死なないカモの育て方 その⑥
「!」
「すまない――反射的にな」
マショウの腕が伸びてきて注射器を掴み、中の液体を注射する。
「……これ、毒ですか?」
「それでは――実験にならない。が、間違いない――君の能力を一部抑えるという意味では、有害な毒だ」
「抑える? 僕は抑えられるべき能力なんてなにもない無能そのものですよ」
「即死させるスキルを持つ者がいた――【異能力者処理統括機関】に。実験にならない――それを使われると」
【異能力者処理統括機関】。
懐かしい名前だ。
と言っても、つい最近聞いたばかりだけど。
あの白髪ホモは今頃何をやってんだろう。
「マショウさん……意外に弱気ですね」
「始まっているのだろう?――実験は。実験の過程で君の能力が封じられても、ないはずだ――問題は」
「……確かにその通りです」
ぐうの音も出ねえ。
ま、どちらにせよ【死線】はよっぽどのことがないと使うつもりはないし……あれ? 思い返してみれば僕、結構乱発してるな。自制しよう。
とりあえず僕は、後ろに跳んでマショウから距離を取った。
「ミア、遠くにいたほうが良いよ」
「分かったわ」
ミアが僕らから離れていく。
「さて……」
どうしたものかな。
どのくらい本気でやったほうが良いんだろう。
どういうトリックを使ったのか知らないけど、【切断】は回避されちゃうみたいだしな。
見たところ相手は武器を持っている様子じゃない。
ここは久しぶりに、肉弾戦をやってみるか。
僕は地面を蹴り、再びマショウに接近した。
「くらえ!」
パンチ――と見せかけた掴み技――を簡単に躱され、逆に僕の体が蹴り飛ばされる。
かなり重たい蹴りだ。
自分から後ろに跳んで衝撃を殺し、踏みとどまる。
そんな僕を隙だらけだと思ったのか、今度はマショウが僕に近づいて来る。
――だけど、それが狙い通りだ。
「【貫通】!」
マショウの死角に設置していた鉛の球を、彼めがけて発射する。
しかし、いや、やはり、マショウはそれを躱し、僕に拳を振り下ろす。僕はそれを両手で受け止める。
「この程度か――えーくん」
「まさか。僕だって伊達に殺人鬼なんて呼ばれてませんよ」
「!」
【貫通】の鉛の球が、マショウの背後にあった木で跳ね返り、再び彼を襲った。
完全に死角を突いた。躱せるはずがない。
……あれ、これってフラグじゃね?
案の定、マショウは僕の攻撃を回避した。
鉛の球が地面に突き刺さる。




