ほぞかみっ! その①
「もう一回聞くけど、どうやって敵の動きを止めたの?」
「交信魔法で相手に情報を送っただけよ。人間の脳じゃ処理できないほどの、莫大な量の情報をね」
「へえ……」
「キャパシティを超えた脳は一時的に機能を止める。そうすれば動きは止まる……ギリギリの賭けだったけどね」
「欲を言えばとどめを刺しておきたかった。できるだけ残酷に」
「えーくん、それって……相手とやってることが同じじゃないかしら」
ん?
ああ。
まあ。
それはそうだけど。
「復讐って、そういうものだろ?」
と、その時。
遠くから馬の足音が聞こえてきた。
だんだん近づいて来る。
「荷馬車みたいだけど……」
「こんな時間に?」
「確かに、妙だわ……何か人に知られたくないものでも運んでるのかしら」
「人に知られたくないもの?」
ミアは一度目を伏せ、そしてもう一度僕を見上げた。
「例えば、一般に出回っていないお薬とか」
「……確かめてみる価値はあるかもね」
※※※
ミアの予想は的中していた。
荷馬車が運んでいたのは、強化薬だった。
だけど、御者はただ雇われただけらしく、強化薬の出処までは知らなかった。
どうやら、何段階にも場所を経由して運ばれているらしい。
「本当に知らないんですか?」
「知らねえもんは知らねえよ。配達の時間に遅れちまう。そろそろいいか?」
僕の質問に、御者はぞんざいに答える。
うーん。
「どうする、ミア。こうなったらしらみつぶしに配達元を当たってみる?」
「でも、王国を揺るがすような薬なのよ。手当たり次第にやって何とかなるものでもないわ」
「じゃあ、諦める?」
「…………」
唇を尖らせるミア。
とはいえ、これ以上御者を問い詰めてもあまり情報は手に入らないだろう。
「……あっ」
「どうしたの、えーくん」
「あの、メティスって地名、知りませんか?」
「メティス?」
御者が自分の顎を触る。
「ああ……あの不気味な平原地帯だろ。化け物が出るって、人も寄り付かねえ。そこがどうかしたか?」
「それだけですか?」
僕は彼に、僕の持っていた分の紙幣を握らせた。
御者の顔つきが緩む。
「あそこはな、人が寄り付かねえだけに、この妙な薬の工場があるんじゃねえかって仲間内でも噂になってんだ。もし行くなら用心しなよ」
「はい。どうも。それでは」
「ああ、それじゃあな」
御者は馬を走らせ、街の方へ去っていった。
マネーイズパワー。
時は金なり。
金持ち喧嘩せず。
「ということで、ミア、次の目的地はメティスだ」
「……えーくん、いつの間にお金を?」
「君が寝てる間にちょっとね」
ちょっと、何枚か、頂戴した。




