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機装天鎧デバッガー  作者: 凪沙一人
11/30

11:関心・怪人と海神

 三人はレイカーとの挨拶もそこそこに船に乗り込んだ。内海を挟んでいるとはいえ、そう遠くもなく、すぐに船は到着した。

「お久しぶりです、マニーさん。」

 出迎えに来ていた人たちの中で、一際豪華そうな衣装を纏った男性がマニーに挨拶をした。さすがはグリシア共和国国立機械研究所の職員と云うところだろうか。

「お久しぶりです、殿下。」

「そちらが? 」

 殿下と呼ばれた男性が桐生の方を見た。

「えぇ。彼が機士の桐生。天鎧・機龍の装者です。」

 桐生の知らない造語が増えていた。機士というのは、この世界に転生してすぐにノゥレッジから聞いた。機龍というのは、今朝レイカーが言っていた。装者とは、天鎧を装着する者という意味だろうと解釈した。この世界に存在しなかった物に対して呼称は作らないと、やはり不便なのだろう。

「お初に御目にかかる。私はスミュルナ公国の太子、フェルトと申します。」

「スミュルナ? イズミールではなく? 」

「イズミールは七つの国から成る連邦なのです。一応、領主議会を通じてグリシアにお願いをしたのでイズミールからとなっているのでしょうが、海虫に苦慮しているのは港を抱えるスミュルナの漁師たちなのです。」

 フェルトは太子というが、偉ぶる事もなく桐生に接してきた。

「それで、どんな虫が出没するんだ? 」

「桐生、言葉遣いっ! 」

 反射的にマニーが窘めた。相手は一国の太子である。失礼があっては外交問題になりかねない。

「構わないさ。桐生、私の事もフェルトと呼んでくれていい。それで出没する虫なんだが、目撃情報がバラバラなんだ。細くて長い鎌のような腕だったという者もあれば、大きな鎌のような腕だが、葉っぱのようだという者。体は大きいが腕は小さいという者。どれが正しいのか… 」

「どれも正しいという事はないんですか? 」

 ブリギッテが何か思いついたようだった。

「というと? 」

 フェルトはブリギッテの意見に耳を傾けた。

「いろんな種類の虫が海の中に居るんじゃないかと。」

「それはないわ。」

 即座にマニーが否定した。

「国立機械研究所では、虫対策の機械開発の為に生態も研究してるの。複数種類の虫が共通の行動を示すなんて聞いたこと無いわ。」

「いや… 」

 桐生とフェルトが、ほぼ同時に声を発した。譲り合った結果、フェルトが話し始めた。

「虫が複数種類居ると云うのは、あり得るかもしれない。共通の行動というのは目的が同じなだけで協力してるとは限らない。」

「目的? 虫に目的ですか? 」

 するとフェルトは桐生と目を合わせた。桐生は頷くと警護の一人に近づいた。

「虫に命令する奴に、何らかの目的があるんだろ? 」

 すると、その警護兵は一瞬で衣装を脱ぎ捨てて飛び退いた。

「意外と潔いな。」

「ドウセ惚ケテモ無駄ダロウカラナ。」

「きゃあっ! 」

 思わずブリギッテとマニーは悲鳴を上げて尻餅を着いた。そこに居たのは二本の足で立ってはいるが、肩と横腹から各一対、計四本の腕を持ち、巨大な複眼を有していた。

「上手く化けたつもりかもしれないが、さっきから虫反応が煩くてね。」

「我々ハ、自ラヲ人間ト呼ビ、開発ノ名ノ元ニ自然ヲ破壊スル罪深キ罪来種ヲ淘汰スル為ニ、ヤッテ来タ。」

「こっちが罪来種なら、そっちは人に害を為す害来種だろう。貴様が頭じゃないだろうが、ここで一戦交えてみるか? 」

「ソンナ事ヲ言ッテイルト、マタ船ガ沈ムゾ? 」

「ちっ。フェルト。」

 桐生の声にフェルトが頷くと桐生は海に向かった。

「機装、天鎧っ! ノゥレッジ、転送アクアパーツっ! 」

 水中用モジュールを換装すると桐生はそのまま海に飛び込んだ。

「さて、君の相手は私がしよう。」

「人間ノ相手ナド、シテイル暇ハ無イッ! 」

 そう言うと桐生が向かった海域の方へと飛び去った。

「逃がしたか。さすがに私も空は飛べないからな。」

「ありがとうございました。」

 ブリギッテは深々とフェルトに頭を下げた。

「殿下、無茶を為さらないでください。」

「私は太子であると同時に、この国の騎士でもある。お嬢さん方を置いて逃げるわけにはいきませんから。」

 マニーの言葉にフェルトは毅然として返した。

「さて、今度は機士の出番ですよ。」

 三人は視線を海へと向けた。

「やっぱり、地上のようにはいかないか。」

 推進力は天鎧が補ってくれるが、戦闘の立ち振舞いはどうしても水の抵抗を受ける。海中にはブリギッテの予想通り三匹の虫が居た。見た目はミズカマキリ、タイコウチ、タガメなのだが何しろ大きい。特にタガメタイプの虫は他の二匹の倍はあった。腰の後ろの釵型のパーツを、柄の部分を伸ばして三叉戟にして戦う姿はさしずめ海神ポセイドンのようである。だが、迂闊に

雷戟サンダートライデントを放つ訳にもいかなかった。

「こうなりゃ俺の世界の昆虫と構造が同じ事を祈るしかないな。」

桐生は武器を三叉戟から剣に変形させると推進力を全開にして突っ込んだ。速度的に小回りは利かないが振り回すより物理的な攻撃力は上がる。狙ったのはタイコウチタイプ、ミズカマキリタイプの呼吸管だ。水生といっても虫である。呼吸を止められては為す術は無かった。

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