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機装天鎧デバッガー  作者: 凪沙一人
13/30

13:懐疑と怪奇・その会議

 桐生たちはグリシア共和国に戻ると直接、レイカーの元に向かった。

「なるほど。会話の通じる人型昆虫が存在するとはね。貴重なサンプルを機麟のテストで抹消してしまったようだね。」

「ちょっとレイカー。相手は知的生命体なのよ? サンプルを抹消って言い方はないんじゃない? 」

 マニーが少し声を荒げた。それは桐生も感じていたが立場的に言い難かった。

「だが、君たちの話しからすると、その人型昆虫は人類に対して生存競争だと言った。つまり、どちらかが滅ぶまでの戦争を布告して来たのだろう? それは害虫が害悪であり外敵となったと云うことになる。こうなると知的な分だけ厄介な相手だ。更に厄介なのは知的な昆虫と本能だけの昆虫、両方を相手にしなくてはならない。別々に来るなら知的な昆虫を機龍、本能だけの方を機麟で分ける事も出来るだろうが、そうもいかないだろう。侵略戦争や宗教戦争と違って生存競争というのは殲滅戦だ。民間人でも容赦しないだろう。これは戦略を練り直す必要があるだろうな。」

「論点をずらさないっ! 」

 グリシア共和国評議会議長を一喝出来るのはマニーくらいなものだろう。

「マニー君。別に論点をずらしているつもりはないよ。君の言いたい事は解るが、私もこの国の議長として国民を守らねばならない。虫たちが敵対勢力を自認しているならば、対抗策を講じねばならない。わかってくれたまえ。」

 レイカーの言い分も解らなくはないが、最初から話し合いを放棄する態度に桐生は疑問を感じていた。それはブリギッテやマニーも同様であった。

「お話し合いは出来ないんですか? 」

「言葉が通じるんなら検討すべきじゃないの? 」

 するとレイカーはいきなり立ち上がった。

「この国では君たちしか話す人型昆虫と遭遇していないので難しいとは思うが会議に議題として提出してみよう。だが、本能だけの連中もいる以上、機麟の配備は進めさせてもらうよ。」

 そこへタイミングを見計らったように秘書官のリーが入ってきた。

「議長、次の面談のお時間です。」

「すまない。続きはまた。」

 仕方なく桐生たちは議長室を後にした。

「Ms.リー。面談の予定などあったかな? 」

「いえ。余計な真似を致しました。」

「いや、そうでもない。寧ろ助かったよ。ありがとう。」

 珍しくレイカーに礼を言われてリーは深々と頭を下げた。その一方で部屋を出たマニーは収まらない。

「桐生はどう思う? 人類以外で初の言語コミュニケーション可能な生命体の登場よ。話し合ってみる価値はあると思わない? 」

 桐生は返事に困っていた。今まで人間以外と言語コミュニケーションなど、とった事が無いし考えた事も無かった。人間は動物や植物から栄養を補給する。例えば食肉用の家畜や畑の野菜が話し始めたら話し合いに応じるのだろうか。食物連鎖の連鎖を断てば餓えるしかない。レイカーのように割り切る事も必要なのかもしれない。だが、マニーやブリギッテの言うように、話し合いで解決出来るのであれば、模索したいという気持ちもわかる。

「話し合いと言っても、誰と話すのかだな。蟻や蜂のように女王クイーンが居るならわかるが、種類に統一感は無い。今のバグ異星人エイリアンと一緒だ。話し合いの模索も必要だが、応じる気がなければ侵略者インベーダーとして排除しなきゃ人間が滅びるしかない。」

「で、どっちなの? 話し合うの?合わないの? 」

「専守防衛。人間に危害を加えたり被害が出るようなら対応するけど、積極的に攻勢に転じるかは、向こうの出方次第ってところかな。」

 桐生の返答にマニーも複雑な表情で頷いた。

「そうよね。一歩間違えれば人類存亡の危機だもの。話し合いを模索しようとすると現時点では、それが現実的な線よね。ただ… 大変よ。レイカーは機麟を使って殲滅戦に出るはず。専守防衛の戦い方は機龍… つまり、貴方にしか出来ない。」

 マニーの言うとおりだろう。機麟は決戦兵器ともいえる代物だ。量産体制に入ればフェルトが危惧していたような軍事転用もあり得るだろう。そうなれば人対虫、人対人。戦禍は避けられない。

バグの対処がデバッガの仕事だからな。やってやろうじゃないか。」

 何しろ桐生には、これしか生活の糧が無い。

「張り切るのはいいけど、レイカーと対立するのは避けてくれよ。マニーにとっては上司。桐生君にとってはスポンサー。私にとっては借金相手のトップなんだからね。」

 いつの間にか外にバルカーノが待っていた。

「どこから話を聞いていたのかしら? 」

「ブリギッテにマイクを仕掛けていたからね。全部聞いてたよ。」

「えぇっ!? 」

 ブリギッテがキョロキョロしながら衣服を叩く。

「おいおい、乱暴にしないでくれるか。ノイズが響く。」

 そう言いながらバルカーノはイヤホンを耳から外した。

「先生。いったい何処に着けたんですか? 」

「ボタンだよ。珍しくもない場所だろ? 」

 それを聞いたマニーがバルカーノを睨んだ。

「バルカーノ。どうやってブリギッテの服のボタンを替えたのか、じっくり聞かせて貰えるかしら? まさか、私の服には着けてないわよねぇ? 」

「あぁ。マニーに着けると後が怖いからね。桐生君は腕輪にバレそうだし。その点、ブリギッテなら大丈夫だと思ったのさ。」

「大丈夫じゃありませんっ! 」

 バルカーノに他意は無いだろう。けれど女子陣にはマイクを着けた事よりも、どうやって着けたかが問題だった。

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