死なないカモの育て方 その⑧
「私を殺す方法――ご教授願いたい――ぜひ」
マショウが動く。
僕の方に突っ込んでくる。
だけど、その足運びや体捌きには無駄がない。
下手に反撃したら死ぬことは、もう経験済みだ。
とにかく敵の攻撃範囲に入っちゃいけない。
「【殺戮劇場】!」
僕は、【切断】と【貫通】を乱射した。
しかし、その間断ない攻撃さえもマショウはギリギリ最低限の動きだけで回避する。
人間の反射神経じゃない。
まあ、人間の反射神経じゃないんだけど。
躱された見えない刃と鉛の球が地面をえぐる。
【追尾】も発動されているはずなんだけど、どうして避けられるんだろう?
まさか、最初に食らったあの薬物の効果だろうか。
だとしたら……厄介になって来た。
「最大の攻撃か――今のが」
気づけば、目の前にマショウが迫っていた。
マショウの光速ストレートを僕は、思い切り横に跳んで躱した――と思いきや、それも予測されていたようで、脇腹を蹴りつけられた。
衝撃で地面を転がる。
咳が出る。
「き、【切断】……!」
「当たらない――その技は」
宣言通り、マショウは見えないはずの刃を軽々とかわす。
だけど。
だけど、それが予想通りだ。
「いや、当たってますよ。僕の狙った通りの場所に」
「!?」
マショウから逸れた【切断】が地面を切り裂く。
そしてその瞬間、切られた地面の周囲が一斉に崩落し始めた。
さっきから少しずつ傷つけていたのに加えて、【貫通】で地面の中をスカスカにしておいたからだ。
「何――!?」
マショウが空中に逃げる。
これを、待ってた。
僕は地面を蹴り、マショウを追撃した。
一撃で決める。
「【粉砕】!」
僕の拳が、ようやくマショウの顔面を捉えた。
「ッ――!」
衝撃でマショウが地面に落ちる。
それを追って、僕も着地した。
「……空中なら、踏ん張る足場がなければ、どんなに反射神経が良くても回避はできない。僕の読みが当たりましたね」
「なるほど――な」
よろめきながらも、マショウは立ち上がった。
隙がある。
今ならとどめが刺せる。
だけど、僕が動こうとした瞬間、
「私の実験は――終了だ、えーくん」
「え?」
「約束通り――強化薬の製法は教える。それから、この草原を超えたところにある――我々の研究所は。感謝する――協力に」
「何言ってるんです。まだまだこれからでしょう? 僕もあなたもまだ戦えるはずですよ」
「我々がやっているのは――実験だ。殺し合いじゃない」
「むっ」
いや、こっちは一回殺されてるんですけど?
「えーくん、顔が怖いわ」
振り返ると、いつの間にか戻ってきていたミアがいた。
心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。
「いや……大丈夫。僕は快楽殺人者じゃないはずだからね。ここは見逃してあげますよ」
僕が言うと、マショウは、
「――感謝する」
と、僕に頭を下げた。
……研究者とかいう人種は、よくわからないな。
ひとまずここは気持ちを抑えておこう。
でないと、ミアに嫌われる。




