死なないカモの育て方 その⑤
実験?
「実験と言えば僕、学生時代に教室一つ丸焦げにしちゃったことがありますよ。あれは危なかったなあ。そんな僕に付き合ってほしい実験なんてあるんですか? 悪いことは言わないからやめといたほうが良いと思いますよ」
「――いや、君にしかできないことだ――えーくん」
「僕にしかできないこと?」
「君に興味を持っている――わがあるじは。そして作られた――強化薬は」
「どういう意味ですか?」
「強化薬をもってえーくんを倒すことが、我々の研究の最終目標なのだ――現段階では」
あれ?
なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。
僕を倒す?
「ちょっと穏やかじゃないですね。いったい何の話ですか? そもそも実験がどうとかって話でしたよね?」
「そうだ――実験というのは実証実験。要するに、えーくん――君との実戦だ」
おいおいおいおい。
なんか思ってたのと違うんだけど?
っていうか強化薬が僕と戦うために作られたって、それ本当?
……めちゃくちゃ有名人だな、僕。
で。
「ミア、どうする?」
「えーくんはどうしたい?」
「どうしたいって、まあ、ミアの言う通りにしたい」
「そう……それなら」
ミアが笑う。
「この人と戦ってあげて、えーくん」
「いいよ」
そう言うだろうと思ってた。
どういう手で僕を倒そうっていうのかは知らないけど、とりあえずチャチャっと片付けちゃうか。
「やってくれるか――えーくん?」
「まあ、いいですけど……勝っても負けても恨みっこなしですよ。あんたたちが負けたからって、薬のことを教えてくれないとかいうのはナシだ」
「もちろん――逆も然りだ」
「逆?」
「えーくんが死んだ――場合、ミア・ミザルは我々が保護する」
「へえ、アフターサービスもばっちりってわけですね。僕も安心して死ねる」
「では、始めよう――そろそろ」
「そろそろ? 何言ってるんです。もう始まってますよ」
僕は、喋っている間に設置していた【切断】の包囲網を、マショウめがけて放った。
逃げ場はない。
そう、逃げ場はない――はず、だった、んだけど。
マショウは見かけによらない機敏さで、【切断】をすべて回避した。
嘘だろ?
仮にも見えない刃だぞ?
そして、次の瞬間。
僕の腕には注射器が突き刺さっていた。




