だから僕は、長生きができない。 その④
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生まれてからずっとこの街に住んでいたと言っても、僕はほとんど外に出たことがなく、そのためにこの街のどこに何があるかなんてほとんど分からなかった。
だから、この街の街並みを、僕は今日初めて見たことになる。
案外狭い街で、活気があるわけでも珍しいものがあるわけでもない、普通のところだ。
そんな普通の街で、僕とミアは数日分の食料とミアの着替えを買った。
お金はミアの家から持ってきていたから、その点では心配なかった。
で、一度僕の部屋に戻って、荷物を置いて。
夜がやって来た。
買い物をしているときにギルドの建物がある場所は把握していたので、迷わずに行くことができた。
さすがにこの年になって迷子になるのはちょっとアレだ。さすがの僕でも少し恥ずかしい。
「さて、本当にロプテさんは来るのかな?」
僕は建物の影から顔を出しながら、ミアに訊いた。
「すぐ近くにいるわ。もうすぐえーくんからも見えるはずよ」
「そうかい?」
僕らがいる場所から少し離れたところに、ギルドの物資搬入口が見える。
街灯の明かりがそう強くなく、辺りは薄暗い。
「というか、ミア、部屋で待ってなくてよかったの?」
「私一人で部屋に居たら危ないからって言ったのはえーくんだったはずよ」
「ああ、そういえばそうだね……」
僕のいないところで、ミアが敵に襲われるようなことがあっちゃ困るもんな。
ラギリルって人が比較的穏やかで、抵抗せずに僕の質問に答えてくれることを祈る。
そうじゃないと、また荒っぽい手段を使わなきゃならなくなる。
そんな事態にならないことを祈る――後片付けが面倒だから。
「えーくん、見て!」
ミアが僕の背中側から顔を出し、物資搬入口の方を指さす。
そこには、ロプテさんともう一人、痩せた背の高い男が立っていた。
「あれがラギリルって人かな?」
「違うかしら……どう思う?」
「どう思うったって、僕にそんな人を見る目なんて備わってないし。ミアの意見は?」
「私にも、人を見る目はないもの」
「僕についてきちゃうくらいだからね。あはは」
「笑い声が渇いてるわ、えーくん」
ごほん。
冗談はさておき。
「ロプテさんと交信してみよう。繋いでくれ」
「分かったわ」
ミアが交信魔法を使い、僕とロプテさんをつなぐ。
「あ、もしもしロプテさん? ラギリルって人を連れてきてくれたんですね?」
『……てめえ、殺人犯って割には簡単に人を信用するんだな』
「え?」
『ママに習わなかったか? 大人を信用しちゃいけませんってよぉ!』
ロプテさんの声が僕の頭に響いた瞬間、僕の目の前で、ちょっと信じられないことが起こった。
ラギリル(仮)さんが、ロプテさんの首の骨を折ったのだ。




