8話桜の下
普通の人間の男の視点も入ります。ちゃんと他のキャラも入ってます。
4月8日に話は戻る。その日の深夜不良少年等6人は花見客の男をかつあげしていた。男は会社員で花見の席取りをしていたが不良少年等に目を付けられてしまいボコボコにされていた。ああ。ツイていないそう男は思った。夜のサクラは魔物を引き寄せるという古い言い伝えがある。魔物ではなく不良達が今回現れた。少年等は男の財布の中を見た。
「おっしゃー。5万円ゲット。」そう少年達は言って男の財布から5万円を盗った。男はこの春から会社員になった新人だった。新人は花見に席取りをしなければならない。なので、5万円盗られたのは正直経済上苦しい。月光が辺りを照らし一部満開になった桜の木の下を見るとゴスロリの少女が男に抱きついているように見えた。人がかつあげされたっていうのに何だよ。あのカップルと最初は思ったが様子が変だ。のど元をかみつき少女の口から血が少しこぼれ落ちた。吸血鬼だと思い逃げ出した。話は現在に戻る。男はあの日見た光景が今でもよみがえる。夢だったんじゃないかと思ったがあの日確かに見たんだ思い始めた。男の名は新田で営業の方をやっている。主に不動産の方をやっているがなかなか売上げが伸びない。景気が余り良くないせいか買う人が少ない。まいったな。今月あと5万で生活をしなきゃならないのにと思った。未だ独身のせいか外食が多い。彼女もいない男だった。ソメンヨシノが見頃になり新田はたまに森林公園に来る。此処の出身の彼は昔からこの公園の桜が好きだった。夜桜が見たいと母親にせがむと夜のサクラは魔物が来るから駄目だと言って行かせなかった。本当だったんだな。夜桜は魔物を呼ぶって。ボンヤリと考えていた。其処に少年が蹴ったサッカーボールが来た。岡田真人がそれを取りに来た。
「すみません。」そう言ってボールを取っていった。今日は土曜日である。
「おい。眼鏡の真人早く。」圭一はそう言った。ごめん。ごめんと真人がそう言って圭一達の所へ行った
「サッカーか。」新田はそう呟いた。昔はサッカー選手になりたかった事をふっと思い出した。藤子が近くで真人を見ている。
「こちら異常なし。」そうピンマイクの無線を使って喋った。耳にはイヤホンが付いている。新田は一瞬だけ彼女が赤眼赤髪に見えたが気のせいかと思った。疲れていたのかなと新田は立って違う方向に歩いていた。もうすぐで夕暮れる時にあの青眼金髪のゴスロリ少女と再会をした。相手は顔を知ってか知らずか微笑んで去っていった。夢だと思いたかったが4月8日のことを思い出しぞくっと寒気がした。恐らく初めての恐怖であった。
新田は初めて魔物と遭遇した。桜の木の下で鳳凰の力を狙って来た奴だが関係ない男から当分の生活費を盗ろうとしていた。魔物は普段人間として暮らしている奴も多い。普通ならかつあげなど犯さないが未だこの魔物はこの世界に来たばかりで職にも就いてなかった。そこでかつあげをして生活費を苦しいながらも払っている。
「金を出して貰おうか。」そう魔物は言って新田に襲いかかった。その時レッドが現れた。
「こんな所でかつあげか。」そう言って彼女は剣の柄の部分で魔物の頭部を強打し気絶させた。怖くなり新田は記憶処理班が来ない内に逃げていった。
「逃げちゃった。もうすぐで着くところだったのに。」レッドはそう呟いた。しばらくしてホロンドの警察の方に魔物は身柄を拘束された。
「大丈夫なのか。魔物に遭遇した記憶を残したままで。」黒翼はそう言うと他の人に話しても信じないだろうなとレッドは答えた。
「オレ等がこの街から離れるときにその記憶も消えるだろう。」レッドはそう話している。任務が終われば直ぐ自分たちが居た証拠を全て消し去ってから別の場所に行くので、その際魔物に遭遇した記憶も消えてゆく事になるだろう。新田は家に戻り震えていた。何だったのだろう。あれは人間じゃなかった。しかも日本語で喋るなんて。悪夢か。そう思いながらビールを一口飲んだ。酒は楽しいときに飲めば楽しいと思うが怖い時に飲めば怖いという恐怖を増強させた。彼はそのまま寝てしまった。夢で月夜を歩くと金髪青眼のゴスロリの少女が男の血をすするところが出た。
「見たわね。」そう少女が呟いたのが新田は怖くなり目が覚めた。未だ夜中だった。急に一人暮らしが無性に寂しくなってきた。地元とはいえ実家から通わずアパートを借りて生活をしている。おいおい。未だホームシックになるのは早いんじゃないかと自分自身に彼は言い聞かせた。月曜日になり仕事も大忙しだ。電話を掛けてマンションは要らないかどうかや空き家の情報はないかなどの仕事である。くたくたになって自分の家に戻った。今日は新人歓迎会の飲み会で2次会まで行き午前様となった。足も千鳥足だ。昨日遭った事も忘れそうになったが暗くなるとあの光景を思い出してぞっとした。火曜日になり圭一は学校から帰り今日の待ち合わせ場所は森林公園だった。
「遅れてごめん。」そうルナに圭一は言っていた。周りは満開の桜で一杯だ。デートにはうってつけだった。
圭一とルナは満開の桜の木々を眺めている。
「綺麗ね。日本のサクラを見るのは初めてよ。」ルナはそう言うと圭一は今まで無かったのかとルナに圭一は尋ねた。
「ええ。でも一人ではあるわ。」ルナはそう答えてもの悲しそうに話した。圭一はそれに気づき何で寂しそうな顔をするんだと話した。二人で見た夕暮れのサクラのことは生涯忘れないだろう。彼は、ずっと、このまま二人はいられると思っている。
「そういえばルナは何処の学校なのだい。」圭一はそう言うとルナはくすっと笑った。
「秘密。」そう言って彼女はサクラ吹雪の中にある桜の花びらを捕まえようとしている。その姿を圭一はほほえましくみている。年上って聞いていたけど何か年下みたいだと彼は思っている。いつの間にか暗くなっていた。そろそろ帰りましょうとルナは圭一に言い始めた。此処は普通に魔物が集まってくるのでそれには巻き込まれないようにしている。圭一は4月8日の事を思い出しそうだなと答えてルナと共にそれぞれの家路についた。新田は仕事の疲れと二日酔い出た異変だったが何とか乗り切った。発泡酒を飲みテレビを見ている。やっているのは森林公園で干からびた死体が見つかったと報道されている。最近こういう事件増えているよなと半ば人ごとと思っていた。ルナがマネキン工場からこの公園に男の死体を置いたのだ。フレンチはその事件を担当している。今のところ被害者が被害者を生む事はないが何時起きてもおかしくはない。そんな事起こって欲しくないわとフレンチは思っている。だが恐れた事態は起こった。フラフラと歩く男が近くを歩いていた女子高生ののど元に噛みつき血をすすった。レッドとマサヒトが来たが間に合わなかった。女子高生もまた吸血鬼になった。
「人数増えたな。」レッドはそう言って剣を出した。マサヒトも大剣を出した。金眼金髪の美少年であるマサヒトを見て女子高生はポっと赤くなった。
「女子高生はどうする被害者だぞ。」マサヒトは戸惑っている。
「残念だが吸血鬼だ。男も被害者みたいだ。」レッドはそう言った。男の首筋には新しい傷が残っていた。今日やられたばっかりなのだろうレッドとマサヒトはソードと大剣で吸血鬼と化した二人を切った。これ以上被害者を増やすことがないようにするためだった。その連絡をフレンチは受けてやっぱり起きたのねと頭を抱えた。吸血事件の中で一番大変なのが被害者が別の被害を生む事だった。何とかその繰り返しを止めなければならない。その日男と少女が行方不明になった。接点がないので無関係という事になった。それよりも吸血鬼事件の方を警察は調べている。関係を知っていたのはフレンチだけだった。
新田はおつまみが切れている事に気付き24時間やっているスーパーにやってきた。直ぐお目当てのカシューナッツを見つけ買いに行った帰り道でまた魔物と出くわした。直ぐには分からなかったが今度は吸血鬼の餌食になった女性が吸血鬼になっていた。
「血を。血を頂戴。」そう女性は言って近付いた。新田はぴんと来て逃げる事にしたが吸血鬼は思ったより足が速く近付いていた。其処にレッドとマサヒトがやってきた。
「また吸血鬼か。」レッドはそう言ってソードで、一発斬りかかったとたんフラっと吸血鬼は倒れた。何がなんだか分からないが助かったと思った、ヘナヘナと新田は腰を抜かしてしまい立てなくなった。
「大丈夫。」レッドは剣をしまい新田の所に来て手を貸した。何とか新田は立てた。今度は記憶処理班が早めに来て新田の記憶からレッドやマサヒトの事吸血鬼の事や魔物の襲われた事ルナの事も忘れていった。新田はその後二度と魔物に遭遇する事無かった。ただ夜桜は見たいとは思わなくなった。その部分は心の片隅に覚えていた。新田が子供が出来たとき彼の母親と同じ事を言うのだろう。夜のサクラには魔物が出ると。レッドとマサヒトは家路についた。レッドはそのまま寝ずにお風呂に入っていた。防水ラジオを付けてラジオを聞きながら入っている。
「最近猟奇殺人が多いですね。リスナーの皆さんはくれぐれも注意してくださいね。」ラジオからそう女性の声がした。その後曲が流れてきた。ポップスのようだが彼女が全く知らない曲だ。古い曲調なのでレッドの親世代が知っている曲だろう。フレンチは覆面パトカーの車内で聞いていた。最近事件の模倣犯もおりそのため一刻も捕まえなければならない。今張り込み中だ。張り込みしている先には男が居る。しばらくして確保という声が聞こえてきた。
「放せよ。この××××野郎が。」捕まったのは若い男だった。此処は風月町といって東京で言えば歌舞伎町みたいな所である。男は其処を拠点としているヤクザの手下だ。最近起きているバラバラ殺人の一部にヤクザが入っていたので抗争にだとフレンチも思っていたがまさか若い男がやったとは思わなかった。余罪追及に入っている。
「知らねぇよ。」そう言って男は悪態を付いた。
「とぼけるな。」そう言って刑事は怒鳴っている。
「本当に知らないんだよ。」そう言って男はドスンと椅子に座った。三件の殺人は認めたがヤクザの抗争以外の件はやはり彼ではない。吸血鬼に似せた殺人も含まれていたがニュースを聞いて思いついたらしい。翌日大々的に暴力団の抗争と報道された。怖い世の中だと真人は思った。
***********************************************
その日の夕方圭一はいつものマネキン工場に来ていた。今はもう慣れて怖くなくなっている。ルナは圭一にキスをしている。
「そういえばルナ。何が欲しいんだ。今まで言わなかったけど。」圭一はキスが終わった後に尋ねている。
「鳳凰の力。あれがあればどんな願いも叶うらしいの。」そうルナは答えた。噂ではそうなのだが実際はどうかルナ自身も分からない。だがどうしてもやりたい事があってルナはずっと鳳凰の力を求めていた。
「何それ。鳳凰って確か表彰状にもいたよな。架空の鳥じゃないか。」圭一はそう言った。あらそうなのとルナは言い始めた。
「この世界では架空よ。でも別の世界にはいるのよ。」ルナは初めて異世界の吸血鬼だと話した。吸血鬼という部分は伏せている。半信半疑で圭一は彼女の話を聞いた。
「魔法とか使えるの。」彼はそう言うともちろんとルナは答えた。モンスターバスターに感知されないほどの程度の魔法を使った。上からばらの花びらがヒラヒラと落ちてくる。
「どう。信じた。」そうルナは言っている。天井から突然降ってきている。上に人はいない。凄いと圭一は言い始めた花は直ぐ消えた。ルナに目が金色に光り圭一はぼーっとし始めた。
「このまま吸血鬼にしようかしら。」ルナはクスクス笑いながら話したが圭一はぼーっとしているので良く分からず話を聞いていた。首筋を噛もうとしたら突然圭一が倒れた。
「おわづけね。」そう言ってルナは圭一を彼女の家に連れてきた。圭一は気が付くとルナがベットの端に座りながら寝ていた。今何時だろうと彼は思った。圭一は時計を見て真っ青になった。既に7時を回っていた。ヤバイと思いルナを起こした。
「ごめん。そろそろ帰らないと。」そう言って圭一はルナから帰り道を教えてもらい急いできてみればもう朝だった。真人と藤子達は心配していた。夕べから圭一が帰ってないと圭一の母親が電話で居場所を知らないかと聞かれたのだ。
「圭一何処に行ったんだろう。」事件に巻き込まれたんじゃないかと真人は心配していた。
「さあ。無事だと良いけど。」事故にあったんじゃないかと美加は心配していた。学校に来ると圭一が居たので心配したじゃないかと真人と雅人は言い始めた。
「昨日圭一君のお母さんから電話きたけど何処にいたの。」美加はそう言うと圭一は心配掛けてごめんと言い始めた。
「何処居たの。」藤子の質問で圭一は何て答えたらいいのか分からなかった。まさかルナの家とは言えなかった。昼休みになり藤子と真人は屋上で話し合っている。
「圭一から魔物の匂いがした。」藤子はそう言うと真人は驚いた。
「まさか圭一が魔物に。」真人はそう言うとマサヒトはあいつは未だ人間だと答えた。
「正式に言えば近くにずっと居た事になる。」藤子はそう答えた。
「もしかしたら圭一の彼女魔物かもしれない。」藤子の言葉に真人は驚いた。彼は圭一が危ないと思った。
「どうすれば良いんだ。」真人はそう言うと圭一を尾行して敵の姿も見る事が出来るかもしれないと彼女は答えた。真人は罪悪感に駆られそうになった。
「オレだってしたくないさ。でも圭一は敵の顔を見ている。何時殺されてもおかしくないんだ。」そう藤子は答えた。下校の時間になり圭一はルナの所に行こうとしている。真人と藤子は圭一を尾行している。真人は良心の呵責に駆られている。やっぱり圭一の彼女と圭一がいちゃついている所なんて見たくないと真人は思っている。二人はマネキン工場に辿り着いた。其処からルナと圭一の気配がした。
「間違いない。魔物だ。」そう言って藤子は赤眼赤髪の美少女の姿をした。レッドとしてマネキン工場に入った。真人はマサヒトと入れ替わりマネキン工場に入った。ルナと圭一は二階でレッドとマサヒトの二人の様子を見ている。
「どっちが鳳凰の力を持っているんだ。」圭一はそう言うとあの赤髪の少女の方よとルナは答えた。その時4月8日の時助けて貰った人だと気が付きまさかあの人だったとは圭一は思い始めた。
中学生なのにな。