一人だけ別ゲー・目立ちたがり
短いですが、ノリと勢いで馬鹿を書いてみました。
一人だけ別ゲーシリーズで、こんな組み合わせも有りかな~と。
現代から見て、大凡100年と呼んでしまえるほどの未来。
人類にはフルダイブ技術が普及していた。
仕事や買い物をリアルな描写のVR空間で済ませる事も多くなるまでに定着し、受け入れられるまでになった技術。
そこまで技術が発展していれば、遊びもVR空間でするのが当たり前にもなる訳で。
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ここはとあるVRMMORPGのゲーム空間。
日本の戦国時代をモチーフにした、ファンタジーな世界。
陰陽師が鬼や式神を使役してド派手に暴れまわり、
邪法師が怪しげなお札にて炎氷を自在に操り、
僧兵が妖怪を始めとした怪異の類を念仏で祓い、
鉄砲持ちが巨大なごんぶとビームで敵を薙ぎ払い、
忍者が遁法で迫りくる異形の者を火柱で焼きつくし、
侍が剣術などを無視して力業で豪快に悪を切り捨てる。
そんな世界。
そこで今日は大規模なイベントをしていた。
開催しているイベントの種類は、合戦。
赤と青、2つの軍に分かれてのPvP。
ゲームのバランスは一般的なMMORPGから大きく逸脱しない・させない設計。
そうである以上、個々のプレイヤーの強さより、数や策略の影響が勝敗に大きく関わってくる。
もちろん双方に不公平が出ないよう、プレイヤーは同数振り分けられている。
そして、プレイヤーをどう運用するか。 軍師や、予想不可能な奇天烈プレイをする者が輝く晴れ舞台。
そこでは、このゲームイベント特有の風景が見られる。
現在は最終局面。
お互いの策も尽き、後は正面から全力で衝突して勝敗を決するしか無くなった。
言わば最後の意地の張り合い。
それ故互いに激しくぶつかり合い、一進一退の揉み合いへし合い削り合い。
現実であるなら、それはもう悲惨な戦場であっただろう、死屍累々の地獄の風景が出来上がっていた。
武具が激しくぶつかり合う金属音、飛び交う怒号、血風は吹き荒れ、削りきられたHPに響く悲鳴。
それに負けず、陣の後方より鳴り止まない驟雨と呼ぶに相応しい矢の飛来音、豪雷が如く轟く火縄銃よりの破裂音で血煙も舞い踊る。
そして常に最前線の地獄にも負けず鳴り響く、体も魂も震わせる太鼓の――――――
……………………太鼓?
ドンコドンコドンコドンコ!
ドンドン カッ!
ドンドン カッ! カッ!
アイツ、また……っ!
はい。
これは背景音楽ではありません。
本当に申し訳ございません。
「よっ! はっ!!」
ドンドコ ドンドコ ドンドコ カッ!
この場面で空気も読まず、フンドシ・裸法被・ねじり鉢巻のアバターで、一心不乱に太鼓をドツキ回す馬鹿は運営の者です。
そいつの視界へ入り続ける様設定された浮遊ウィンドウに現れる、指示に合わせて叩く恥知らず。
最前線が動いてもスライド移動して、最前線の中心地点に張り付いてドンドコ続ける馬鹿で本当にすみません。
「はい! はい! はい! はい!」
ドン! ドドン! カッカッ! ドドン!
運営の偉い人こと、武田 辰巳。 ツーブロックの髪型と、短めに刈り込んだアゴヒゲをダンディだと言い張る趣味人。
公式イベントの司会を率先して行い、運営側の責任者なひとりである癖に、むしろプレイヤー視点でモノを言う変人。
「よっ! ほっ! てやっ!」
カカッ! カッ! カカカカカカッ!
お祭りにプレイヤーとして参加できないのが悔しいからと、こんな馬鹿をゲーム中に続ける馬鹿です。 ごめんなさい。
赤青両軍共に、プレイヤー達は明らかに迷惑を被っている様子で辰巳を睨んでいても、この馬鹿は知らん顔して叩き続けています。
更に性質の悪いことに、このオッサンは接触不可能透過オブジェクト……つまり触れない無敵のオバケ状態。
それを踏まえて、抗議の意味でプレイヤーの皆さんから矢玉や術が飛んできても、無敵だと分かっているからどこ吹く風。
いやホント、ウザくてすみません。
このイベントが終わり次第、運営一同でキチンと叱っておきますから。
……いくら叱っても効果が見えないんですけどね。
「よーーーーおっ!!」
ドドンッ!!!
どうやら演奏が終わったようです。
このまま、満足して運営の仕事を真面目にしてくれれば文句は――――
「クリアだな! ……おや? もう一回遊べるゾイ? OKOK、やってやろうじゃないか!!」
や め て く れ !!!
こうやって彼はイベントの度に、人が集まったり観戦者の目が集まりやすい場所で太鼓を叩く。
結果として、彼には二つ名がついた。
太鼓の辰巳。
それが彼の二つ名。
いくらゲーム内の実況掲示板で「武田ぁぁぁぁぁ!!」と叫ばれようが、運営への苦情メールで文句を言われようが。
一切改める気配を見せない、名物運営者が居るゲームのイベント風景である。
以上、VRMMORPGへ強引に音ゲーを入れてみたらこうなった。
時々謎解きや生産行為に、ミニゲームとして混ぜ込まれる場合も有りますが、このゲームではそう言った要素は無い設計となっております。
設定位の時間が経っていれば多分、ソレのシリーズが出尽くして不採算扱いされて、権利放棄の上フリーゲーム化しててもおかしくないのでは?
そんな妄想をしたので登場させてます。
でも現在では現役バリバリですので、リスペクトやオマージュであっても無断使用ですから、ハッキリと何のネタを使わせて頂いているかは伏せさせて頂いております。
その辺は創作者として大切な感覚。
もし権利元様から何か通告が来ましたら、違う何かへ差し替えさせていただきます。 その辺はご了承下さいませ。