おまえを即死にしてやるから、僕を長生きさせてくれ! その⑥
敵のスキルは、一撃ですべてを粉砕するスキル(多分)。
だとしたら、顔面に一撃食らった時点でジエンドだ。
顔中がぐちゃぐちゃになったような感覚とともに、僕の意識がブラックアウトする。
そして、生き返った。
僕と対峙する男の手に握られていたのは、取っ手だけになったハンマー。
ということは……。
「あのさミア、僕の周囲に水魔法の結界を作ることってできる?」
『理由は聞かないわ。任せて』
男がハンマーの柄を放り投げる。
それから、こう唱えた。
「《ファイア》」
「!」
男の火魔法が僕の体を包もうとした瞬間、その炎は霧になって消えた。
「……なんだ、てめえ? やっぱり奇妙なガキだな」
男が眉間に皺を寄せる。
「そんなことより、聞きたいことがあるんですけど。なんであんた、ヒトに向かって魔法が使えるんだ?」
魔法は、軍隊や一部の人間を除いては、人間に対して使えないはずだ。
これはそういう決まりだからとかではなく、術式の関係で物理的に不可能だって意味。少なくとも僕は学校でそういうふうに習ったような気がする。記憶違いじゃなければ。
だからミアは、僕ではなく僕の周囲に水魔法を展開させたわけだ。
なのに。
なのに、この男は、いとも簡単に僕の体を発火させた。
『……さすがにありえないわ。相手の魔法適正も平均並みだし、特別な魔導士というわけでもないもの』
「ミア、やっぱこいつ殺していい?」
『いいえ、むしろますます興味を持ったわ。絶対に生かして捕まえて』
「僕、死んじゃうよ?」
『えーくんが死ぬのは悲しいわ。だけど、生き返ってくれるんでしょ?』
まあ、それはそうなんだけどね。
ミアは多少興奮気味に続ける。
『敵の魔法攻撃は私が相殺するから、えーくんは戦闘に集中して。絶対に捕まえてきてね』
「了解」
とりあえずやれるだけやってみるか。
死んだらまた考え直せばいい。
「何さっきから一人で喋ってんだ? 遺言か?」
「まあ、似たようなものですよ。あなたも何か言い残すことはないですか?」
「そういうセリフはな、ガキ。優位に立っている奴が言うもんだぜ!」
男がすごいスピードで僕に迫ってくる。
ハンマーを捨てた分、身軽になっているからだろう。
生かして捕まえるとなれば、やはり僕のスキルは使わないほうがいい。
信じられるのは自分の肉体だけというわけだ。
……よりによって一番信じちゃダメそうなものを信じなきゃならないなんて、僕も運がない。




