底辺ザコ野郎はスローライフの夢を見ない その④
「殺人鬼、もしかして手を抜いているのかな? 俺の心臓はここにあるのだがな」
ハリシが自らの心臓の辺りを右手で指さす。
そして、僕に迫る針!
身をひねって回避する。
相手の攻撃してくるタイミングが、だんだん分かって来た。
それは、即ち、僕の視線が相手の手元から外れた瞬間だ。
ハリシは、表情とか体の動きを使って僕の視線を誘導し、その死角を縫うように(針だけに)僕を攻撃しているというわけだ。
「訂正させてもらいますよ。あんたは詐欺師より、手品師の方が向いてるかもしれない」
「そうかな。俺はこの殺人者という仕事を天職だと思っているがな」
「人殺しはいけないことですよ。そんなのが仕事になると本当に思ってるんですか?」
「世の中には誰かを殺したい人間というものが数えきれないほどいるし、殺されるべき人間も数多く存在するのは、お前にも分かる話だな、殺人鬼」
「……僕に同意を求めないでください」
「俺の仕事は、誰かを殺したい奴の望みをかなえ、殺されるべき人間を殺すことだ。お前のいうやってはいけないことをやってほしい人間はたくさんいるのだな」
――なんてことを話している間に、ハリシが放ってきた針は十数本。
僕はそれを、僕の持てるスキルを総動員して打ち落とした。
だけど、こんなんじゃダメだ。
針を迎撃するのに手いっぱいでとても攻撃に回れない。
そう、自動で針から身を守ってくれるようなシステムがなければ……。
「……考え事かな、殺人鬼?」
気づけばハリシは一歩ずつ、まるで僕を挑発しているようにゆっくりと近づいて来ていた。
「どうやって見逃してもらおうってことを考えてたんですよ」
「本当にそうかな? 俺はそうは思わないがな」
「あなたの針のトリックはもう見破ってる。そうやって僕の注意を逸らそうとしたって無駄ですよ」
「そうか、それは困ったな。じゃあ、実力でいかせてもらうとするかな」
そう言って、ハリシ両腕を広げた。
芝居がかったその挙動とは裏腹に、その体から無数の針が発射され僕に襲い掛かる。
なんだこいつ。こんなの、避けられるわけないじゃないか。っていうかそもそもどこに隠し持ってたんだ!?
とにかく、生き延びるためなら――やるなら、今しかない。
「【切断】……と、【追尾】!」




