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機装天鎧デバッガー  作者: 凪沙一人
3/30

3:課金・賃金それも借金

 変態扱いを理不尽に感じた桐生は、平坦な直線道路に出ると人が居ないのを見計らって気晴らしにギアをトップに入れた。ここまで運転して制動距離も、ほぼ把握した。ある程度スピードは出しても安全運転。

「凄い… この速度で真っ直ぐ走ってる… 。」

 ブリギッテは驚いたように呟いた。

「いったいバルカーノはどんな運転してるんだ? 」

「一回、スピード出そうとして路肩に落ちて、それっきり速度は出してないです。」

 この世界に免許は無いのかとも思ったが、この運転方法の車がこれしか存在しないのなら、無いのかもしれない。それ以前に公道走行が許されている時点でどうなのかと桐生は思った。

「凄い… レイカ村から国立機械研究所までの最速記録ですよっ! 」

 桐生にしてみれば、道路などのインフラ整備をすれば、もっと早く着くと思った。

「え!? もう着いたんですか? 」

 車

 の音を聞きつけて研究所から出てきた白衣の女性が驚いていた。

「バルカーノさんから、先ほどブリギッテさんが村を出たと電信で連絡があったので、てっきり明日の到着だと思ってました。」

「それが、桐生さんが運転席、凄く上手くて。」

「この変態車をあの変態以上に乗りこなすって… ひょっとしてド変態!? 」

「え、いや、そういう事じゃ… そうそう、桐生さんの腕輪、凄いんですよ。その研究費を… 」

 ブリギッテがそこまで言うと白衣の女性が遮った。

「あんたら師弟が、その手で研究所からいくら借りてると思ってるの? 研究費が欲しがったら前の借金、返してからにしてくれる。」

「いえ、今回は本当に凄いんです。この腕輪、喋るんですよ。」

 ブリギッテが食い下がると白衣の女性も興味が湧いたのか桐生に視線を向けた。

「桐生さんと言ったわね。その腕輪、喋らせてみせて。」

「はぁ… ノゥレッジ、国立機械研究所について。」

『グリシア暦3年開設。産業機械、移動機械を主に… 」

「もう、いいわ。録音機? 図書館で調べれば分かる内容よね。音声操作っていうのは面白いけど研究費を出す程じゃ無いわね。」

 ノゥレッジを遮って白衣の女性はため息を吐いた。

「ノゥレッジ、この人のプライベート。」

『マニー・バンカー、28歳。補正サイズは上から… 』

「わぁーわぁーわぁーっ!ストップ、ストップ、スト~ップ。ゼェゼェ… 。」

 マニーが顔を真っ赤にして遮った。

「桐生さん、ちょっと、こちらに。」

 ブリギッテから離れてマニーはひきつりながら桐生を手招きした。

「ちょっと、なに乙女の秘密バラそうとしてくれてんのよ? ってか、何処で調べたの? このスタイルが補正だなんてバレてごらんなさいよ。私の人生滅茶苦茶よっ! 」

「で、バンカーさん、研究費なんだけど… 。」

「分かった。分かったから、今の話し、墓の中まで持って行きなさい。でないと私が墓の中に送るわよ。… それからマニーでいいわよ。」

 図らずもマニーの秘密を握った桐生は研究費名目の借金を取りつけた。

「ブリギッテ、貸してくれるってさ。」

「え!? 」

 さっきまで渋っていたのが嘘のように貸付に応じたのがブリギッテには不思議だった。

「キャーっ!バグよぉ~。」

 突然の悲鳴と共に虫が暴れていた。

「そんな… 今まで、都の中にあんな大型の虫が出た事なかったのに… 。」

「ブリギッテ、マニーを連れて避難してくれ。あれは俺に任せろっ! 」

「何考えてるの? 無茶よ。」

「バンカーさん、大丈夫だから。」

 一度見ているブリギッテは、落ち着いてマニーと大型武装車の中に避難した。装甲からして、下手な建物の中より安全だと思われる。ただ走らせて逃げるにはブリギッテの運転では不安なものがあるが。

「ノゥレッジ。転送、機装天鎧っ! 」

『天鎧を転送します』

 一度、出来てしまえば桐生に躊躇いは無かった。桐生の足元に幾何学模様が現れ、次の瞬間にはグリーンメタルのドラゴンを彷彿させる鎧を纏っていた。

「な、何アレ!? 変態が変身した!? 」

 初めて見たマニーは興奮した。が、ここでの変態はバルカーノの車を運転出来た事より、自分の秘密を暴いた事に対しての方が大きい。桐生は腰の後ろの釵型のパーツを外すと、今回は柄の部分畳んで銃の形にした。

雷擊サンダーショットっ!」

 電気の塊の弾丸は一撃でバグを撃ち抜き、黒焦げにした。桐生は元の姿に戻るとブリギッテたちの所へ駆け寄った。するとブリギッテより先にマニーが勢いよく飛び出してきた。

「凄い。凄いよ。銃弾だと外骨格が貫けなくて、今まで大型の虫は焼き殺すしか無かったの。でも街中だと引火とかの恐れもあるし。電気も試した事はあるけど表面通って足から地面に抜けてくだけで… どのくらいの電圧掛けてるの? 出力とか制御とか。それに見た目、発電機やバッテリーも無かったけど電源は? 」

「き、企業秘密ですっ! 」

 矢継ぎ早に質問をされて桐生はそう答えた。バルカーノのように退いてくれると思ったのだが。

「国立機関に秘密なのに民間がそれを研究所する? まぁ、国じゃ権利とか、後々の報酬でよく揉めるからね。… 分かった。今からバルカーノさんの所に出向します。貸付先の監視名目なら許可出る筈だから待ってなさい。逃げたら研究費の件は無しだからねっ! 」

 マニーは研究所に駆け出して行った。

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