おまえを即死にしてやるから、僕を長生きさせてくれ! その③
僕はベッドから立ち上がった。
「どうするの、えーくん」
「先手必勝って言葉がある。まあ、さっさと片付けてくるさ」
「……できれば、相手を殺さないで欲しいのだけれど」
「どうしたのミア? 博愛主義に目覚めた?」
「違うわ。このタイミングでやってくる敵だもの、きっと私たちにとって有益なことを知っているはずだわ。生け捕りにして情報を吐かせた方がいいんじゃないかしら」
「なるほどね。冴えてる、ミア」
しかし、殺さないなんて僕にできるんだろうか。
とりあえずやってみるか。
梯子に手をかけ、地上へ上がる。
空気はまだ朝の冷たさを残していた。
『聞こえてる? えーくん』
頭の中にミアの声が響く。
「ああ、聞こえてるよ。ミアのお腹の音までばっちり」
『べっ、別にお腹なんて空いてないんだからねっ!』
「これが終わったら何か食べ物を買いに行こうか」
『楽しみにしてるわ。敵はもうすぐ見えるはずよ。南の方向』
「おっけー、南ね」
雑木林のある方角だ。
僕がそっち側に体を向けると、ちょうど何者かが雑木林を抜けて歩いてくるところだった。
ふわあ。
あ、あくびが……。
いけないな。少し気を引き締めよう。
近づいて来るのは大柄なうえ筋骨隆々な男で、その体は僕の10倍……は言い過ぎだけど、少なくとも二回りは大きかった。口元にはぼさぼさの髭まで生えている。
剃った方が、いいと思うけどな。個人的には。
まあ、恰好良さの基準もまた人それぞれだし、僕が口を出すことでもないけど。
そしてなんといっても目に付くのは、大柄な男の半身はあるような大きな鉄の槌――ハンマーとかいう武器だ。
それを男は、片腕で軽々と持っている。
あれで殴られたら、死にそう。
男はウチの敷地内に足を踏み入れ、そしてようやく僕に気が付いたのか、少し驚いたような表情を浮かべた。
「……あのさ、勝手に人の家に入って来ちゃダメだって、小さいとき教えてもらわなかったんですか?」
「てめー、何者だ? この辺りじゃ見かけねえ顔だな」
男の声はドスが効いていた。怖い。
「今朝引っ越してきたばかりなんですよ。いや、正確に言えば実家に帰って来たんですけど。もしかしてお隣さんですか? すみません、もてなす用意が出来てないんです。何せ家がこんな状態になってまして。お隣さんなら何かご存知ないですか?」
「よく喋るガキだな。ここに住んでた人間の知り合いか?」
「うん? まあ、そんなところです。断じて息子なんかじゃない」
「もし関係ねえ人間なら、忠告しとくぜ。あまりこの家と関わらねえほうがいい。痛い目に遭うぜ」
「残念ながら、僕、関係ない人間じゃないんですよね。ってことは、痛い目に遭わされるってことですか?」
「口の減らねえガキだな。痛い目に遭わなきゃ分からねえらしい」




