だから僕は、長生きができない。 その⑤
いや、首を折ったのかどうかは定かではないけれど、僕が見る限りではロプテさんの首が変な方向に曲がってしまっている。
これは死んじゃっただろう。多分。間違いない。
それにしてもあんな風にきれいな首の折り方をできるということは、相手もそれなりに首を折るのに慣れているということだ。
ついでに言わせてもらうと、今の僕はかなり混乱している。そうじゃなきゃこんな余計なことばかり考えていない。
え? どういうこと?
『くそ……ロクなことがなかったぜ……』
ロプテさんの声が僕の頭に響く。
セリフから察するに、この状況はロプテさんにも想定外だったらしい。
そして程なくして、ロプテさんとの交信が途切れた。
絶命してしまったらしい。
「ええ……と」
「えーくん、とにかくここを離れましょう。何か手違いが起こっているようだわ」
「そうだね。その通りだ。よく分からなくなったらとりあえず逃げるのが一番だって昔の人も言ってる」
「それ本当?」
「言葉の意味が? それとも昔の人が言ったかどうか?」
「両方よ」
「僕に訊くなよ。そんなことより逃げるのが先だろ?」
「それもそうね」
ミアが僕に背を向け、走り出す。
僕もその跡を追おうとした……が、なぜか右足が動かない。
「あれ?」
「えーくん、どうしたの?」
再び僕の方を振り返ったミアの顔が青ざめる。
「いや、足が動かなくて……どうしてそんな蒼い顔してるの?」
「あ、足が……!」
「足?」
言われるままに自分の足元を見てみると、そこには細長い針が突き刺さっていて、僕の右足と地面を繋ぎとめていた。
「……え? なんで?」
「えーくん、後ろ!」
「うし……」
振り向こうとした瞬間、首に変な感じがした。
触ってみると、やはりというべきか、そこにも針が刺さっていて……。
っていうか、これって。
僕、死ぬじゃん……。
「首都で噂の殺人鬼だっつーから楽しみにしてたのに、まったく期待外れだったな」
声の主は、さっきロプテさんと一緒にいたあの痩せた背の高い男だった。
「あ、あんた、ラギリルとかいう……」
そういう僕の声は掠れていた。
喉に針が刺さってんだから仕方ない。
「まさかロプテがそう言ってたのか? あのマヌケは余計なことしかやらねえな。俺をあんな小物と同じにしてもらっちゃ困るな」
え。
じゃあ、こいつは?
「俺の正体が気になるかな。教えてやってもいいな。俺の名はハリシ。よろしくな……っつっても、お前はもう死ぬんだけどな」
「…………」




