくもなる。無理やり連れてきて、勝手な都合を押し付ける。元の世界へ返してもくれない、おまけに逆ギレ。はっきり言って俺たちに何のメリットも無いんですよ。人を動かしたいのならそれに見合う対価が必要です。さっきからあなた方はその事を一切言ってこない。そりゃ信頼も出来ません。龍王さんですか、偉大で最古なのは結構ですがもう少し俺たちの立場を察する理解力も養ってはどうですか?そもそもそんなに凄いのならご自分で魔王ってのをお倒しになれば良いのでは?偉大で最古なんでしょ?」


「ん?俺様の偉大さと最古さは認めるのか?貴様はなかなか見所があるな・・・だがな、言葉には気を付けろよ?・・・俺様が魔王を倒すだと?なぜ俺様がそんな事をしなきゃならねえ?ドラゴンは人間と魔族の争いに直接関わる事は無い。どんな報酬を貰おうと人間ごときに使われてまで魔王と戦うつもりはねえよ・・・勇者召喚してやってるのは例外だ。そうしてやらねえと人間は一方的に滅ぼされかねん・・・まあテメエが言う通り、労働に見合う対価が必要な事は認めてやる。俺様もこの召喚をしてやった対価をこれから貰う予定だからな」


コイツ、とんでもなく身勝手な理屈をこねてるなオイ!

まあ、だから平気で勇者召喚なんてやるんだろうけどさ。

ん?って事はさ・・・龍王さん、お前が召喚の実行犯かよ!


どうやら同じ突っ込みを六条も感じたようだ。


「・・・色々言いたい事はあるが・・・つまりあんたが俺たちを召喚したって事か?」


「ああ。それが出来るのはこの世界で俺様だけだからな。だが要望したのはコイツら人間だ。俺はただコイツらの願いを叶えてやっただけだ。それなりの対価を貰ってな」


「召喚したのなら戻す事も出来るのでしょう?」


「ああ。安心しろ。魔王を滅ぼした瞬間、自動的に元の世界に戻るようになっている。そういう設定の召喚をかけたからな」


「はあ?!俺たちは今すぐ...」


「対価を掲示すればいいのだろう?」


「・・・・・聞きましょう」


激高しかける六条の言葉を遮る様に対価の提案をする龍王。

意外に話せる奴なのか?

六条も話を聞くらしい。


「フアナよ、コヤツらに聞く耳を持たせてやったぞ。手早く纏めろ」


「龍王様、感謝いたします。勇者様、単刀直入に我々がご用意出来る対価をお伝え致します」


『対価』ね。

確かにここに連れてこられた以上、すぐ返してくれる訳無いし、現実的な落とし所を探るのが妥当だよな。

て事は六条の奴、それを見越して交渉してたってのか?

流石『真のトップ』と言われるだけある。

まあ俺的にはその役目を委員長にやって欲しかったんだけど。

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