五話 子守歌
銃声がなったので振り返ると冬子白い着物が赤く染まっている。
「大丈夫か。」レッドは冬子に言い始めた。その姿が小太郎に被って見えた。
「小太郎。」そう冬子は呟いた。小太郎って誰だと思いながらレッドは冬子に応急処置をした。
「死ぬんじゃない。生きろ。」レッドはそう言った。
「小太郎。お母さんもう駄目みたい。」そのことでようやく小太郎は冬子の息子だと気づき今までのことは小太郎のためだと理解し涙が出た。
「そんなこと言わないで。ボクは未だ母さんがいないと駄目なんだ。」レッドは小太郎として冬子に接した。生きて欲しい。どんなことがあってもそうレッドは思ったが冬子はにっこり笑った。
「大丈夫よ。小太郎の好きな子守歌を歌ってあげるから。」そう言って冬子は子守歌を歌い始めた。真人と雅人も知ってる曲だった。ねんねん。ころりよ。おころりよ。坊やはよい子だ。ねんねしな。そう歌い上げるとにっこりと冬子は微笑んだ。
「ありがとう。側にいてくれて。」冬子はそう言った。それは小太郎としていったのかレッドとしていたのかはもう分からない。そのまま冬子は息を引き取った。マサヒトは犯人を追いかけたが途中で巻かれてしまった。フルメット姿に黒のライダースーツ手袋をした男だ
「くそっ。見失った。気配も消してやがる。」マサヒトは舌打ちした。その頃小太郎は母の死を予感したのかボロボロ泣き出した。人間で言うと5歳ぐらいの姿だ。
「お母さんに会いたいよ。」そう泣き続けた。小太郎には父親がいなかった。フィルダで仕事中に死んだらしく母の手一つで育てられた。父の顔はもう覚えていない。身寄りがいなくなったのだ。去年フィルダに捕まり母と離ればなれになった。最後に見た母は逃げてと言う悲鳴にも似た声を出して男達に捕まった。今考えるとフィルダの人間だった。小太郎は病気で床に失せていた。病院の中で母のことを聞いた
「今お母さん元気かな。」お見舞いに来ていた冬子の部下は冬子が亡くなったことを伏せていた。
「元気だよ。」そう言って部下らは微笑んだ。
「会いたいな。ボクもう少しでお星様になっちゃうから。」小太郎はそう言った。実は小太郎は小児癌で末期の手遅れ状態だった。
「また子守歌聞きたいな。」小太郎はそう言って眠りについたが二度とその目が開くことはなかった。小太郎は母を見つけてお母さんと言って抱きついた。
「小太郎どうして此処に」そう言った後で冬子は小太郎を抱きしめた母と子は死後の世界で再会をした。
数時間後冬子を殺した犯人は遺体で見つかった。顔がめちゃくちゃにされて判別できない上身元になる所持品もない。さらに指紋も無いという始末で何者なのか全く分からない状態だった。なのでDNA鑑定待ちである。おそらくだがクローン人間で判別できない状態の死体だろう。今レッド達はホロンドのアメミスにあるモンスターバスター本部にいる。マサヒトは此処なら安全だろうとシアタ-から出る方法を教えた。
「スクリーンからで入り自由だ。」マサヒトがそう言っていたので真人はスクリーンに入った。初めてマサヒトと対面した。
「初めましてオカダマサヒトだ。今日からよろしく。」そう真人に話しかけた。えっ。外国人。真人はそう思った。てっきり日本人の顔をしていると思っていたので驚いた。
「そういえば鏡見てなかったからな。驚くのは無理ないか。」マサヒトはにっこり笑った。
「オレはシアターに戻るけど後のことはよろしく。」マサヒトはそう言って真人と逆の方に進み始めた。レッドは上司であるカミラシ・スフォンに怒られていた。茶髪にメガネをしている美男子だ。
「今回みたいに重要参考人が殺されるというのは重大な失態です。」スフォンはそう言った。カミラシさんの言うとおりだとレッドはしょんぼりしている。不本意とはいえ殺されてしまったのは自分の責任だと彼女は思った。レッドはしかられた後真人達がいる職場に来た。雅人と真人はココアを飲んでいる。
「あれ。真人外に出られたのか。」レッドがそう言うと外の出方を教えてもらったと真人は答えた。
「大丈夫か。しかられたみたいだけど。」マサヒトは真人の口を借りて喋った。えっ。こんな事出来たのとレッド、真人、雅人は思った。
「重要参考人を助けられなかったからな。」レッドは暗い顔をしていた。三人はタクシーに乗り真人雅人は目隠しをされて外しても良いぞと言われたときにはもう夜闇市の森林公園だった。帰り道、真人はマサヒトに話しかけた。
「ところでマサヒト今まで存在に気付かなかったけど、どうやって出てきたんだ。」真人はマサヒトに尋ねた。
「寝ているとか気絶中に出てきた。その後ちゃんとお前を体の方に戻していたからな。だから気付かなかったな。」マサヒトは答えた。そりゃ気付かないわけだと真人は苦笑した。3月になり卒業式になった。日暮小学校に来るのは最後である。6年間の思い出がよみがえってきた。其処には日常の集まりがあった。
「おーい。真人記念写真取ろうぜ。」中川はそう言った。彼は真人等と違う中学日暮中に通うことになっている。ひとまず記念写真を撮っている。美加はやっと真人と雅人仲直りしたのでほっとした反面なんか置いていけぼりになった気分だ。原因は何だったのか結局分からなかった。二人は些細なことだったと言っていたが美加は気になっていた。雅人の弟草太に聞いても分からなかった。レッドが現れた。式典が終わり服も普段着である。
「最近魔物と遭遇してないか。」彼女は心配している。
「大丈夫。最近襲撃が来ない。」真人はそう答えたがマサヒトは違う答えをした。
「前より魔物が多くなった。それが心配なんだろ。」マサヒトの言葉に真人は驚いた。今のところ彼が遭遇していないだけで増えていたのだ。
「最近ホロンドのアメミスでこの街が注目を浴びている。殆どが観光だが仲には悪さをする奴も出てくる。」レッドはそう言って注意を呼びかけた。昔から文化面で日本に観光に来る魔物や人がいて東京では此が頻繁だった。しかし山神県夜闇市が注目を集めたのは何処で調べたのかメシアがいるかも知れない町と書かれていた。一様訂正して貰ったが口コミなのかぞろぞろ夜闇に来ている。
「へえ。この街がね。」真人はぴんと来なかった。他の山神県の都市で大きいのは夜闇市と月影市位で他の所は田舎である。それに他の県と比べて特別優れた所があるわけでもない。
「物好きだな。オレ等がいるだけで来るなんて。」マサヒトも同じ考えのようだ。ちなみにマサヒトと真人は未だ力が不安定でそれに引き寄せられる魔物も何匹かマサヒトは見かけている。
「未だメシアの力が安定してないんだ。しばらくは様子見だな。覚醒すればマサヒトと同じ姿になるって予言されているんだぞ。」レッドの言葉に真人とマサヒトは驚いた。
「なにそれ。」真人とマサヒトは同時に叫んだ。予言。そんなのがあったのかと初めて二人は知った。予言によると金眼金髪の少年でクラスでもトップの成績を持ちスポーツ万能と書かれていたようだ。
「当てはまらないな。」マサヒトは答えた。真人は平均的な成績で平均的な運動神経おまけに金眼金髪じゃない。
「マサヒトなら当てはまるかも。」真人の言葉にマサヒトは授業を受けたこと無いからなとテレながら笑って答えた。
「しばらく大丈夫じゃないか。」マサヒトは言い始めた。確かに、しばらくバレないが油断は禁物だとレッドは思った。
「でも、ずっと此処にいると、ばれるかもしれない。逃げると言う選択する必要がある可能性があるぞ」レッドは現実を述べた。あくまでレッドは真人とマサヒト雅人の護衛をしているため美加を守るのは含まれていない。だが、真人等が一緒ならば守るつもりだ。
「これから大変だぞ。ばれないように行動してくれよ。」彼女はそう話した。大丈夫だよとマサヒトと真人は何処かで思っている。大丈夫かなとレッドは思っている。不安を残したまま三人の戦いは始まったばかりで真人とマサヒトはメシアの自覚が足りなかった。
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真人はレッドの年齢が気になった。見た目は高校生ぐらいだが本当はどうなんだろう。だけど女の子に歳を聞くのは失礼だよなと思い、なかなか聞きづらい。マサヒトはストレートにその話題に入った。
「レッドって歳いくつ。」マサヒトは言うと真人は失礼だろと思いつつも耳を傾けている。
「別に何歳でも良いだろ。未だ未成年だって思ってくればそれ良い。」彼女はそう答えた。どうやら歳は教えて貰えそうもないと気づきその話題から変えた。歳の話をしているときはむっとしたが話題が変るとにこやかになった。何故歳は教えてくれなかったのか分からないがあまり触れてはいけないようだ。
「お前らの入学式は何時だ。念のため相棒と一緒に警備しておくから。」レッドは入学式のことに話題を変えた。
「たしか4月8日だったよな。」マサヒトは真人に話しかけた。確かそうだったと思うと真人は言った後相棒って誰なんだろうと少し気になった。未だ見たこと無かったので男か女か知らないのだ
「相棒っていたのか。」マサヒトは真人の口を借りて喋った。
「ああ。普段は茶髪の雅人の方を警護している。」レッドはそう答えた。そんな話、雅人から聞いた事無いと真人とマサヒトは思った。恐らく極秘にあっているんだろうと思っている。真人は今日中学校に行く道のりを憶えるために来ている。途中踏切があり、そこで彼女と出会った。昼間には魔物が来るわけではないようだ。人間の方が多いからなとマサヒトは答えた。
「しかしマサヒトって茶髪の雅人によく似てるよな」レッドはそう言った。
「確かに他人のそら似以上似ているな。」真人はそう言うとマサヒトはあまりぴんと来ない様だ。そんなに似ているのかなと一人マサヒトは呟いた。世の中そっくりさんが、三人いると言うが一人組目が雅人とマサヒトの組み合わせだと真人は思った。
「兎も角、警護しておくから安心して式に臨めよ。」レッドはそう言って去っていった
「中学生か。規則とか厳しいのかな。」前に近所の中学生が中学校は小学生より窮屈な規則があると言っていたのを真人は思い出した。
「さあ。」マサヒトは答えたが彼は内心真人のことが羨ましく思っている。外で遊んだり勉強したり友達がいたりその様子をずっと一人で見ていた、最近真人がマサヒトの存在に気付いてからはずっと話してみたかった事を話している。前より寂しくなかった。
「なあ。マサヒト。ずっとあのシアターに一人でいたのか。」真人は気になっていた事を話した。
「殆どずっと一人だ。たまに来客は来るが映っているのがあまりにも平凡だから直ぐ帰っちゃうな。」マサヒトはそう言った。シアターの外の人だろうか。心の中だよな。あそこどうなっているんだよ。益々シアターって謎の場所だと思っている。
「そういえばレッド何をしに行ったんだろう。」マサヒトは呟いた。レッドは冬子の死んだ場所に花を手向けていた。
後で小太郎の事を調べたがもう亡くなっていると報告を受けたのであの世で幸せにと言う思いでその場を後にした。桜の花もほころび始め夜闇市に春がやってきた。
「もうこんな季節か。」そうレッドは呟いてサクラを見ている。もう桃や梅は咲いている。
「お母さん。待って。」子供と母親は仲むつまじく一緒に歩いている姿が見えた。お母さんか。レッドは暗い表情をした。そして町の中に消えた。雅人はまた家庭教師を付けている。新しい人で今までの家庭教師は大学生で別の就職先を見つけたので辞めたらしいと母親から聞いた。今度はプロの人を選んだらしい。小学校のおさらいをしている。
「小学校の授業は中学高校大学の基礎になるから、ちゃんとやるように。」背の高い外国人のような顔をした美青年が雅人にそれを言って復習をさせている。今度の学年トップを目指して高校に私立の月影学園に入ろうとしている小中高の一貫校であったが高校でも受けられるところだ。
真人家に帰ると藤子がいた。
「おかえり。」そう言ってココアを飲んでいる。彼の母親がいない事に気付き母さんはと藤子に尋ねた。
「商店街に買い物をするって言っていたよ。」藤子は答えた。ああ。商店街か真人は思った。マネキン工場の途中に行く道に商店街があり、いつもそこで真人の母友子は買い物をしている。今じゃ顔なじみになっており、たまに真人も商店街の人に声を掛けられる。そこで呼ばれているのがマー坊というあだ名だ。
「よっ。マー坊。今日は一人で買い物かい。」こんな感じで声を掛けられる。美加の母も顔なじみもいるが幼馴染みもいるらしい。美加の母親と父親は生粋の山神県人であり、そのせいか美加は他の県の事はあまり知らない。けれど夜闇市や月影市のことは知っている。しばらくしたら友子は帰ってきた。
「今日はカレーよ。」そう言って友子は買ってきた品物は冷蔵庫に入れている。
「藤子ちゃんはお手伝い頼むわね。」友子はそう言うと藤子と共にカレーを作り始めた。その時わんわんと犬の鳴き声が藤子の家からし始めた。ペットの豆太で豆柴なのでと名付けたらしい。お利口な犬で藤子の言葉を理解しちゃんと待ても出来る。美加も良く、豆太を触らせてと言って触っている姿をよく見かけている。今日はやけに豆太が吠えている。いつもなら吠えないのにと藤子は気になり家にいて見ると見知らぬ男が吠える豆太を追い払おうとしていた。
「へへへ。お嬢ちゃんこんにちは。」そう言って男はそそくさと逃げていった。藤子は不安になり家の中を調べたが幸い何も盗られていなかった。
「良かったわね。何も盗られなくて。」友子は後でそう言った。
「豆太のおかげです。いなかったら入られたかも。」そう藤子は言い始めた
「姉ちゃん。なんかあったの。」優太は帰ってきてキッチンに来た。豆太はご褒美にクッキーを貰いむしゃむしゃ食べている。夜になり眠る時感になるとマサヒトがスクリーンに入ってきて代わりに真人がシアターを見ている。こうして真人とマサヒトの共同生活とテロとの戦いに巻き込まれ、やっと一息ついたと思われたが冬子との戦いは未だ序章に過ぎなかった。月が大きく見えた。
やっと一章終わりです。第一部は長いので終わりまで引き続き宜しくお願い致します。