「茨木童子」のエピローグ
茨木が目を覚ますともう日が沈む頃でした。
身体が痛むなと身体を手で触りつつ起き上がると仲間達の倒れた姿が目に入りました。
「みんなどうしたんだ!?
茨木がそう言っても誰も返事をしませんでした。
「酒呑さん?酒呑さんはどこ!?」
そう言って走りながら探すと近くで酒呑童子の首から下が倒れていました。そうして酒呑さんと名を何度も呼びながら茨木は泣き続けました。
涙が枯れた頃に茨木は徐に立ち上がり京を睨みつけながら言いました。
「よくも酒呑さんを。。山伏の奴等を皆殺しにしてやる」
そして茨木は鬼だと分からないように変装して京に入りました。
そして川に架かった橋を渡っていると、茨木は馬にのった人に話しかけられました。
その顔を見ると綱でした。
「こんな夜更けに一人で歩いていては危険だ、家まで乗せて行こうか?」
綱がそう言うと茨木は頷きました。
馬に乗り、家はどこだと綱に聞かれると、茨木は京の入り口の門の方を指差しました。
そして門の付近までもう少しの所で茨木は後ろから綱の首を締めました。
「よくも酒呑さんを!」
綱は驚きはしましたが冷静に茨木を振り払い刀を抜きました。
「お前はあの時の鬼の生き残りか、調度いい、金時には悪いが俺がお前を斬る!」
そう言うと綱は刀を茨木に向けました。
「酒呑さんの首をどこへやった!」
「あの山にある寺に埋めてやった。お前もそこに埋めてやるから安心しろ」
そして2人の戦いは始まりました。
茨木は持ち前の速さで攻撃しましたが、それ以上に綱は素早く、茨木の攻撃は当たりませんでした。
そして一瞬の隙をついて綱は茨木の右腕を切り落としたのでした。
「よくも、、酒呑さんと握手した右腕が・・・」
「弱い、弱いな、こんなものか」
すると茨木は勝てないと思い、門から出て逃げ出しました。
5人を倒すどころか1人にも勝てない悔しさで涙がどんどん溢れてきました。
山に帰る途中、茨木は生きる意味がないように感じてきました。そして酒呑の首があるという寺で自分も死のうと思いました。
死のうと思うのに何故か寺に行く歩みは徐々に早くなっていきました。
そして寺に付くと茨木は片手で穴を掘って酒呑童子の首が入った風呂敷を見つけました。
これを抱いて死のう、そう思った時に声がしました。
その声が酒呑童子のものだと分かると茨木は慌てて風呂敷を広げました。
すると酒呑童子の首が現れ、茨木を見て遅い!と言いました。
「酒呑さん、生きてたんですね」
「俺が首を斬られたぐらいで死ぬはずがないだろう、もっと早く助けにこい!」
「ごめんなさい、さすが酒呑さんですね」
「もう人と関わるのは疲れた。人目につかない場所に俺と行かないか?」
「そうしましょう。私が酒呑さんの手足になるのでどこにでも連れていきますよ、酒呑さんとなら楽しめそうです」
茨木は笑顔でそう言うと酒呑童子を抱えて歩き出しました。そして2人は楽しく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。