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魔物の微笑み  作者: 宮川ちい
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九話 ルナの策略

グダグダの戦闘回です。

レッドとマサヒトは圭一を追っていた。足音が速くマネキン工場も空間が広くねじ曲げられている。二人は人間の限界スピードで走っているが、なかなか圭一は見えない。

「おかしいな。圭一(けいいち)は普通の人間だからそんなに走るスピードが速くないのに。」マサヒトはそう言うとレッドも同意見だ。

「いったん止ろう。」レッドはそう言ってマサヒトとレッドはいったん足を止めると足音がしなくなった。歩くと足音がする。

「追いかけの魔法だ。追いかけると音かなって止めると止る魔法だ。」そうレッドは説明をした。今の魔法だったのかとマサヒトは呟いた。

「完全に圭一を見失ったな。」レッドはそう言い始めた。そうだなとマサヒトもため息をついた時魔物の姿が現れた。気配がしなかったので不意をつかれた。爪で切り裂こうとする魔物に間一髪でよけた。そしてソードと大剣を出して構え魔物を切ったが感触はしなかった。

「マサヒト。(これ)は幻影だ。」レッドのその言葉に一回攻撃を止めたら怪我をした。幻影に違いなかったが攻撃が当たると怪我はするようだ。

「相手に攻撃しても風を切っているみたいに感触がしない。」マサヒトはそう言って魔物に攻撃をした。幻影だとバレテしまうと直ぐに消えてまた新しい魔物が現れた。その繰り返しが30回を超えた。流石にマサヒトとレッドは(いら)ついている。攻撃しても感触のない相手を20分ぐらいやっていたような気がした。

「いい加減姿を現せ。」レッドは怒鳴りながら近くにいると思われる敵に言い始めた。ルナは動く事はなく様子を見ている。

「行かなくて良いのか。」圭一はそう言うとルナは今は様子を見ていましょうと話し動く事はなかった。流石のレッドとマサヒトはイライラしている。いつの間にか別の出口付近に着いていた。レッドは一服するぞと言い始めた。何故一服とマサヒトは思ったがレッドはお茶のペットボトルを出し一本マサヒトに渡した。彼と飲み始めた。

「魔性の物は大抵一服すると出てこなくなる。」レッドはそう答えた。つまり急げば急ぐほど相手の思うつぼというわけである。余裕を持てば見える事もある。本当はタバコの匂いが嫌いな魔物も多くたばこを吸うという手もあったがレッドとマサヒトは未成年で吸う事は許されないためお茶だった。一服した後幻影は出てこなかったがルナの姿も確認できなかった。今日はここまでだなとレッドは藤子の姿になった。マサヒトも真人(まさひと)と入れ替わり家路についた圭一は日が暮れて藤子と真人がいる事に気が付かなかった。そして彼も今日は家路についた。彼そっくりの弟が母さん兄貴が帰ってきたと報告している。

翌日圭一は何事もなかったかのように一番乗りで教室に来た。昨日は両親に散々怒られたので正直へこんでいる。其処に藤子と真人はやって来た。

「おはよう。今日も早いな。」真人はそう言って圭一に挨拶している。

「何時に来ているの。いつも早いけど。」藤子の質問に6時半ぐらいかなと圭一が答えた。彼は早起きでその代り夜は早く寝ている。見たい番組は録画し朝に見ている。今のところ圭一の首筋に()まれた後がなかった。でも何時噛まれるか分からないので油断は出来ない。美加(みか)雅人(まさひと)がやってきた。

「ふーちゃん。マー君歩くのが速いよ。」美加はそう言った。四人で登校してきたが藤子(ふじこ)と真人は歩くスピードが速かった。真人は自覚が無かったので逆に美加と雅人に(たず)ねている。無自覚に藤子と同じスピードで歩いて後ろにいた美加と雅人が追いつけずにいた事に真人は気が付かなかった。そういえば藤子って歩くの速かったんだよなと真人は改めてそう思った。

「おはよう。一昨日は心配掛けてごめん。大事になっているとは思わなかったからさ。」圭一は四人にそう言って謝った。

「大騒ぎだったぞ。警察を呼ぼうかっていう話にもなったしさ。」雅人はそう言い始めた。

「でも無事で良かったよ。」真人は圭一の首筋に傷がなかった事を含めて言い始めた。ルナはその頃夢を見ていた。大分昔の出来事の夢だった。村では豊作の祭りをしている。大人はビールを飲み子供達は野山を駆け回っている。その中に子供の頃のルナがいた。決して豊かではなかったがそれなりに楽しい子供時代だった。

「あんまり遅くに帰ってくるなよ。吸血鬼に噛まれてしまうぞ。」そうルナの父親は幼い彼女に言い始めたこの村には吸血鬼がいるという伝説があった。その時はいつもの(おど)し文句かと思っていた。まさか自分がなるとは当時の彼女は思っていなかった。

「心配しなくても早く帰ってくるよ。」幼いルナはそう言って友達と遊んでいた。5~6歳の頃のルナは木登りが得意で良く木の上から村を見ていた。そこで彼女は目を覚ました。とても懐かしく感じている。人間だったらもう亡くなっている歳である。吸血鬼になってから村を出て一度も故郷に帰っていない。友達の墓参りも一度も行っていない。もう人間だった頃の彼女を知るものはいない。懐かしくて涙がこぼれた。もう一人でいる事は慣れたがやはり寂しく思っている。あんな事がなかったら今頃幸せな生活を送り永遠の夜をさまよう事もなかっただろう。吸血鬼から人間に戻りたいと(まで)は思わない。どうしても鳳凰の力が欲しかった。ロケットペンダントを見ている。その姿は何処かもの悲しそうであった。

この日の放課後藤子と真人は圭一に尾行している。圭一はそれに気が付いていない。速くルナに会いたいという一心で家には戻らずルナのいるマネキン工場に圭一は向かっている。本当はスマホででルナにメールを送りたかったが今時珍しくスマホやパソコンもないと答えていたので直接会うか手紙でないとコミュニケーションが取れない状態だった。そういえば家の電話番号聞いてなかったと思いながら歩いている。真人は尾行する事自体罪悪感を感じている。小声で止めようよと真人は言ったが藤子は何時圭一が吸血鬼に噛まれてもおかしくないんだぞと答えて尾行を続行した。魔物と接触しているのは間違いないが吸血鬼なのか未だ分かっていない。本当に吸血鬼なんだろうかが真人の言い分だ。マサヒトの方は吸血鬼の方が濃いと思っている。最近夜闇市の中でも森林公園の吸血被害が多発しているのでその周辺に住んでいると考えるのは妥当だろう。距離的には30分位掛かるが歩くのにはさほど疲れない距離だ。自転車ならもっと速いだろう。持っているかは疑問だ。実際ルナは自転車が乗れない。そんな事実はマサヒトは知らないが読みは当たっている。藤子と真人はマネキン工場に来た。中に入る際藤子はレッド姿に真人はマサヒトと入れ替わり彼の姿になり中に進んでいった。相変わらず薄暗い場所だなとシアターを見ている真人は思った。この日もニセモノの魔物が現れ攪乱されたあげく又圭一を見失った。明日は土曜日で真人は午前中美加と雅人と共にデパートに行く予定が入っていた。藤子は行ってきなよと言い始めた。

「圭一は午前中に会いに行かないだろう。」藤子はそう言い始めた。念のため午前中は彼女一人で見張ると話した。彼女の言う通りルナは午前中は予定があるから夕方に会いましょうと圭一に言っていた。魔物は朝と昼は動けない状態になるので午前中に来られるのは不都合だった。

「そうなのか。」圭一はルナが午前中に予定があるんじゃ仕方ないよなと思った。その予定を聞かなかった。聞いても友達との約束だと言われそうだったから言わなかった。後で言えば良かったと小さな後悔したが遅かった。もう家の中には戻っていた。金曜日の夜は映画をテレビで見る習慣があるのでこの日だけは圭一は遅く寝る事にしている。ルナも映画を見ているのかな。裏番組のサスペンスかドラマを見ているのかなと圭一は思っている。圭一はルナがテレビを見ていると思っていたがルナはテレビを見ない派だった。情報源はラジオのみである。彼女はラジオを付けてキャンドルの炎で明かりを照らしている。電気の証明は彼女にとってはかなり眩しく感じていたのでアロマキャンドルをいつも使用している。


土曜日になり真人は久しぶりに幼馴染み二人との買い物をしている。彼はロックのCDを買った。この曲は途中で恋人が死んでしまう話で何故か惹かれた曲だ。

「そんな暗い曲買ったのかよ。」雅人もこの曲を知っており彼は別のポップスを買っている。

「良いじゃない。私この曲好きだよ。」美加はそう言い始めた。そうかなと雅人は言い始めた。メロディーが綺麗でファンの子も何人かいたが女子が大半である。美加も違うCDを買った。三人は本屋に入っていった。美加は漫画二冊と小説一冊雅人は漫画二冊のみ買い、真人は漫画一冊とマサヒトからのリクエストで小説を一冊買った。

「珍しいな。真人が小説を買うなんて。」雅人はそう言った。漫画やゲーム攻略本以外雅人の前では買った事は初めてである。

「オレだって買うときがあるよ。」真人はそう答えた。カフェで真人はオレンジジュースを飲み美加はカフェオレ雅人は抹茶オレを飲んでいる。その姿を白いトラが見ていたが周りの人は全く気付く様子もない。人間に見えるらしく注文したプリン・アラモードが出てきた。それを食べた後真人達も移動した。美加達と別れた後で白いトラの存在に気が付いた。魔物だと思ったが不思議と恐怖を感じなかった。

「君。迷子かい。」真人は尋ねると違うよと白いトラは答えた。

「レッドから話を聞いてどんな子か気になって見たくなって。」白い虎は話している。レッドの仲間かと真人はほっとした。

「名前は。」真人は尋ねた。白虎と白いトラは答えた。

「まんまだけどこの名前気に入っているんだ。」白虎はそう答えた。その話をしている間にレッドは来たが真人は気付かなかった。楽しそうに話しているので、今、入るのはまずいかなと彼女は思っていた。

「あっ。レッド。」白虎も話で夢中で気付かなかった。夕方になり圭一はルナの所にやって来た。藤子と真人は彼を追ったがマネキン工場のはずなのに学校になっていた。

「テレポートだな。」レッドがそう言ったとき放送が流れてきた。

「モンスターバスター達。鳳凰の力を渡して貰おうか。」圭一がそう言ったので放送室にいると気付きレッドとマサヒトは放送室に行った。

「放送室って何処だ。」マサヒトは真人に尋ねた。

「確か職員室の近くだったと思うけど。」真人は答えた。未だ入学して間もないので良く位置は把握していなかった。マサヒトとレッドは急いで放送室に来たが、もう圭一はいなかった。レッドとマサヒトは二手に分れて探す事にした。

「大丈夫か。二手に分れて。」マサヒトはレッドに言い始めた。

「目的は鳳凰の力だ。つまり狙われているのはオレだ。だからお前は大丈夫だと思う。」レッドはそう答えた。益々(ますます)大丈夫かなと思ったが二手に分れて探す方が効率が良かったのでそうすることにした。マサヒトは一年の教室を見たが圭一とルナの姿はなかった。教室にいるって訳じゃなさそうだなとマサヒトは思った。


***********************************************


マサヒトは圭一の気配が体育館にあることに気付き急いで体育館に向かっていた。レッドは何故か気が付かず2階に上っていた最初理科室を見るが誰もいなかった。無人の理科室は怖かったが誰もいなかったので後にした。隣の理科準備室にも誰もいなかった。

「こっちに居ないとすると音楽室か。」レッドは呟き移動し始めた。何故かセキュリティーは全て解除しており特別な部屋も鍵が開いていた。何か罠でも仕掛けてあるんだろうかと彼女は思いながら進んでいる。音楽室は反対側にある。マサヒトはやっと体育館に着いたが魔法が掛けてあるのか真人と強制的に入れ替わり真人は制服姿だ。

「どうなっているんだよ。これ。」真人は小声で呟いた。

「どうやら強力な魔法が掛かっているらしい。気を付けろよ。」マサヒトはそう言った。真人だと戦うに戦えないのだ。マサヒトに迷惑を掛けたくないと思いながらおそるおそる中に入っていった。其処には圭一が一人バスケットボールでフリースローを制服姿でやっていた。他には誰もいないとマサヒトが言い始めた。

「あっ。何だ真人か。何でこんな所に。」圭一は真人に言い始めた。

「圭一こそこんな所にいるの。」真人は全く事態を知らないそぶりをした。内心ばれないかドキドキしている。圭一は話し始めた。

「部活。バスケ部に入ろうと思ってフリースローの練習。」圭一はそう言った。制服でフリースローはないだろと真人は内心突っ込んだ。

「お前は。」圭一は真人に尋ねた。

「金曜日の時忘れ物してて。取りに来たんだ」真人はそう言い始めた。その日本当に体育しているときに忘れ物をした。怪しまれなかったかなと思いつつ忘れ物を取ってきた振りをした。忘れ物は体育館履き入れだった。それを取ろうとしたとき圭一はネクタイを外し始め後ろから真人の首にネクタイを締め付けた。真人は突然の事なので驚いている。

「間が悪かったな。悪く思うなよ。」圭一はそう言った。ネクタイが首を絞めて真人は呼吸が出来ない。走馬燈(そうまとう)が見え始めた真人は後悔をした。レッドに好きと言ってないしマサヒトにはこんな形の別れ方になるなんてと思い始めた。他にも色々やりたい事があったと思い始めた。

「そんな弱気になるなよ。悲しくなるだろ。」マサヒトは悲鳴にも似た声でそう言った。ごめんマサヒトと思ったときあの青年の声がした。

「女の子を守らなくてどうする。」その声に真人は生きなきゃという気持ちが()き勾玉が光った。真人は金眼金髪になっていた。圭一を振り払った。その際圭一は吹っ飛んだが意識はある。ゲホゲホと真人は咳き込んだ。

「お前。少女と一緒にいた少年。そうか。お前の正体は真人だったのか。」圭一はそう言った。圭一は襲いかかってきたが真人は次の動きが分かり圭一を一本背負いをして気絶させた。マサヒトは真人に音楽室に敵の気配とレッドの気配がすると言ったので雅人は急いで廊下を走りいつもより速くそして疲れにくかった。急いでレッドの方へと走った。間に合ってくれよと真人は思った。レッドはやっと音楽室に辿り着いた。音楽室は二つあり旧校舎にもあるが校舎の方から魔物の気配がした。相手は一匹かと思った。中は普通の音楽室で防音処理がしておりピアノが一つあるだけで音楽家の写真も何枚か飾られている。いつも音楽の授業の時に来ているが静かな音楽室にはいるのはここに来てからは初めてである。

「おかしいな。此処(ここ)からしたと思っていたのに。」レッドは呟いた。気配を消しているんだろうかと思い、ひとまず奥の方調べようと思い移動した時レッドは気付いていないがもうルナはレッドの後ろを取っている。ふふふ。もうすぐで手に入るわ。鳳凰の力とルナは思っている。真人は急いで音楽室に向かっている。間に合ってくれよと思いながら走り続けている。やっと音楽室の看板が見えてきた。レッドは未だルナに気付いていない。奥の方を調べようとするが鍵が掛かっていた。此処じゃないのかとレッドは思っていた。真人はやっと音楽室に着いた。



間に合え真人。

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