あぶな荘のデッドな即死 その③
「なっ……!?」
うわ、絶対勝ったと思ったのに。
決め台詞まで言っちゃったし。恥ずかしー。
とにかく、一撃目を防がれたこの状況はマズい。一度どこかに身を隠さなければ。
と、僕が一歩目を踏み出したとき。
「おいおい、もう決着はついてるんだぜ、落ちこぼれ」
「決着?」
「気づいてないのか? 俺のスキル【切断】は、もうお前を切り裂いてる」
ロットが言い終わった瞬間、僕の視界は斜めに傾いていた。
「え?」
いや違う。
僕の体が斜めに滑っているんだ。
恐る恐る下を見ると、僕の体は肩から脇腹を境目に、真っ二つに切り分けられていた。
切られた体は血で滑りながら二つに分かれていく。
「何故てめえがそのスキルを使えるのかは知らねえが、冥土の土産にいいことを教えてやる。お前が殺したあいつはな、俺たち【異能力者処理統括機関】の中じゃ落ちこぼれなんだよ。触れれば相手を殺せる程度のスキルなんて、この世界じゃ珍しくないんだぜ」
「……そんな殺伐とした世界、僕はやだね」
「だから俺が殺してやったんだろ。所詮お前と俺じゃ格が違うってことだ。地位も、名誉も、スキルも、何もかもが」
「…………」
スキルそのものは、【死線】じゃ殺せないってことか……?
恥を忍んで使ってみれば、その実役立たずっていうんじゃないだろうな、このスキル。
遠のく意識の中、僕はそんなことを考えて、それから間もなく死んでしまった。
久しぶりの感覚だ。
そして再び生き返る。
「お前はここで終わりだぜ。このぶっちぎりエリートの俺様、コードネーム【血肉の赤】様の前に敗れてな!」
「……そのセリフ、さっき聞いたよ」
僕が死ぬ数秒前の世界だ。
敵の能力は切り裂くこと。
情報のアドバンテージは僕にある。
「強がってんじゃねえよ、落ちこぼれ。ま、どのみちお前の寿命もここまでだがな。見せてやるよ、この切れ者エリート俺様の超スーパーウルトラスキルを!」
「それもさっき見たよ」
「うるせえ、死ね!」
ロットが叫んだのと同時に、僕は店内の机の陰に飛び込んだ。
机が粉々に千切れ、破片が飛び散る。
だけど、それだけじゃない。
皮膚に冷たい刃物を押し当てられたような感覚に、僕は転がるようにしてその場を離れた。
そしてそれとほとんど同じタイミングで、さっきまで僕がいた場所もズタズタに切り裂かれた。
見えない刃物が飛んでくるようなものか。
しかも、机一つ壊したくらいじゃ収まらない威力で。
見れば、僕の着ていた服にも引っかかれたような傷が出来ていた。
「危ない能力だ。僕じゃなきゃやられてた」
「よく避けたなって、褒めて欲しいのか?」
「……いや全然。全く。微塵も」




