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機装天鎧デバッガー  作者: 凪沙一人
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2:武装・闘争そして無双

『天鎧を転送します』

 桐生の足元に幾何学模様が現れると、一度頭の高さまで上がり、再び足元まで降りた。時間にして千分の一秒。肉眼で捉えられるものでは無いが、その間に桐生の周囲は一度、デジタイズされ、グリーンメタルのドラゴンを彷彿させる鎧と成った。腰の後ろの釵型のパーツを外すと、柄の部分を伸ばして三叉戟にした。

雷戟サンダートライデントっ!」

 電気を帯びた戟は一撃でバグを貫き、感電させて黒焦げになった。桐生は直ぐ様、元の姿に戻るとブリギッテの元へ駆け寄った。

「大丈夫? 」

「は… は… い… 」

 ブリギッテも目の前で起きた事象が理解出来ない様子だった。しかし、バルカーノはと言えば愉しそうに眺めていた。

「驚いたな。どういうシステムなんだい? 」

「あ、いや… 企業秘密です。」

「すると、何処かの企業の物なのか? 」

「え、いや、個人企業なので… 」

 それを聞いてバルカーノは渋い顔をしながらも頷いた。

「そうかぁ。そうだよなぁ。私だって、それだけの発明したら誰にもノウハウは教えたくないよなぁ。機剛師として、分かる。分かるが… そうかぁ… 残念だ。実に残念だ。」

 そして虫が入って来た大穴に近づいた。

「さて… この大穴を君の腕輪で修理出来たりは… 」

「そんな魔法じゃあるまいし… 」

「はっはっは。そう都合よくはいかないか。まぁ、魔法なんて便利なものが在ったら、機剛師なんて仕事は、あがったりだけどね。」

 桐生としては、魔法の存在する世界ではない事が分かっただけ収穫だった。天鎧システムは世界観として対魔法を想定していない。逆に機械文明世界であれば、なんとか、やっていけるかもしれない。

「にしても、困ったな。これでは修繕するまで住めそうにない。せっかく、素晴らしい研究対象と出会えたというのに。」

 桐生にしても、ここに厄介になるつもりでいたので、この状況は拙い。

「幸い、私の部屋だけは無事だから… 君とブリギッテは街まで行って修繕費の調達をしてきてくれないか? 」

「また借金ですか!? もう貸してくれる所なんてありませんよっ! 」

 呆れたようにブリギッテは大声を出した。それでもバルカーノは自信ありげだ。

「大丈夫。国立機械研究所に彼の腕輪を見せて研究費用だと言えば、きっと貸してくれる筈だ。」

「先生っ! これは桐生さんの物で先生の研究対象じゃありませんっ! 」

「桐生君というのか。改めて宜しく。」

 そういえば桐生は名乗った覚えが無かったが、ノゥレッジに自身の事を尋ねた時にブリギッテが居た事を思い出した。

「当面は彼が使っているところを観察するだけでも研究なのだよ。色々な意味で常識や物理法則から外れている。かつて無い研究対象だとは思わないか? 君も企業秘密とはいえ、観察するくらいならいいだろ? 」

「え… えぇ。」

 桐生としても観察させるという名目でここに居る事が出来るし、観察してどうなる物でもないので承知した。

「そうと決まったら、早いところ資金の調達を頼むよ。」

「… 仕方ありませんね。桐生さん、ちょっと待っててくださいね。すぐ旅支度して来ますから。」

 ブリギッテの言葉に桐生は不安を覚えた。出掛ける支度ではなく旅支度だと。つまり、その研究所や街は近くにないという事になる。

「お待たせしました。」

 ほどなくして現れたブリギッテの手荷物が意外と少なかったので桐生は油断した。外へ出るとそこには大型武装車が待っていた。

「これで行くのか? 」

「はい。道中はさっきの虫みたいなのが、うじゃうじゃ出てくるんですよ。その… 桐生さんみたいに強くないんです。」

 桐生が乗り込むと中は思ったより広かった。だが、中々発車しない。コックピットを覗くとブリギッテが何やら手間取っている。

「どうかしたのか? 」

「あ、だ、大丈夫です… たぶん。いつもは先生が運転しているものですから。」

「ノゥレッジ、この車の操作方法。」

『前進 右 オルガン式ペダル。停止 中央 吊り下げ式ペダル。ギアの切り替え 左 吊り下げ式ペダル及びコラムシフト。サイドブレーキはシート左に在ります。』

 つまり、桐生にとっては乗りなれたマニュアル車のようだった。

「ちょっと替わって貰えるか。」

「あ、これ、先生の作った変態機で普通の人が運転… !? 」

 大型武装車は、あっさりと走り出した。

「え゛~っ! 桐生さんも変態!? 」

「こら、大声で人聞きの悪い事を言うなっ! 」

「あ、スミマセン。」

 コラムシフトという点を除けば、操作方法は愛車と変わらない。

「ヤバい。先生より運転上手じゃないですか。どれだけ変態なんですか… 」

「何か言ったか? 」

「あ、いえ、なんでも。」

 桐生としては普通に車を運転しているだけなのに、こうも変態呼ばわりされるとは思わなかった。

「普通の車ってレバーを前に倒すと前進、後ろに倒すと後退なんですよ。ギア変えるとか意味わかんないし。だから、天才通り越して変態の発想だって言われてるんです。」

 桐生を変態呼ばわりした事を悪く思ったのか、ブリギッテは聞かれてもいないのに説明した。それでも桐生からすれば発明したバルカーノが変態呼ばわりされたとしても、自分が変態扱いされるのは理不尽に思えた。

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