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死なないカモの育て方 その③


※※※



 しばらく歩くと、背の高い草がうっそうと生い茂った草原地帯が見えてきた。


「あそこかな?」

「多分、そうだわ」

「でも、工場みたいなのは見えないけど……?」

「魔法でうまく隠されてるのかもしれない」


 なるほど。


「で、どうやって見つけるわけ? まさかあの草原をしらみつぶしに見て回るなんて言わないよね? 僕、植物に触るとかぶれるときがあるんだ。前に草むしりをやったときなんか、両手が腫れて使い物にならなかったんだよね」

「少し待って、えーくん。探知魔法で探ってみるから」


 ミアが立ち止まり、僕らの目の前に周辺地図の映像を投影する。


「……見つかった?」

「どの数値も異常なし。何も見つからないわ」

「じゃあ、強化薬(ティルフィング)の生産地はここじゃなかったってこと?」

「分からない。さっきも言ったけど、魔法で隠されてるのかもしれないし」

「看板でもあれば楽なのにね」

「あはは、えーくんおもしろーい」


 表情筋を微塵も動かすことなく、真顔のままミアが言った。


「……冗談だよ」

「分かってるわよ。それにしても困ったわ。どうしよう」

「諦めてどこか別の場所に行く? それとも、首都に戻って王国の中枢に特攻をかけようか。今の僕なら全部とは言わなくても3分の1くらいならぶっ壊せると思うよ」


 意外とアリだな。


「今首都に戻れば、捕えられてそれでおしまいよ。どうせやるなら万全の状態でやりたいと思わない?」


 思わないでもない。


「ミアがそういうなら、そうするよ。ミアの言うことにはできるだけ従うつもりだ」

「ありがとう、えーくん」


 そう言うとミアは微笑み、


「それじゃ、お願いがあるんだけど」

「お願い?」

「この草原に入って、工場らしいものがないかしらみつぶしに探してきてくれないかしら?」

「嫌だよ、アレルギーなんだ」

「…………」

「…………」


 会話は平行線。

 と、そのとき。


「あら?」

「どうしたのミア?」

「誰かいるわ」


 地図の中心には僕とミアを表す光点が二つ表示されていて、そこから少し離れたところにもう一つ光点があった。


「誰かな? 観光客?」

「とにかく行ってみましょう。強化薬(ティルフィング)の関係者かもしれないわ」



※※※



 僕らは草原を、草の生えているエリアの縁に沿って歩いた。

 すると、大柄な人影が見えてきた。

 なんか……見覚えがある。


 その人物もこちらに気が付いたらしく、僕らへ片手を挙げて、


「えーくん――待っていた。遅かったな――想定外に」


 ミアが僕の袖を引く。


「えーくんの知り合いなの?」

「うん、まあ、顔は」


 そう、確かマショウとかいう名前だったはずだ。

 なんでこんなところに?


「待つと言った――メティスの地で」


 あっ。

 そういえばそんなこと言ってたな。


 まさかこの人、ずっと待ってたのか?

 暇なのかな……。



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