死なないカモの育て方 その④
「それで、あなた一体何者なんですか?」
僕が訊くと、
「――マショウだ」
「あ、名前は前に聞きました」
「――【人体進化研究所】に所属している」
「【人体進化研究所】!?」
突然声を上げたのは、ミアだった。
「どうしたの、ミア」
「【人体進化研究所】って、あの? 魔法を使って人体を変化させる実験をしている……!?」
「そうだ――合っている」
マショウが頷く。
「ということは、強化薬の製造元は【人体進化研究所】なの?」
「その通りだ――間違いない」
「…………」
黙り込んでしまうミア。
「どうしたの?」
「【人体進化研究所】は国の研究機関。魔法の権威なのよ。そこから機密を手に入れることは……できないわ」
「急に弱気じゃん」
「仕方ないわよ。国が相手じゃどうしようも……」
「冗談だろ? 僕らは魔導王国そのものをぶっ壊そうって言ってるんだぜ」
「それはそうだけど」
何も難しいことはない。
こんなの、お願いしてみればいいだけだ。
僕はマショウと向き合った。
「あの、すみません。強化薬ってどうやって作ってるんですか? 教えてくれませんか?」
「えーくん、教えてくれるわけ……」
「構わない――教える」
「えっ!? 本当ですか!?」
ミアの顔がぱっと明るくなる。
「ほらね、やっぱり人間は正直さが大事だよ」
「いえ、えーくん。こういうときは法外なお金を払わされたり左足を奪われたり、とにかく大きな代償があるものだわ。でしょう? マショウさん」
「いや――金はいらない。――必要なものはない」
「ええっ!?」
素っ頓狂な声を上げるミア。
最近妙に捻くれたやつらに絡まれっぱなしだったから、普通の人の感覚を見失っていたらしい。
「ミア、たまには欲求を素直に表現することも大切だよ。だからあとでパンツ見せてよ」
「えーくん」
「何?」
「それはただの変態だわ。見せる方も、見たがる方も」
「……やっぱり?」
「薬の製法は教える――ただし。条件がある――えーくん、ミア・ミザル」
おっと、くだらない話をしている間に話は進んでいたようだ。
え、なに? 条件?
「ちょっと待ってくださいよ、さっき必要なものはないとか言ってませんでした?」
「必要なものはない――が、やって欲しいことはある」
「やって欲しいこと?」
僕とミアの声が揃った。
「そうだ――実験だ。付き合ってほしい――我々の実験に」




