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魔物の微笑み  作者: 宮川ちい
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七話 藤子の秘密

真人(まさひと)藤子(ふじこ)優太(ゆうた)と共に食事を取っている。彼女がここに来てからの日課である。真人はここに来る前の藤子の生活は知らない。東京からやって来たと美加を通じて知った。其処(そこ)の小学校に通っていたらしいが仕事の都合でこっちに引っ越してきた。その際長年空き家だった(となり)に引っ越しそれから藤子と友人になった。東京育ちなのかなと思うほど(なま)りや方言がない。実は東京にも方言があるが今は(ほとん)(すた)れている。そんな事は真人は知らなかった。

「なあ。藤子。藤子って東京育ち。」真人は(たず)ねると彼女はくすっと笑った。

「ううん。違うよ。私のお父さんが転勤の多い職業なの。だからあんまり友達が出来ても直ぐ別れちゃうの。」藤子はそう答えた東京にいたといってもあまり長くいたわけではなかった。家を購入してしばらくして海外の方に両親が行ってしまったという。藤子の父と母には何度か会ったが何故か顔がボンヤリとしている。影が薄いと言うよりは顔に特徴が無さ過ぎるのか分からないが覚えていない。比較的覚えているものだが何故か藤子の両親は性格も(これ)といった特徴もなかった気が真人にはした。まるで、のっぺらぼうの様な顔しか浮ばない。後で両親の顔の写真を見せて(もら)おうと真人は思った。

「藤子の両親の顔を覚えていないって言ったら失礼だよな。」マサヒトは真人にしか聞こえない(よう)(しゃべ)っている。

「お前は覚えているのかよ。」真人は心の中で喋った。最近こういう事が出来るようになった。マサヒトは考えた。考えに考えて一言言い始めた。

「オレも覚えていない。」マサヒトは真人より記憶の自信があったが何故か彼も覚えていなかった。たった数ヶ月前会っているのに顔を覚えていなかった。

「何で覚えていないんだろう。」二人のマサヒトはそう(つぶ)いた。

「どうしたの。真人君。なんか表情暗いよ。」藤子の言葉で真人は我に返った。

「何でもないよ。」彼は笑って誤魔化(ごまか)した。言えない。藤子の両親の顔を忘れたなんて。真人はそう思った。それは失礼だと分かっていたからだ。

「なら良いけど。」藤子は心配そうに真人を見ている。最近エアメールで藤子と優太が仲良くやっているか元気でやっているかという内容が届いたと(うれ)しそうに話していた。そのエアメールは真人も見せている。写真も見たような気がするが、やっぱり覚えていない。真人はよっぽど印象に残らない両親なんだと変な解釈(かいしゃく)をした。それは失礼だろとマサヒトがツッコミを入れた。

藤子と優太は自宅に戻ると姿が変った。優太は白い子トラに藤子は赤眼赤髪になりレッドになった。豆柴の豆太は子狐の姿になり一人と二匹は元の姿に戻った。

「今日は特別異常はなかったな。」レッドはそう言った。望月藤子は仮の姿でレッド・ナイトが本当の姿である。真人とマサヒトが藤子の両親を覚えていなかったのは優太と藤子には両親がおり海外にいるという彼女が来る前に記憶処理班(きおくしょりはん)が夏に彼女が来たと記憶を植え付け実際12月にやって来ても8月に来たとばかりに(まわ)りが思い、周りに溶け込むように入ったのだ。両親の顔はあまり印象に残らないように頼んでおいたのだ。両親のエアメールも海外にいるモンスターバスターが手紙を書いてもらい両親が本当にいるように演出しておいたのだ。それはマサヒトもあまり変に思わないように極秘(ごくひ)に行われた。そのせいか初めて来たときにはもう望月藤子は其処におり生活していたと誰も疑わなかった。真人達をを(だま)すのは心苦しい事もあるが任務を遂行するための手段なのだと彼女は割り切っている。でも、もしそのことに気が付いたら何て言うのだろうとレッドは心配だった。今と一緒で藤子と呼んでくれるだろうかと考え込んだときもあった。いずれ覚醒したらばれてしまうので何時レッドだとばれても、ちゃんと話すつもりだった。

「任務とはいえ真人達を騙すのは心苦しいよな。」レッドはそう言うとコンコンは言い始めた。

「しょうがないコンよ。僕らは特殊(とくしゅ)テロ特別調査課(とくべつちょうさか)でその決まりで他の人に正体がばれるのを極力避けているコン。」コンコンはそう言って励ましている。特殊テロ特別調査課とは地球でホロンド人や魔物が殺人やホロンドでテロかどうか見極(みきわ)め解決する課である。其処にレッドは働いている。コンコンが言いたいことは分かったがやはり罪悪感はぬぐえなかった。翌日は土曜日だった。コンコンは豆太になりレッドは藤子になって早朝散歩に出かけた。(ほとん)ど車や人がおらず静まりかえっていた。そして空気が新鮮だった。たまに散歩に出かける犬やその飼い主に会う事もあった。真人とマサヒトはそれぞれシアターで寝ている。背中に違和感を感じ真人が起きるとシアターの中にいた。マサヒトと初めて会ってからは、たまにシアターで起きる事もあった。

「何だ。マサヒトの奴、夜、外に出たのか。」真人は呟きスクリーンの中に入っていった。目が覚めると5時であった。未だ5時かと、また寝始めた。未だこの時藤子がレッドだと気付いておらず、まさか隣に住んでいるとは予想もしていなかった。また真人は夢の中へ入っていった。マサヒトもすやすや寝ている。


***********************************************


その日の夕暮れ真人は雅人と圭一クラスメイト達と共にサッカーをしている。そろそろ終わりにしようかとみんな言い出した。最近この公園周辺に魔物が居るため真人はみんなが巻き込まれないように真っ先に言い出した。圭一も魔物と遭遇(そうぐう)した事を思い出した。そういえばあの時、気が付かなかったけど服まで直ってビックリしたんだよなと入学式の夕方の事を思い出した。雅人も終わりにしたかった。三人が帰ろうと言ったのでクラスメイト達は先に帰った。サッカーボールは真人の物だったので草むらに入った。満開の桜の下に藤子が居た。マサヒトは魔物が近くにいる事に気付き入れ替わろうとしたが間に合わないと思った。その時藤子の髪と眼が赤くなってレッドの姿になった。ソードで振り向き様に魔物を切った。魔物は倒れた。しばらくして、レッドは真人に気が付いた。

「真人。」レッドはそう言うと真人は我に返った。

「レッド。どういう事なんだ。藤子は。藤子は何処行ったんだ。」真人は混乱している。去年8月にやってきた望月藤子が確かにいたのだと思ったが去年8月に転校してきた人に望月藤子という子はいなかった。何時(いつ)来たんだと必死に思い出そうとしている。去年の12月の初め頃夕暮れの八幡(はちまん)神社に狐のお面を付けている少女が居た。

「だーれだ。」少女はそう言うが真人は何故か思い出せない。誰だっけと彼が思っていたとき少女はお面を外した。

「もう。真人君もう忘れたの。今年8月に転校して来た望月藤子じゃない。」そう少女・・・いや藤子がそう言った。それが初めて藤子にあった日だった。それ以前は間違いなく、いなかった。

「どういう事なんだ。」マサヒトは真人の口を借りて喋り始めた。

「極秘に君たちの記憶を一部変えたんだ。俺が急に現れても怪しまれないように。」レッドはそう言って仕事が終われば架空(かくう)の人物として居なくなると話した。現にそれは今回の任務が初めてというわけではなかった。

「もしかして初めてあった日にか。」真人も質問した。

「いや。もっと前からだ。事が事だけに慎重(しんちょう)に慎重を重ねて少しずつ植え付けたんだ。」レッドはそう答えた。最初二人は何で騙していたんだと思ったがよく考えてみるとずっと警護(けいご)していたんだという何処(どこ)かほっとしている。

「ごめんな。仕事の都合とはいえ、ずっと騙して。」レッドはそう(あやま)った。レッドはやっと対等に話が出来ると思った。この日から真人と一緒で二人の時しかいないときはレッドの口調になったが真人はレッドがこういう仕事もしていた事も知り、もしかしてメシアに覚醒(かくせい)したら居なくなるんじゃないかと不安が残った。

日曜日の夕暮れ時に公園から殺気(さっき)が強い魔物の気配を感じマサヒトとレッドがやってきた。真人はシアターにおり二人の様子を見ている。今回は死んでもこの世に(とど)まるスカルソルジャーだ。彼自身何故この世に留まるのかもう覚えていない。何者だったかも分からない。ただずっと無念の気持ちを持ち、鳳凰(ほうおう)の力を欲している事は覚えている。

「鳳凰の力が欲しい。永遠の命が欲しい。」スカルソルジャーはかたかた骨をならしながらそう喋った。自分の姿も分からないようだ。

「それは今のお前に必要ない。」レッドはそう言って剣を出して(かま)えた。その後直ぐに攻撃した。一回切ったが死なない。マサヒトも攻撃をふるうが効果はない。

「一回死んでいるから剣じゃ効果ないな。」レッドはそう呟いた。スカルソルジャーの回復力は半端なく強く直ぐ元の姿に戻った。

「鳳凰の力。」かたかたと骨をならしながらスカルソルジャーは話している。その時ドンという銃声がなった。黒翼(こくよく)がショットガンをアンデットに撃ってきた。

「大丈夫か。」黒翼はそうマサヒトに言い始めた。(だれ)だろうとマサヒトが思うとレッドが相棒だと説明した。

「黒翼だ。今の魔物はアンデット系だから聖水かお札が必要だろうな。」黒翼はそう言い始めた。その言葉通り倒れたスカルソルジャーは復活した。

「きりがないな。」マサヒトはそう言って大剣を構えた。レッドはあっと言って(かばん)の中からお札を出したホロンドのお札なので何て書いてあるのかは真人とマサヒトは解らなかった。持っていたのを今さっきレッドは思い出した。そしてスカルソルジャーにお札を付けた。

「お前はもう死んでいるんだ。だから例え鳳凰の力を(もら)っても意味がないんだ。」レッドがそう言ったとたんスカルソルジャーはバラバラになった。頭蓋骨(ずがいこつ)の眼の穴から涙らしき液体が流れた。

「なあ。鳳凰の力って何なんだ。」マサヒトは尋ねた。冬子がレッドに鳳凰族ねといった事と関係しているんだろうかとマサヒトは思っていた。

「さあね。でも一つ言えるのは鳳凰の力はさっきのアンデットが思っている力ではないということだよ。」レッドは口を(にご)しつつ説明をしている。死体処理班が来て魔物の死骸が撤去していった。マサヒトは真人と入れ替わり姿も真人になった。

「何で死んでも欲しかったんだろうね。」真人はレッドとマサヒトにそう言った。

「さあ。大切な人に渡す予定だったのか。自分で使うつもりだったのか今となっちゃ分からないな。」レッドはそう言った。恐らくあの姿になればもう忘れていただろう。そのことはレッドは言わなかった。夕暮れて辺りはどんどん暗くなってゆく。レッドは藤子の姿になり。真人と家路に向かっていった。

月曜日の朝、速見圭一(はやみけいいち)は今日も一番乗りで学校の中へ入った。静かな教室は勉強をするには最適だった。そんな彼に一通の手紙が下駄箱に入っていた。朝に手紙が入っていたという事は金曜日にしかも圭一が帰った後に入れたものだろう。何だろう(これ)と思いつつ開けるとラブレターである。「速見圭一様へ。初めてあったときから好きでした。月曜日の5時に今は使われていないマネキン工場へ来てください。」そう手紙には書かれていた。あの工場かと圭一は思った。彼も行った事があったが不気味なところだった。しかし女の子からのラブレターで浮かれているのもあり、じゃあどんな子なのか見に行こうと思っていた。その手紙を鞄の中に入れた。鞄に入れたところを藤子と真人は見た。教室に一緒に入った。

「おはよう圭一。」真人はそう言うとおはようと圭一は答えたが上の空だった。何かあったのかなと藤子と真人は思った。授業中もどんな服着ていこう。どんな子がラブレターを送ったんだろうなど夕方にいるラブレターの送り主の事を考えた。夕方になり結局制服で行く事にした。あまり時間がないという事もあり急いで工場に来た。居たのは金髪青眼の美少女でゴスロリを着ている。女吸血鬼でもあったがそんな事実を知らずに思ったより綺麗な子だったので圭一は一瞬で恋に落ちた。

「初めまして私はルナ。」流ちょうな日本語を話している。圭一はこんな可愛(かわい)い子が彼女なんてと(うれ)しがっている。近くにミイラ化した死体があるが全く気付いていない。

「圭一です。」そう圭一は挨拶をした。ルナは圭一にある事を言った。

「実は私捜し物があるんだけど邪魔(じゃま)する人がいるのよ。」誰だろうこんな綺麗な子の邪魔をするなんてと圭一は思った。

「何を探しているんだ。」圭一は質問した。

「特別な物よ。でもブランド品とかじゃ無いから安心して。」そう、圭一に言い始めた。何を探しているんだろうと思いつつその日はそろそろ暗くなるから帰りましょうとルナが言ったので帰る事になった。ルナは工場に戻り圭一は家に帰った。翌日学校で彼女が出来たと圭一が藤子美加(みか)雅人(まさひと)真人に話している。

「えっ。もう彼女が出来たのかよ。」雅人は言い始めた。

「早いね。」美加もそう言って驚いた。

「この中で一番早く恋人が出来たんだね。」真人はそう言うと、圭一は意外という表情をした。

「あれ。眼鏡の真人と藤子と付き合っているんじゃないのか。」圭一の何気ない言葉に真人は真っ赤になり美加は動揺した。実は真人の事が好きだったのだ。

「違うよ。」真人は真っ赤になりながら否定した。まさか異世界のテロリストに狙われていてその警護で一緒にいるとは言えなかった。

「本当に。」圭一はそう言うと藤子もホントだよと答えた。

「その子は何処の学校なんだろう。外国人の女の子なんてこの学校には居ないし。」美加はそう言った外国人の少女はこの学校には居なかった。

「そういえばそんな(うわさ)は聞かないな。」真人も言い出した。そういえば何処の学校の子なんだろう。()だ聞いてなかったなと圭一は思った。よく外国人の少女が怪しまれずに下駄箱にラブレターを置いたのかと変だと思ったが圭一は今日会う約束をしたのでその時聞けばいいかと考えた。藤子は心配そうに圭一を見ている。吸血鬼事件もあり外国人の少女が怪しまれずに圭一の下駄箱にラブレターを入れるなんてと藤子は考えている。実は圭一がラブレターを開けているのを真人と共に見ている。その時はラブレターだとは思わなかったので何かあったんだろうと思っていたが今になって考えるとそれは魔物と接触(せっしょく)しているんじゃないかと少し彼女は思っている。

「圭一の恋人ってどんな人なんだろうな。」帰り道に真人は藤子に話しかけた。この時は藤子もあまりよく分からなかったので、さあと答えた。

「外国人か。日暮(ひぐらし)中の方じゃないか。」そう彼女は答えて一緒に帰った日暮中にも居たのかなと真人は思うのだった。



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