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機装天鎧デバッガー  作者: 凪沙一人
20/30

20:疑問、尋問、関門

「ならブリギッテ。君だけでも逃げたまえ。」

 バルカーノの言葉にブリギッテは大きく首を横に振った。

「私は先生の弟子です。先生のお側を離れる訳にはいきません。桐生さんだって一人よりマルチナがいた方が助かる筈です。それに持久戦になったら、まともな食事を作れる人が居ないじゃないですか? 」

 これにはバルカーノも頭を押さえた。

「うぅむ。確かにな。背に腹は代えられぬか。」

 どうやらバルカーノは、弟子である事よりも、マルチナの運転手である事よりも、食事の支度が一番、響いたらしい。桐生とフレッジリングが顔を見合わせるとマニーが睨みつけていたので何も言えなかった。

「それじゃ、我々は人型昆虫の尋問に入る。桐生君は襲撃に備えて待機。ブリギッテは食事の支度を頼む。」

「先生、いくら私が言ったからって… 」

「腹が減っては戦が出来ぬと言うらしいからね。」

「は、はぁ。」

 ブリギッテは仕方なく厨房へと向かった。

「桐生君、こちらもある程度目処が立ったらバッカーノとマルチナを出すから、それまで大変だけど一人で何とか凌いでくれ。」

「ブリギッテが今、作ってる手料理が最期の晩餐にならないよう頑張るとしましょうかね。」

 バルカーノもフレッジリングを連れて研究室へと入っていった。マニーも再び通信機の前に座るとインカムを着けた。

「桐生、覚えてるでしょうね? 」

「えっ!? 」

「このスタイルが補正って話し。墓の中まで持って行きなさいって言った事よ。私が先に逝ったとしても有効だからね。でないと絶対に取り憑いて呪って墓の中に引きずり込んでやるからね。覚悟してらっしゃい。」

「おぉ怖っ。」

「女の怨みは恐ろしいのよ。」

「なら、そうならないよう、俺が皆を守り抜くしかないな。」

「頼りにしてるわよ、デバッガー。」

 その時、アラートが鳴り響いた。

「どうやら、虫の中でも足の速いのが先に来たみたいね。」

 マニーの言う足が速いとは比喩であり、実際に真っ先に辿り着いたのは中型の蜂の部隊だった。

「それじゃ、行ってきますか。機装、天鎧っ! 」

『天鎧を転送します』

 桐生の足元に幾何学模様が現れると、一度頭の高さまで上がり、再び足元まで降りた。時間にして千分の一秒。肉眼で捉えられるものでは無いが、その間に桐生の周囲は一度、デジタイズされ、グリーンメタルのドラゴンを彷彿させる鎧と成った。バルカーノの家を出るとデバッガーは腰の後ろの釵型のパーツを外し柄の部分を伸ばして三叉戟にした。

「ノゥレッジ。転送、フロードっ! 」

『フロード、転送します。』

 転送されてきたフロードに飛び乗るとデバッガーも空へと舞い上がった。一目でオオスズメバチ型と分かるな群れの中に一匹だけ他の蜂と体型バランスの異なる個体がいた。

「貴様が、この群れのリーダーか? 」

「俺ハ人型昆虫インセクターNo.8。女王クィーンカラ、コノ群レヲ預カル者ダ。」

 言うが早いか大量のスズメバチがデバッガー目掛けて飛んできた。バグたちは捕らえた人型昆虫を取り返しに来ると聞いていたが、どうやら話し合うつもりはないらしい。力ずくと云うのならば、それなりに対応しなくてはならない。幸い、スズメバチも大型の為、互いの距離が近いと翅や身体がぶつかってしまうため、何十匹も一度に相手をしなくてはならない事態は免れた。

「足元ノ板ヲ狙エッ! 」

 No.8の指示で蜂たちはフロードに狙いを定めてきた。だが、蜂の狙いが一点に集中したお陰で桐生からすれば守るにも避けるにも容易くなった。とはいえ蜂だけに構っている訳にもいかない。予想される第二波、第三波に備えなくてはならない。

「ノゥレッジ、荷電粒子砲準備(スタンバイ)っ! 」

 威力が大き過ぎる為、地上では使用しなかった荷電粒子砲。空中であれば確かに障害物は無いが、自身も反対側に飛ばされるかもしれない。だが、そんな事を心配している場合ではない。桐生の書いた設定通りであれば、自分はその空間座標に固定されている筈だった。現実世界では考えられない程の電力を生み出すデバッガーの設定ならではの兵器だった。桐生が引き金(トリガー)を引くと、高圧の荷電粒子が唸りをあげながら一直線に放たれた。

「俺の世界の科学者が聞いたら、あり得ないとか言いそうだよな。」

 荷電粒子が減衰によって消失する頃には、ほとんどの蜂は落ちていた。

「マタ仲間ヲ殺シタナッ! 」

「殺らなきゃ殺るつもりだったんだろ? 正当防衛だぜ。」

 なおも襲い掛かってくるNo.8を桐生は気絶させた。No.11がフレッジリングの言うとおりならNo.8も人間の可能性が高いからだ。地上に下ろして次に向かおうと離れたところで小さな爆発音がした。起爆されたものなのか、自爆をしたのか、今となってはわからない。だが、レイカーたちが人型昆虫に爆薬を埋め込んでいるのは事実である。さすがに桐生にもレイカーに対する怒りが湧いてきた。

「マニー、そっちの様子は? 」

 桐生は心配になって通信を入れた。

「こっちの人型昆虫から爆薬を外したところよ。まぁ、この程度の火薬の量じゃ、デバッガーならびくともしないでしょうけど油断しないでね。蜂なんて、まだ第一関門突破したくらいのもんなんだから。」

「了解。次に行くっ! 」

 桐生は次の反応へ向かって飛び立った。

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