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死なないカモの育て方 その①


 そして僕らは、再び馬車に揺られていた。


 マティスの地へ向かうためには、ひとまずその近くの街まで行かなきゃならなかったからだ。

 それに、あのまま僕の家(の跡)に居たっていつか追っ手は来るだろうし、動き続けていた方が安全な気がした。


「ところでミア」

「なあに、えーくん」

「どうしてあの妙な注射薬に拘るの?」

「……あれが常識を覆すすごい薬だからよ。えーくん、私が魔法の研究機関へ配属されるはずだったって、前に言ったかしら?」

「聞いたことがあるような気もする」


 聞いたことがないような気もする。


「この魔導王国の中で、魔法を使うことができる人間は一部だわ。魔導学校で学んだ人もいるし、冒険者として生きる中で身に着けた人もいれば、私のようにそういう血筋(・・)に生まれた人もいる。魔法を使える人もいれば使えない人もいるし、使えない人は一生使えないままなの」

「うん、聞いたことがあるような気もする」


 聞いたことがないような気もする。


「だから私は、全ての人が魔法を使えるようになる方法を見つけたかったの」

「なるほどね」

「あの強化薬(ティルフィング)は、それを可能にするかもしれない。だとしたら、その秘密を知ることができれば、私は夢の実現に一歩前進ってことなのよ」

「ふーん」


 いいね、夢がある人は。

 っていうか、ミアってそういうタイプだったんだな。

 夢に向かって努力する系の……。

 僕には到底真似できないし、真似する気もないし、そんなことをしている自分も想像できない。

 ……夢や希望なんて関係なく、いつか人は死ぬんじゃないのか?

 ま、そんなのは人それぞれ。

 これ以上考えるのはやめておこう。


「でも私、本当は……」


 ミアが目を伏せる。


「本当は、何?」

「ジャギア族の特性は、魔法に対して高い適性を示すことなの。もしすべての人が魔法を使えるようになったなら、私たちも少しは人の世界に溶け込むことができるのかもしれない……って、考えたりもする」

「家庭の事情ってこと?」

「簡単に言えば、そうね」


 馬車が停まる。

 どうやら目的地に到着したらしい。



※※※



 もう日も暮れかけている。

 とりあえず僕らは、宿で一泊することにした。

 何せ、金なら多少ある。

 あるんだよな?

 急に不安になって来た。


「ねえミア、お金、大丈夫だよね?」

「今のところ。でももし足りなくなっても私は悪くないわ」


 ベッドの上に荷物を広げながら、ミアが言う。


「そんなこと言うなよ。僕らは運命共同体だろ。僕が金を勝手に使ったって、それはミアが勝手に使ったようなものじゃないか」

「その言い訳が通用するなら、私が休息をとり続ければえーくんは永遠に働き続けることができるわね」

「いやそれはおかしい」

「……本当に心配いらないわ、えーくん。お金はまだあるもの。それに、無くなったって大丈夫」

「そう?」

「そうよ。えーくんの内臓をいくつか売っちゃえばお金はできるもの。失った臓器は私が完璧に治してあげるから安心して」


 まったく、嫌な冗談だ。

 でも……ミアなら本当にやりかねない。

 明日起きたら腎臓が片方無くなってるなんてことにはならないよね? ね?



※※※





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