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童話のプロエピ  作者: ひきたて
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「金太郎」のプロローグ

昔々、越後の国に外道丸という少年がいました。とても整った顔立ちをしていて外道丸を見た女性達は一瞬で恋に落ちる程でした。


毎日のように外道丸は女性達から恋文を貰いました。何故中身も知らずにこんな物を渡せるのかと思った外道丸は暴れるようになりました。こうしていれば貰わずに済むだろうと思ったからでした。


しかし女性達からの恋文は増えるばかりで嫌になった外道丸は読まずに女性達の目の前で燃やすようになりました。


暫くしたある日の夜のこと、恋文を燃やされた女性達の悲しみが怨念となって外道丸を囲みました。外道丸は逃れようと必死で暴れましたが次第に飲み込まれていきました。


そうして朝になると外道丸はいつの間にか鬼になってしまいました。



外道丸の両親は鬼になった姿を見て大慌てでした。そして悩んだ末に寺院に預ける事にしました。寺院で過ごしていれば元に戻れるかもしれないと思ったからでした。


しかし、いつになっても元には戻れませんでした。外道丸は辛さを忘れる為に毎日お酒を呑んでは暴れ周り、お寺の住職からは酒呑童子と呼ばれるようになりました。


そんなある日、寺院にまた一人の鬼の子が預けられました。名を茨木という者でした。

外道丸は茨木を見ると言いました。


「おいお前、ここに来ても元には戻らんぞ」


「あなたも鬼ですか?私は茨木、茨木童子といいます。女性達の怨念でこんな姿になってしまいました。あなたの名前は?」


「俺か?俺の名は酒呑童子だ」



酒呑童子と茨木童子は同じ境遇でした。

そして寺院を2人で抜け出しました。住職がそれを知ると鬼を捕まえろと各地の法師達に伝えて2人はどんどん南に逃げるのでした。


そして数日後にようやく逃げきり、京の都付近の山に隠れ住むようになりました。


「酒呑さん、これからどうしますか?」


「救うぞ」


首を傾げる茨木童子を見て酒呑童子は続けて言いました。


「俺や茨木のような鬼をこれ以上増やす訳にはいかない。俺達の村にいた女達は俺が鬼になると恐れて京に逃げたと聞いた。その中に怨念を持つ奴等がいるはずだ。捕まえるぞ」


「だから京の方向に逃げてきたんですね、、でもどうやってですか?私達は鬼ですよ?それに京の守りは堅いと聞きます」

茨木童子が難しい顔をしながら聞きました。


「そこは鬼らしく夜に連れ攫う、目撃されたくないからな。そしてここで出身を聞いて俺達の村出身なら殺す。それ以外は京から出てもらう。何年かかるかは俺にも分からん」


「酒呑さん、私にも手伝わせて下さい」


こうして酒呑童子と茨木童子は夜に女達を連れ去っていくようになりました。

一夜にして女性が消える事から神隠しと京では噂されるようになっていきました。


・・そして京ではもう1つの噂がありました。

それはお城で働く武士の一人の事でした。

武士は名を坂田といい、赤い鉢巻を巻いて、大人2人でようやく持てる鉞を片手で軽々と振るう力持ちがいるという噂でした。


その坂田には妻がいました。名を八重桐といい、八重桐のお腹の中には子がいました。


「この子の名は何にいたしましょうか?」

幸せそうにお腹を撫でながら八重桐がそう言うと、坂田は腕を組みながらうーんと唸り、豪華で、強そうで、格好が良くてとぶつぶつと呟いていると、欲張り過ぎですよとその途中で八重桐に言われてしまいました。


「そうだ八重桐、都では今、神隠しが起こっているようだ、みんな若い女性らしい。心配だから騒動が収まるまで故郷の足柄山でその子といてくれないか」

思い出したように坂田がそう言うと、八重桐は渋々納得して次の日に京を出ました。


数日後、神隠しの原因を探す為に隊が編成されました。その中には坂田もいました。夜に見回りをしていると坂田は何かの気配を感じ、鉞片手にその方向に向かうのでした。


暫くして、坂田は二人の影をみつけました。


酒呑童子と茨木童子でした。


「酒呑さん、見つかった!」


その声と共に逃げる鬼を坂田は隊に何も言わずにどこまでも追いかけ続けました。


山奥まで逃げ続けた酒呑童子と茨木童子は急に立ち止まり、坂田に話しかけました。


「聞いてくれ、俺達は京にいる怨念を取り除いているんだ、鬼だが信用してくれ」


「神隠しの犯人はお前達か?攫った女達はどうしたんだ?」


「それは・・・生きている者もいる」


「話にならないな、覚悟しろ」


そういうと坂田は持っている鉞を二人に向けて走り出しました。


激しい戦いは夜明け頃まで続きました。

坂田の力と鬼の力を得た酒呑童子達は同じぐらいでした。なので人数で負けている分、坂田は不利になって次第に怪我が増えました。


「もう引いてくれ、あなたでは俺達には勝てない、今なら治療をすれば治るはずだ」


茨木童子がそう言うと坂田は残り少ない握力で鉞を振りながら言いました。


「お前達のような者がいたら、皆が、八重桐が、子供が安心して暮らせないんだ!」


「茨木、もう何を言っても無駄だ!」


そう言った酒呑童子は鉞を避けて坂田の懐に入り今まで使う事のなかった短刀を抜き坂田の胸に深く刺したのでした。


「茨木、行くぞ」


そう酒呑童子が言うと二人は更に山奥に姿を消していくのでした。


日が登り始める頃、隊の人達が山を駆け回りようやく坂田を見つけました。


「おい、坂田!誰にやられた!」


隊の一人がそう言うと坂田は掠れた小さな声で言いました。


「酒呑と茨木という鬼だ。。それと。俺はもう駄目だろう。。だからこの鉞を。足柄山で俺を待つ妻に。渡してくれ。。頼んだぞ。。

あ。。。そうだ。。。金太郎がいい。。。。強く。。。優しい子に。。。。。。」


そう言うと坂田は目を閉じました。


隊の者達は全員で坂田の鉞を持ち上げ京の都まで持ち帰りました。


そして足柄山にいる八重桐に鉞を渡し、坂田の最後の言葉を伝えると八重桐はその場で泣き崩れてしましました。

翌月、一人の男の子が生まれました。



---ここから本編

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