死なないカモの育て方 その⑦
「おかしいな。どうしてさっきから、あなたには見えてないはずの攻撃が当たらないんです?」
「考えて避けているわけではない――すべて、反射的に出来てしまうだけだ」
「反射?」
「――そうだ。【人体進化研究所】は研究している――人体と魔法の融合を。身体能力を引き上げる――魔法やスキルと同等のレベルまで」
「え、なんかすごいですね、それ」
待てよ。
ということは。
っていうか、そういうことか。
「じゃあ、あなたの場合は……」
「極限まで高めてある――反射神経を。たとえ目で見ることのできない攻撃でも、回避できる――触覚や聴覚、その他の情報から攻撃を察知し、体が反応する」
「要するに、僕の攻撃は当たらないってことですか?」
「その通りだ――概ね」
言いつつ、マショウは胸ポケットから注射器を取り出した。
そしてそれを、自分の首筋に注射する。
「あの、それってもしかして」
「強化薬だ――おそらくは、君の予想通り」
空になった注射器を再び胸ポケットに収めたマショウは、僕に対しファイティングポーズを取る。
「試してみるか?――えーくん」
「いいんですか? 護身術は僕の得意科目ですよ」
だけど、相手の言っていることが本当なら、まともに殴り合っても勝ち目がない。
だとしたら、あれだ。
活路を見出すとすれば、関節技か。
とりあえずは、軽くジャブを……。
と、僕が相手の手の届く範囲に足を踏み入れた瞬間。
「!」
僕の顎にマショウの右拳がクリーンヒットしていた。
同時に、僕の側頭部をマショウの左拳が襲う。
ちょっと待て、これは――致命傷だぞ。
鼻が折れてる。
眼球も破裂したかもしれない。
そしてふらついた僕の体、その腹部に膝蹴りが入る。
――誘いに乗るんじゃなかった!
僕は死んだ。
そして再び、生き返った。
目の前ではマショウがファイティングポーズを取っている。
「試してみるか?――えーくん」
「冗談じゃないですよ」
よく考えてみれば、敵は人体のプロだ。
どこをどうやれば人が死ぬのかなんて、熟知してるだろう。
こいつ、最初から僕を殺す気でやってたんだな。
もしくは、僕を殺す実験をやっているのか。
どちらにしても僕にとってはいい迷惑だ。
別に相手をなめてたわけじゃないけど、こっちも殺す気でいかなきゃ死ぬ。
僕は死ぬのが怖くないだけで、自殺志願者ってわけじゃない。
「えーくん――どうした? 止まっているぞ――動きが」
「いや、あなたを殺す算段をつけていたところです。追い詰められた殺人鬼がどんなに凶暴かってことを教えてあげますよ」




